パワーアップした遺伝子コレクター

 極限環境に棲む生き物のほとんどは細菌類である。とりわけ、熱水環境には細菌(あるいは古細菌)しか見られず、真核生物はほとんどいない。真核生物とは、我々を含めて動物や植物など細胞内に核膜をもつ生物グループだ。

 だが例外的に、真核生物である藻類の一種、Galdieria sulphurariaは有毒な重金属を多量に含む熱水環境にうまく適応している。

☆【画像】藻類Galdieria sulphuraria
http://goo.gl/a5hrg

 このような過酷な環境において、この藻類は細菌類を押しのけてバイオマス(生物量)の90%を占めているのだ。

 なぜ、真核生物であるG. sulphurariaが極限環境で大きな顔をしていられるのだろうか。今回、この藻類が、きわめて優秀な遺伝子コレクターであることが判明した。極限環境細菌から多くの遺伝子をかすめ取っていることがわかったのだ。コレクションしたそれらの遺伝子を利用して、極限環境にうまく適応したものと思われる。

 ご存知のように、生物はさまざまな種類の遺伝子をもつ。ある遺伝子は栄養分からエネルギーを得るのに必要な酵素をつくり、あるものは毒素を排出するためのポンプをつくったりする。生物が生きていくために必要な道具をつくりだす遺伝子のレパートリー。このレパートリーの変化、すなわち進化により、生物が新しい環境に適応できるようになる。

 我々のような真核生物では、ある遺伝子がコピーされて二つ以上になり、コピー遺伝子が変異して新たな機能をもつことがある。



師匠「ずずっ・・・もぐもぐ。うん。いいだろう。これは、うちの味だ。」

弟子「!」

師匠「麺のぬめりもスープの臭みも消せるようになったな」

弟子「それじゃ、のれん分けは・・」

師匠「【麺屋ぱらろぐ】の名に恥じないよう頑張れよな」

弟子「ありがとうございます!!」

<<1年後>>

師匠「ずずっ・・・もぐもぐ。だいぶ味が変わったな」

弟子「はい。ゲンコツの量を増やしたのと、魚系とあわせてダブルスープにしました」

師匠「これ、けっこういいじゃねぇか」

弟子「師匠の真似だけじゃなく、自分のオリジナリティも出そうと思ったので」



 遺伝子がコピーされるのはラーメン屋ののれん分けと似ている。のれん分けにより新たに開業した店は、当初はもとの店と同じラーメンを提供するが、たゆまぬ努力によりオリジナルなラーメンを開発する。コピー遺伝子が変異し、新たな機能を獲得するのと同じだ。

 ところで、細菌では他の細菌から遺伝子をもらうことにより、進化が起こることがある。これを遺伝子の水平伝搬とよぶ。



秘書「社長、お電話です」

ここから先は

1,518字

¥ 210

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?