21.3.24 マップ①
太ももが椅子に張り付いている。もう何時間も同じ姿勢でいるからだ。理由は考えなくても分かる。もしGoogleマップのように人間の現在置が常に表示されていたら、私のいる建物には少し大きめの青い丸が一つ、上空から確認できるだろう。ここにはもう何時間も椅子と同化してる人がたくさんいる。
少し大きめの青い丸は、17時を過ぎると徐々に本来の大きさである小さな点となり活動を始め、21時を過ぎる頃にはほとんど全ての点が復路をたどっている。ここにそれぞれ固有の物語を持った人間が多数いることを、上空から確認できる頃にはすっかり暗くなってしまっているので、雲の隙間から下界を観察している者たちにはただじっと、熱を持った鈍いひとつの塊が発光したり、それをやめたりしているだけだと思われているのではないかと私は不安になる。
熱を持った鈍いその塊たちは1日の半分近い時間を、太ももを椅子に貼り付けながら、決して知ることのない誰かを速く、遠くに運ぶ乗り物を作っている。
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