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Fujii Kaze “Free” Live 2021

藤井風さん。彼に触れると誰もがあふれかえる想いを持ってしまうのではないかな。今回のライブは「たった一人、ピアノ、スタジアム」というこれまでの常識ならば相容れないはずの3要素により、 風さんがいかに尊く、みんなの心に寄り添う特別な存在であるかを際立たせていた。

風さんやスタッフの皆様が最初に望んでいた「コロナ以降、窮屈な思いをしているみんなの気持ちをFreeに出来るライブ」と形は大きく変わってしまった。芝生に座って心地よい天気の中で風さんの音楽を楽しむみんなの姿が見たかった。その姿を見て嬉しそうな風さんやスタッフの皆様の姿も見たかった。でも、この空っぽのスタジアムが今の日本の現状。

そして、一週間程前から9月4日の横浜市の天候に気をもんでいた風民達。私も当日の横浜市の天候を何度確かめたことか。どうか、ライブの1時間だけでいいです、雨雲はその時間だけお席を外してくださいませ。結果は御覧のとおりの雨…。けれど、起こること全てにやはり意味はあるのだろう。雨の中、観客のいないスタジアムでたった一人でピアノを弾くパフォーマンスは、結果的に何にも代え難い演出となっていた。

雨粒が散りばめられた鍵盤からは、ピアノだけで表現されているとは信じられない豊かな音が奏でられる。髪に振り落ちた雫は小さな真珠みたいで、武道館で舞い降りた羽のように風さんをさりげなく飾る。語られるのは、普段どおりの優しさと思いやりに満ちた言葉。芝生で寝ころび、天を仰いだ風さんには何が見えたかな。

豊かな音と共に驚かされたのは、映像の美しさと多彩なカメラワーク。「たった一人、ピアノ弾き語り」は映像として単調になる可能性が大きいことを危惧して、きっと色々な方のアイデアと労力であの舞台を最大限に演出してくれたのでしょう。スタジアムの広さを活かし、様々な角度から映される芝生の中央にいる風さんとピアノ。誰も座っていない日産スタジアムの青と赤の椅子のコントラスト。茶色のフィールドから緑の芝生を駆け抜けるようなカメラ。

そして青春病の最後にドローンで映し出されるのはスタジアムの外にある世界。ドームではなく開放されているスタジアムならではの映像!風さんやスタッフの皆様が作り上げたパフォーマンスは、雨に濡れる空を通じて私たちの世界に確かにつながっていた。

観客のいないスタジアムで「これがありのままの現状です」と話した風さん。心地よい日差しや風が吹き、観客が笑いあうライブはもう少しだけお預け。今は、少しグレーがかった空色の下でみんな頑張って過ごしている。風さんの存在に力をもらいながら。

いてくれてありがとう。

(余談)
映像の中でNISSAN stadiumのロゴを何度見たことか。約17万人が視聴して、アーカイブでこれから100万人以上が観るであろうことを考えると日産のすごい宣伝にもなるよね。スタジアムの使用料(プロ料金)はフィールドと全スタンドを使用して144万円とのこと。えっ思っていたより安い…。

ちなみに他の会場の使用料
・代々木第一体育館の使用料金:興行利用で入場料を徴収しない場合+平日以外は290万円。
・さいたまスーパーアリーナの使用料金:スタジアム使用(興行利用の場合)は1,000万円以上。

様々な事情があるだろうけれど、今回の “Free” Liveが日産スタジアムで行われた理由が何となくわかった気がする。FRIENDSHIP PARTNERSであるYAMAHAとYouTubeへの広告効果も大きいはず。(もう一社のFRIENDSHIP PARTNERSである株式会社アカツキはゲームを軸としたエンターテイメント事業を行っているそう。あの藤井風アプリも!)

そして「無観客スタジアムライブ」というインパクトは、藤井風という存在をまだ知らぬ人へ届かせる話題性がある。新聞や報道ニュース番組の特集も併せると風さんに魅了される人々が加速度的に増えるはず。

ライブ興業が非常に厳しい現状の中、入場無料のライブであっても各社がイメージアップを得られる事業となることも今回の “Free” Liveの大切な要素だったと思う。私達は風さんのライブから心や力をもらい、そのライブに携わる人たちはきちんと事業として成り立つ。その両者が成功したように私からは見えたけれど実際はどうなのだろう。私は応援することしかできないけれど、両者のバランスを保ちながら多くのアーティストが活動していけますように。


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