三十路になってから -その2-
今日は朝まで眠れずお仕事を1日お休み。
そんで9時から13時まで寝てしまう始末。お粥しか喉を通らないので、少しでも栄養をと思ってはっさくを食べたら、思ったよりも酸っぱくて今この状態なわけである。
はっさくって剥き方があるらしい。はっさくなんて三十路にして初めて自分で剥いて食べたよ。
残さず食べます。
昨日の続き。
新人指導は、新人1人につき2人の先輩がつくという新たな取り組みができ、不運なのか自然の摂理なのか7年目の私はそれに任命されたわけだ。
そんなこんなで凄腕の先輩と2人で新人の指導に当たるのだけれども。
新人の後輩は22歳とは思えないほどしっかりしている。空気が読めて礼節がなっていて、それでいて素直で可愛い。はっきり言って非の打ち所がない。私も大好きだ。ここだけの話をすると、未だにおばさんは話す時に緊張してしまう。それくらい可愛い。
月に一度、凄腕と私で新人と面接をして自己評価と他者評価をしつつ、悩みや進捗状況を聞かなければいけなくて、それがとにかく苦痛だった。
凄腕は決して悪い人では無いのだけれども、求めるものが高くて、横にいる私も「あ、これ自分も勉強しなくちゃいけないんだ…」「これは新人に言っているように見せかけて私に向けて言っているな?」と毎回思わせられた。
そんな凄いことを横で言われたら「今はこれくらいでいいと思うよ」「まずは仕事に慣れるといいね」なんて口が裂けても言えない。なんなら私の出る幕は一瞬たりとも無いわけである。
面接の最初に「ホライさんからなんかありますか?」と言われて私が先に話を出すと、その後に全てを覆すように自分の意見を言う。
時には自分が全て言い終わった後に「ホライさんはどうですか?」なんて言われても何も言うことができない状況となっている。
私の出る幕は一瞬もないのである。
そんなストレスを抱えつつも、その激かわ後輩は私の方が話しやすいのか、凄腕より経験年数が下だからか、まず私に相談を持ちかけてくる。
そのアドバイスを元に、その後に凄腕にも必ず相談しに行く。
すると何が起こるかと言うと想像の通りなのだが
「そんなんじゃダメだ」「全然違う」
となるわけである。
物理的に言われているのは激かわ新人なのだが、結局は私が言われているのと同じなのだ。
結局は凄腕が正解なのだ。いつも正論を言っている。だけど自分の中では「今はもうこれ以上仕事のことは勉強したく無い」と思っていたので、改善策が全く無い状態。
しかも勉強すればいいだけのことだって頭で分かっているのにやる気が起きない、というところが更に自分を追い込むことになる。
激かわだって分かってる。凄腕に聞けば全てが解決に向かうこと。正しい道を歩めることだって分かってる。
それでも激かわは空気が読めるので、ちゃんと私のところに相談に来て私を立ててくれる。
そこが私にとって1番辛く苦しいことだった。
私さえいなければ、この子はもっともっと勉強できて、たくさん吸収してもっと成長できるのにな。
と思うようになっていた。
そもそも凄腕は技術が全ての考え。
私は本人や相手のモチベーションが全て。
と考えが合わないので、うまくいくはずがないのである。
それでも凄腕が正解なのだ。技術職は技術が全てなのだ。
そんなことを繰り返してるうちに
自分はここには必要のない人間だ。何もできなければ価値がない。凄腕のようにならなければいけないのにできない自分はダメ人間だ。と、思うようになっていた。
しかしまあこんなことを誰にどうやって言ったらいいのかと考えていたら、ちょうど個人面談の時期に差し掛かっていたので
「凄腕が凄くてものすごいプレッシャーを感じてしまいます」と上司にサラッと言ってみたところ
「折角ホライさんも凄腕さんと一緒なんだから色々学んでみたらいいんじゃない!」
と明るく返され小声で「はい…」と言うことしかできなかった。
そう、出来ないなら出来ないなりに凄腕に学ばなければいけない。自分の成長を止めてしまってはいけない。
つまり、学ぶこともできなくて、学習意欲もない人間はこの仕事をやるべきだ。
と言う思考回路に陥ってしまうことになる。
凄腕がいい人で技術があり、周りが見えて何でもできて、正解なだけに、上司にも相談できず、かと言って同じ職場内でも誰にも言うことができなかった。
そんな精神状態の中、追い討ちをかけるように職場の人たちは、大声で笑いながら過ごしていて、給料が低いだの、あの人がウザいだの、仕事が多いだのと私に愚痴を言ってくる。
もう誰の話も聞きたくなかった。
ASIAN KUNG-FU GENERATION/UCLA
https://youtu.be/caE8oVSrCrw
そんな時期に昼休みにいつも車に一人篭ってタバコを吸っては、この曲を聴いて
「満たされないけど投げ出せそうもない
少しずつ何かを削るような毎日」
というフレーズに何となく泣いてしまうようになっていた。
続く。
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