プログラミングスクール業界がダメにならないために
私はCodeCampというプログラミングスクールの代表なので、ここに書いた内容について人にお願いする前に私自身が目指すことを約束する。
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最近、プログラミングスクールが悪評を買っている。
業界の中にいる者として悲しいし危機感を持っている。その評判が私たちのサービスに向けたものでなくても。
なので「プログラミングスクール業界がダメにならないため」の私の考えを記しておく。
プログラミングスクールへの悪評と業界への提言
改めて、プログラミングスクールの悪評である。
過去にも色々あったが、最近は
「プログラミングスクール卒業生は質が低い」
「スクール卒業生はイケてないので書類で落としている」
という卒業生に対しての風評がWebやSNSで回っている。
さらには「スクール隠し」なるものまで誕生している、というから驚いた。
これは「プログラミングスクールに通っていた」のを隠して転職活動するというもので、なぜ隠すのかというと上記の風評を理由に「プログラミングスクール卒だと選考で不利になる」と考えての対策らしい。
「スクール隠し」も「プログラミングスクール卒だと選考で不利になる」も、事実としてどの程度発生してるのかはわかっていない。(当事者から直接その話を聞いたことはない)
でももしウチの受講生が「スクール隠し」をして転職活動しているとしたらそれはとても申し訳ないし、「プログラミングスクール卒だと選考で不利になる」なら不甲斐ない。
「何のためにサービスを運営しているんだっけ?」という意義を失いそうになる。
卒業生の件以外でも、プログラミングスクール業界がエンジニアの現場からネガティブな印象が一定あるだろうのは想像できる。昨年ウチに転職してくれたエンジニアは「特定のプログラミングスクールには悪い評判があったので、転職するにあたって入社前にこの会社に悪い評判がないか念の為調べた」と言っていた。
・エンジニアの現場から評価されない
・業界の印象が良くないから人材が来ない
だと、プログラミングスクール業界はお先真っ暗である。ゆくゆくはプログラミングを学んだり、エンジニアを目指す人も減っていく可能性もある。
ネガティブな印象があるゆえに「プログラミングスクール」とは名乗らないプログラミング教育サービスも生まれているが、大局的には何も解決されていないと思う。
そんな現状でも私は、プログラミングスクール業界が良いキャリアをつくる人を増やし、エンジニア人材の不足という課題を解決すると信じている。なのでこの業界が適切に発展することを望んでいるし、当事者としてそれを実現しようと思っている。
なので私なりに、プログラミングスクール業界がダメにならないために3つ提言する。
技術に強くなり、技術を教えよう
まず、現場が期待するスクール卒(新人レベル)の「技術」と現状にはギャップはあると考えている。
一例として、スクールの課題として小規模なWebサービスを作るのが一般的だが(ポートフォリオと呼ばれる)、その出来よりも中のソースコード1行1行は何を行っているのか、原理を理解している方が重要だと考える。
たとえ小範囲でもコピペや教えられた通りのコードを書くのではなく、原理を理解してコードが書けることは、必要な「技術」である。
原理を理解するだけでなく、
・コードを読む力
・開発プロセスの理解
・講師とのレビューやコミュニケーション・振る舞い
など、課題作りを手段として(ポートフォリオ作りは手段であって目的じゃない)、現場で必要な技術を身につける場として、スクールは意義が見出だせる。なぜなら現場でどういう技術が必要かを理解して学ぶのはひとりだけでは難しいから。
サッカースクールはひとりではできない試合で求められるスキル・経験・メンタルを得る練習を行うから意義がある。ひとりでリフティングやシュート練習することと試合で活躍することとは別の話である。
・現場で求められる「技術」が何なのか、手触り感をもって理解する
・それをカリキュラムやサービスで再現する
そういう力がスクール運営には必要に感じる。技術が得られるサービスとして磨き続ければ、「プログラミングスクール卒業生は良いよね」というムードが生まれると思う。
総じてスクール運営サイドはもっと技術に強くなるべきだと思う。経営者も同様で、私も技術を学び続けないといけない。
競合を下げるのでなく自らを引き上げよう
プログラミングスクール業界がネガティブに捉えられる理由のひとつが、競合同士の攻撃(口撃)が飛び交っている点だと私は感じている。
一部ではあるが、元受講者などの悪評の口コミなどに乗っかって、業界の中の人同士で競合を叩くのを目にする。自身がそのサービスを受けたことがあるならまだしも、である。
界隈にネガティブな意見が溢れるだけで、業界として有意義に思えない。
またサッカースクールを例に取るが「あのサッカースクールじゃ上手くなれないよ。教えるの下手だよ」とスクール同士で攻撃しあってるのは聞いたことがない。罵り合ってる教育業界に関わりたいと思う人は多くない。
どのスクールにも課題はあるし、深刻な課題を放置しておくと長期では淘汰されていく。各スクールは向き合う相手を間違えてはいけない。徹底的に受講者に向き合って、質量ともに他社や業界を塗り替える存在意義を生み出すことに集中したほうがよい。
現場と教育機関は両輪で人材を増やそう
最後に対象を変えて、エンジニアの現場に向けても提言したい。
企業や現場サイドではエンジニア不足は大きな課題だと思う。とはいえスクール卒業生のような業務未経験の人材を採用することが非常に難しいことも、開発現場の経験や今の経営経験から理解している。
採用できる人材を多く輩出し、その難しさを取っ払うようなモデルを生み出すのが私たちの責務である。それが叶った暁には、今スクール卒の採用を敬遠しているエンジニアの現場にもぜひ採用にチャレンジしてもらいたい。
元プロ野球監督の野村克也氏をして、
金を残すは三流、名を残すは二流、人を残すは一流
である。現場と教育機関が両輪となって初めて、エンジニアの育成・輩出が加速度的に増えていくと考えている。すると現場の人材不足も解消できるはずである。
私の会社はスクールでもありWebサービス企業でもあるので、自社の成長の為にCodeCamp卒業生や業務未経験なエンジニアも採用していく。
さいごに
私はプログラミングスクール業界が適切な形で発展することが、良いキャリアをつくる人を増やすと信じている。私自身、プログラミングを学んでITの道を選んだことが今のキャリアをつくっているという実感がある。
そして日本の成長においてもエンジニアやIT人材を増やすことが最重要なファクターだと信じている。
まだまだこの業界は始まったばっかりの黎明期で、時間にすると朝5時の夜明け前ぐらいだと思う。課題はたくさんあるがプログラミング教育は大きな意義もある。
プログラミングスクールを運営している人達は実感があると思うが、世にある悪評よりも圧倒的に多くの成功体験や受講者からの感謝を、スクール運営を通して得ることができているはずである。
プログラミングスクール業界の中にいる人達は、この仕事に誇りを持ってよい。
より良いサービスを提供できるように受講者に向き合って、結果として業界まるごと良くしていこうと思う。
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