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クマムシとトレハロース

 クマムシなどの生物は、体から水分が抜けてカラカラになっても仮死状態(乾眠状態)で生き延び、水を吸収すると活動を再開することが可能だ。

 むしマガVol. 136でも紹介したように、ネムリユスリカや一部の線虫では乾眠時に多量のトレハロースを蓄積することが知られている。

【むしマガバックナンバー Vol.136「アフリカのスーパーボウフラと人間カップラーメン」】

 ネムリユスリカや一部の線虫、そしてシーモンキーと称されるアルテミアグループでは、乾眠時のトレハロース蓄積量は20%ほどにまで達する。このトレハロースが乾燥した生体物質や生体膜構造などを保護する働きがあると考えられている。

 そして、トレハロースを細胞の乾燥保存に利用するような研究が行われているのも、バックナンバーで述べた通りだ。

 むしマガ読者の中から「じゃあ、クマムシの場合はどうなの?」というご質問をいただいたので、今回はクマムシのトレハロース蓄積に関する知見を紹介したい。

 さて、クマムシの乾眠についてネットで検索すると「それはトレハロースの保護効果によるもの」という解説を掲載しているウェブサイトに行き着くことが多い。ウィキペディアには日本語版でも英語版でもそのような情報が掲載されている。

 結論から言うと、クマムシは乾眠移行時にトレハロースをあまり蓄積しない。よって、クマムシのがカラカラになっても大丈夫なのは、トレハロースによる効果はそれほど大きくないと思われる。

 それでは、クマムシのトレハロース蓄積を調べた研究を紹介しながら、順に説明していこう。

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