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njrpgリプレイ【ファイヤー・アンド・アイス・マグロ】

ニンジャスレイヤーTRPG入門用ソロアドベンチャー:ツキジ・ダンジョン深部へ潜れのログに加筆・修正を加えたリプレイです。生い立ちプラグインとダイスの産みだすグルーブ。本編で哀れにも邪悪なニンジャにスシを強奪されるスシ配達員……またスシを強奪するもニンジャスレイヤーにスレイされる常人の三倍の脚力やカトン・ジツを持つサンシタニンジャ……マッポーの世に生きる彼らの人生に思いを馳せました。

【ファイヤー・アンド・アイス・マグロ】

冷えきったツキジダンジョンの床に焼け付く足跡。

「しかし、ニンジャになってまでスシ・デリバリーとは…」

男の名はファイアフィート。元ヒキャク・パルクールであった彼は不幸にもニンジャにより宅配中のスシを強奪され命を落とし、そして自らもニンジャとなったのだ。

ネオサイタマのデリバリー・スシ配達員はスクーターを用いるのが一般的だが、高級スシの鮮度を落とさぬうちに迅速にクライアントに届けるには交通状況に左右される事なく己が脚でビルの間を飛び回るヒキャク・パルクールが重宝される。故に、この地に眠るとされる最高級冷凍マグロをシンジケートへ持ち帰る今回のミッションは彼のプロフェッションと言えるだろう。

「……それもこの脚のローンを返すまでの辛抱か」

然り、赤熱した彼の両足は欠損を補うサイバネである。

かつてのファイアフィートは己の口に入ることのない高級スシを運びながら、ヒキャクとして誰よりも速く、決して止まることのないマグロのように自由に街を翔ける事に誇りを抱いていた。だがニンジャは彼からその矜持も、スシも、そして両脚の自由をも奪って行ったのだ。

「どうやらこの区画で間違いないようだな」

入り組んだ通路を抜けた先、前方に現れたのは暗黒メガコーポのクローンヤクザ。どうやらダンジョン徘徊者を恫喝しているようだ。マグロ探索クローンヤクザがいるということは、マグロが近いということだ。敵対スシチェーンが差し向けるマグロ強奪クローンヤクザを幾度となくまいてきたヒキャクの勘がそう告げる。

【2,3,4,3】「イヤーッ!」

「アバーッ!」

ファイアフィートの投擲したスリケンはかろうじてクローンヤクザに命中。彼はニンジャとなって未だ日は浅く、またスリケンよりもヒキャクとして鍛えた足技を好む。

「……で、ご注文は?」

クローンヤクザに恫喝されていたハッカーに彼は向き直った。

物ごころついた頃より最低賃金のスシ宅配員として生きてきたファイアフィートにハッキングの素養は無く、【拷問】によるインタビューが彼の常套手段となる。モータルとして彼はニンジャに全てを奪われ、そしてニンジャとして彼はスシを奪われる側からスシを奪う側へと回ったのだ……

「冷凍マグロと炙りマグロ……どっちが好きかな?」

「アイエエエエエ!?やめてください、何も知りません!」

「冷凍マグロだろう、なあ?」

ナムサン!ファイアフィートは赤熱したサイバネ脚を哀れなハッカーに押し付けながら指を一本ずつ折ってゆく!

「10数える前に答えなきゃあんたが炙りマグロだ」

「アイエエエエ!!」

ハッカーはしめやかに失禁!

【1,3,6,6,1,3,5,2,1,2】指を4本折られた所でハッカーは口を割った。だが、指を折る手は止まらない。

「なんだ、やっぱり好きなんじゃないか冷凍マグロ」

「ア、アイエエエ……それじゃあ……」

「だが俺は炙りマグロの方が好きなんだ」

「アババーッ!!」

ファイアフィートはサイバネに点火、憐れなハッカーを瞬時に炙りマグロへと変えた!これこそ常人の三倍の脚力とサイバネによるカトン・ジツを組み合わせた彼のヒサツ・ワザ、カトンキックである!

「ラオモト=サンへの冷凍マグロ・スシデリバリー、イッチョアガリ……」

ハッカーから聞き出したマグロ冷凍倉庫に辿り着いたファイアフィート。だがそこに突如襲い来る怒り狂った巨大バイオズワイガニ!

「シューーーーーッ!」

「……追加オーダー、ズワイガニ・スシが一貫。イヤーッ!」

スリケン投擲!【6,3,6,1】

ファイアフィートの投げたスリケンは巨大バイオズワイガニに命中!だが浅い!これは彼の慢心と訓練不足が招いたインガオホーである。ファイアフィートは巨大バイオズワイガニの反撃を許してしまう!

【3,1,3,1】「シューーーーーッ!」

「グワーッ!!」【残り体力1】

致命傷!その怒りは巣穴を荒らされたバイオ生物のものか、あるいは踏み躙られたスシの亡霊か……巨大なハサミはスシ配達員としての誇りを捨て去ったヒキャク・パルクールの命を刈り取らんとする死神の鎌めいていた。

「モータルに喰われるスシネタの分際で……俺はニンジャ!モータルからスシを奪い、喰らう者だ!イヤーッ!」

ファイアフィートは血を吐きながら義足のケリ・キックを巨大バイオズワイガニに叩きこむ!【3,1,6】サツバツ!

「シューシュシューッ!」

ハサミをケジメされた巨大バイオズワイガニは泡を吹き退散!

「クソッタレ……ついてねえ……」

巨大バイオズワイガニを退けついに冷凍オーガニックマグロを確保したファイアフィート。

「……ニンジャになってまで……スシ・デリバリーかよ」

彼の胸にソーマト・リコールめいてニンジャとなった日の記憶が蘇る……モータルの彼が今のように血を吐きながら這いつくばり、マグロ・スシを為すすべなくニンジャに奪われる忌まわしき記憶が。

ヒキャクが命を賭して届けた己の口に入ることのない高級スシはクライアントの口には入らず、ニンジャの口に入った。ニンジャとなった彼はヒキャクには決して手の届かぬマグロ・スシも望むまま奪えるようになったが、それは血塗れの脚に踏み躙られた泥の味がした。

何故こうなったのか……混濁する意識の中ファイアフィートの運命は今、彼に赤と黒のダイスを振らせる。出目は……【赤4】!【黒4】!ナムサン、日本社会で死を連想させる忌み数4である!合計値は8…そして哀れなモータルを炙りマグロに変え、怒れるスシの化身をも踏み躙った彼のDKKは10。

「Wasshoi!」

ファイアフィートが冷凍マグロコンテナに手をかけたその時、扉が内側から勢いよく開いた。血で赤く霞む視界に映るその物体はマグロと呼ぶにはあまりにニンジャめいていた……

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。炙りマグロが好みらしいな。オヌシをネギトロに変えに来た」 

「ああ……また俺は……届けられないのか」

ニンジャにスシと両脚を奪われ常人の三倍の脚力とカトンを手に入れたファイアフィート。彼はスシを奪われる惰弱なヒキャクなどではなく、スシを奪うニンジャとなった……筈であった。彼には最早街を風の如く翔ける脚は無く、ただツキジの床にマグロめいて這いつくばり死を待つのみであった……

【ファイヤー・アンド・アイス・マグロ】終

◆忍◆ニンジャ名鑑No.- ファイアフィート◆殺◆
ニンジャにスシと命と両脚を奪われたヒキャク・パルクール配達員にニンジャソウルが憑依。常人の三倍の脚力とカトン・ジツを組み合わせたカトンキックを用いる油断ならぬニンジャとなったが、同時にサイバネの返済で常に足元に火がついている
カラテ3/ニューロン2/ワザマエ4 ジツ3(カトン・ジツ) 体力3/精神力2/脚力2 生い立ち:元ヒキャクパルクール(常人の三倍の脚力) 持ち物:オーガニックスシ サイバネ:ヒキャク

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