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NHK 「こころ旅」

NHKで放送されている「こころ旅」は、毎回ではないが、かなり前から時折観る番組。

なぜ好きなのかは、毎回寄せられる「お手紙」は、どこかの誰かの「忘れられない思い出」をつづったものだから。
何気ない景色や場所は、或る人にとっては、アイデンティティーや人生に大きく影響するものだということに、とても惹かれるのだ。

なぜ時折かは、火野 正平が時々発する心無い言葉が好きではないから。

寄せられるエピソードの中には、とても印象深いものがいくつかある。

北海道の東端に近いサイクリング道で、7歳だった息子とサイクリングをしたという父親。その後、事故でその息子を亡くしてしまった。
その時の、ハムスターみたいに一生懸命にくるくる自転車をこいでいた姿が忘れられないので、自分はまだいけない(傷心が癒えていないから)から、代わりに行ってみてくださいというもの。


また熊本の八代では、戦後間もないころの中学生時代。それまでのごつい商売用の自転車ではなくて、女性用の自転車が流行りだして自分も欲しくて父にねだったがだめだった。
父のごつい自転車で練習しようとしたが、とても難しくあきらめた。
そんな中、歩いて登校する際に、自転車にのった一団に追い越されていくが、その中にひとりだけ男用のごつい自転車をこいでいる新入生の女の子がいた。
彼女はいつも少し恥ずかしそうに微笑みながら、必死に男物の自転車をこいでいて、私はすこしみっともない姿と見ていた。
一年が経つ頃、しばらくその子の姿は見えなくなった。程なくして学校で追悼集会があった。亡くなったのは、その女の子だった。
聞くと、びっくりするぐらい遠くから雨の日も風の日も通ってきたのだと思うと、当時の自分の思いが恥ずかしくなる。
一度は、自分で自転車をこいで、その道を辿ってみたいというもの。


同じく熊本で印象的だったのは、幼いころ母を病気で亡くして、父と二人暮らしだった女の子の話。
父は、足が悪かったが、郵便局で一生懸命働いていた。
ある日、学校で遠足があり、お弁当を作ってやれない父は、後でパンを買って遠足の場所まで持っていくという約束をした。
やがて、お弁当の時間になっても、なかなか父は現れない。
周りの先生やお母さんが気を遣って、「一緒に食べよう!」と言ってくれたが、「お父さんが持ってくるからいい」とひとり、遠足地である小山の上でひとりで待っていた。
すると遠く下の方から、お父さんが足を引きずりながらパンを持って上がってくるのが見えた。
お父さんが買ってきたジャムパンを二人で食べながら、私はなぜだか涙が出てしょうがなかった、という亡き父をしのぶもの。


広島では、父親からの投稿。
まだ娘が幼いころ、とっても仕事で苦労してお金がなく、休みの日に娘を連れて遊びに行くのは、少し離れたところにある遊具のたくさんある公園。
遊んだ後、娘に自動販売機でジュースを買おうとしたけれど、その時財布の中に80円しか入っていなくて、ジュースが買えず、娘には「ここにはいいのがないから、帰りにスーパーで買おうね!」と言って泣きたい気持ちをこらえながら帰ったというもの。
その後、娘は成人し、立派な成人になったのだけど、癌を患ってしまった自分によくしてくれている。
あの時の公園でのことを今でも思い出すというもの。


愛知では、集落の外れに住んでいた自分の家は、その一帯の中でも、桁外れに貧しかった。
猫の額ほどの土地で野菜を作っては、リヤカーに積んで街まで何キロも運んで、そうやって自分を育ててくれた。
今は亡きおばあちゃんや親のことを思うにつけ、その生活していた場所をもう一度見てみたいというもの。


・・・いずれも「人の生活とその思い」が何でもない、その風景の中に何時までも褪せることなく残っているということを教えてくれる、すばらしいストーリーばかりなのだ。



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