対州馬の飼養と調教 6「 対州馬の牡馬は荷運び馬や曳き馬等の役馬として適するか 」
適します。ただし、条件はあります。1頭飼いをすることです。
牝馬と一緒、もしくは近くでの飼養だと役馬となることはできないでしょう。
これは実際に長崎市内で荷運びを生業とされていた浦川さんもはっきりと述べられたことです。(ちなみに去勢していないオス馬を牡馬(ぼば)、去勢したオス馬を騙馬(せんば)と言いいます)
中には牡馬、つまり去勢をしていない状態だと曳き馬や乗馬用馬としても使えないと考える人もいますが、そうではありません。あくまで条件次第なのです。
人間の体もそうなのですが、それぞれの臓器は絶妙なバランスでもって成り立っています。
生殖器を取ってしまうことは、もちろんその生体にとって大きな影響を及ぼします。
十分な精査や準備が行われないまま簡単に去勢が行われるようなことはけっしてあってはなりません。
私個人としては生来、人が手を一切触れたことがなかった対州馬の牡馬を飼養し、独学で調教しました。
かなり早い段階で信頼関係が築け、この牡馬に攻撃されることは生涯ただの一度もありませんでした。
私が半野生馬だった、牡の対州馬を長崎市に連れてきて2年が経った頃、ある事情から放牧地を移動しなくてはならなくなりました。
まだ歩行訓練も十分ではなかったのですが、馬運車に乗せて移動という、かなり高難度なスキルを短期間でマスターしなくてはならなくなりました。
結果的に対州馬のポテンシャルの高さか、信頼関係が功を奏したかは定かでありませんが、移動は無事成功しました。
事前に移動中馬が暴れるというリスクを想定して、誰か馬の扱いを知る者の助っ人を探しました。
私の古い教師仲間の勤め先である学校に来ていたカナダ人のALT(英語指導助手)がいて、その人の叔母さんが馬を飼育しているという話を聞き、そのカナダ人に頼むことにしました。
しかし、そのカナダ人は、事前のメールのやり取りの中で非常に愚かで馬鹿げたことを書いてきました。
「去勢していないスタリオン(牡馬)は危険だから去勢した方がいい」と。おそらく彼の叔母さんの牧場では種馬以外の牡馬は乗馬などで使うためにさっさと去勢してしまうということなのでしょう。
「そんなことで去勢するくらいなら、わざわざ牡馬の対州馬を飼ったりしない」と返したかったのですが、馬鹿馬鹿しいので彼とのやり取り自体をやめました。
はたして、私の馬はさしたる問題もなく軽トラックを改造した馬運車(実際に荷運び屋さんがつかっていたもの)に乗り、すんなりと次の放牧地まで移動ました。
「馬を扱える、知る」と豪語?する人の中にはこのカナダ人と同じような人が残念ながら、馬と関わりのある人の中に、かなり多く存在しています。
そういう言葉にまず惑わされないことがとても重要です。
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