クラウス・フェルディナンド・ヘンプフリンク著「馬と踊ろう」”Dancing with horses"by Klaus ferdinand hempfling
馬の調教についての資料は、ほぼありません。あったとしてもそれは極々一部にしかあてはまらない事しか書いてありません。
そして、そのようなものに頼ろうとしない方が結局はいいのです。
しかし、馬は小~中型の在来馬でも体重が300kg前後あり、本気を出せば大人の男3~4人は簡単に引きずりまわす力を持っています。
なんの理論もイメージも持たずに調教に挑むのは無謀以外のなにものでもありません。
まずどんな馬にも当てはまることぐらいは、わかっていないと馬を修復不可能な状態にしてしまいます。
一言でいうと調教者の「馬に対するマインド」と「体の向きと馬との距離(馬語)」は非常に大事で、それを抜きにしては調教はまず成り立ちません。
その辺りのことをうまく説明しているものとして私が一読を薦めるのはドイツ人クラウス・フェルディナンド・ヘンプフリンクの「 Dancing with Horses (邦題:馬と踊ろう)」です。
この書は馬の調教の書というよりも美しい文学としてそのまま読めます。「よし、馬と向き合おう。馬を飼おう」という勇気を起こさせてくれる名著です。
しかし残念ながらこの書は販売されていません。JRAが翻訳本を作ったのですが、販売せずに各都道府県の図書館にのみ配布しています。したがって、県立図書館に行けば借りることができると思いますが、物理的・地理的に難しい方も多いでしょう。どうしても読んでみたいと思う方のために、私が持っているPDFファイルのリンク先を貼っておきますので、DLして読んでみてください。
”その男は生涯を馬に捧げた、高貴な騎士だった。威厳と謙虚さを兼ね備えた男と評判で、馬上のその姿を見た者は皆、見事な手綱さばきと騎馬技術に深い感動を覚えるのだった。
その男も齢96、いよいよ臨終の時が迫り、甥を呼び寄せて別れを告げたときのことである。
あいさつを終え、部屋を出ようとして振り返った甥は、生まれて初めて叔父の涙する姿を目の当たりにした。
老人は手を伸ばしてもう一度若者の手を取ると、静かに言った。
「ああ、今死んでいかねばならぬとは、なんという不運だろう」。
甥は老人の手を優しくさすりながら尋ねた。
「なぜ悲しむのですか、最後の時は誰にでも訪れます。叔父さんはすいぶんと長生きされたし、豊かで恵まれた人生だったではありませんか」。
「ああ」老人は答えた。
「お前の言うとおりだ。だがね、このわしとて、たった1週間前に乗馬の奥義を究めたばかりなのだよ」。” (本書より)
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