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3DCGで生かす!カメラ・レンズ入門!

3DCGで作品を作る上で多くの人が最初に学ぶことは「モデリング」かもしれない。ある程度、モデリング技術が身に付き、モデルに色や質感も与えることができるようになったらそれを「より魅力的見せたい」という気持ちになると思う。
「レンダリング」という工程でデジタル的な「撮影」をすることになる。
しかしレンダリング以前に大切なことがある。
「レンズ(カメラ)の設定」だ。

3DCG制作ツールにも多くの場合、「レンズ」が存在している。一部の例外を除いては「実際のレンズ(カメラ)」に基づいての設定値を操作することになる。

「なんとなく設定」するより、「実際のレンズ(カメラ)」の知識を得た上で「確信をもって設定」するほうが良い。

オンラインで開催した「3DCGで生かす!カメラ・レンズ入門講座」で使用した資料を使って解説していく。

※注意:わかりやすくするために若干、極論や断言調が気になるかもしれない。あくまで入門者にレンズの特性を理解していただくために構築した解説であることをご了承&お許しください。

下記リンクは練習用のモデルです。リンク先の「注意」をよく読んでからダウンロードしてください。

練習用モデル&テクスチャーデータ

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これは極端にしても「自分自身では良い感じで3Dモデルが作れるようになったな」と思ったとしよう。

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少し極論気味だが、レンズの設定で様々な表現をコントロールできるということは間違ない。

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ここでは、両極端の「広角と望遠」の比較を解説していく。
まずは端的に「どんな風に映るか」を見よう。広角の方が望遠レンズより広い範囲を撮影することができる。ワイド感があるのだ。

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ん?焦点距離とはなんだろうか。

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簡単に言うと「レンズからセンサー(光・像を受け取る場所)までの距離のことだ。焦点距離が短いと「広角レンズ」となり、焦点距離が長いと「望遠レンズ」となる。図にある通り、センサーの端からレンズの中心部に向かって線を引いてい見る。

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焦点距離が短ければ「線が横に大きく倒れる」、長ければ「線はあまり横には倒れない」。つまり図のようなことが起こる。


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この図がわかりやすいかもしれない。


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改めて広角レンズでの見え方を見てみると「広い範囲が見えている」つまりワイド感がある。


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同じ撮影位置で撮るならば、望遠レンズでは「狭い範囲しか映らない」
あるいは「遠くモノが大きく見える」とも言える。

「撮影する位置が確定している」という前提で
●広い範囲を移したいなら「広角レンズ」
●遠くの物を大きく写したいなら「望遠レンズ」

ということになる。しかしこれはあくまでの「見える範囲」という意味においてだ。


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同じ絵での説明。「望遠レンズしか持っていない。しかし広い範囲をとりたい場合」はどうすればいいか。


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簡単だ。後ろに下がればよい。しかし広角レンズなみに広い範囲を写すとなるとかなり下がらなければならない。
モデリングの際に後方の壁をどかす工夫をしておくか、一時的に見えなくするように作る必要がある。


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なるべく同じように物が映りこむようにとるとなると、広角レンズと望遠レンズではこのくらいの「撮影位置の違い」がでてくる。

なるべく同じ範囲・物が映りこむように位置を調整しても、完全に同じ範囲・物にはならない。それにもう一つ大きな要素がある。

印象だ。

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上からの図も踏まえて観察してみよう。


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広角レンズではかなり大きなゆがみが出るということhを押さえておこう。


「見え方」「印象」「効果」の違いについてみていこう。
どう演出したいかで「広角か望遠か」の選択は変わるのだ。

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キッチンはキッチンとして「普通に存在している」
ライティングや色の要素のことも考えないといけないが、おそらくこの場合、観賞者は自然と人物に目を向け、「この人物がこのあと何をするか」だけに意識がむくと思う。


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大きく歪んだ背景は、観賞者にとって「見たこともない世界」となる。少なくとも「異変を感じる」くらいはあるだろう。
こうなると観賞者は「背景とキャラクターとのセット」でこのシーンの印象を受け取ろうとする。背景が「意味をもっている」のだ。

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※断言調に述べているがあくまでも比較論だ。

広角レンズでは…

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三角形の構図は、構図づくりにおいてオーソドックスであり使いやすい。重心と空間がバランスよく存在し、「絵になりやすい」と思う。
広角レンズでの撮影は、多くのポジションで「三角形の構図」が発生してくれる。
※三角形の構図が発生する理由についてはいろいろな説明があると思うが、入門者としてはシンプルに受け止めておいて良いと思う。

ここで映画や写真作品などで広角レンズがどう生かされているか少し見てみよう。

1枚目はフォトグラファーのキャパが撮影したピカソだ。
広角ぎみの撮影で大胆に表現している。

2枚目はタランティーノ監督の作品「デスプルーフ」のシーンだ。広角レンズによる歪みを最大限に生かし、構図を作り出している。

次は「空間」について触れたい。

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手前と奥とに人物を並べて、どのように映りこむか見てみよう。
広角レンズでは手前に2名、奥に10名ほど並んだ。奥には5倍の人数を並べることができた。
望遠レンズでは手前に3名並び、奥には5名並んだ。奥には1.66倍ほどだった。
5倍も映り込んだ広角に対して、望遠は1.6倍ほどしか映り込まなかった。
それだけの差がある。つまり「効果・用途が変わるはず」ということになる。


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ファインダーをのぞき、実際どのような見え方の違いがでるか見てみよう。
広角では手前と奥とで大きさが極端に変わる。
望遠では手前と奥とで差があまり出ない。

広角レンズでは距離感が強くなる。
望遠レンズでは距離感は弱く「遠いのに遠く見えない」という現象が起こる。


空間の感じ方が変わるのだ。それを活用した表現を見ていこう。

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レンズ以外の要素次第ではあるものの、
広角レンズでは、まるでそこの場面に飛び込んだような感覚にさせることができる。

映画の例でみてみよう。

『レ・ミゼラブル』だ。この映画は全編にわたって広角ぎみに撮られているシーンが多い。元がミュージカルだからなのか観賞者を「当事者」にしようとしてるように感じた。『レ・ミゼラブル』のそもそもの時代背景・テーマ性から起因してるということもあるかもしれない。


ブライアン・デパルマ監督の『アンタッチャブル』の裁判のシーンだ。裁判に参加してるような感覚でみることができる。


『ロードオブザリング』のシーンだ。広大さを表現するためにワイドよりな撮影がされている。この3分57秒あたりからのシーンは画角が広く、とても臨場感がある。

いずれにしても極論的ではあるが、演出的な要素として広角レンズが選ばれていることを感じる。

望遠レンズによる「距離感の錯覚」も面白い。

これは黒澤明監督の『蜘蛛巣城』だ。主人公役の三船敏郎のすぐそばを矢がかすめ飛んでいく。見た目には非常に至近距離めがけて矢が放たれいてる。
これは望遠レンズの効果の一つだ。距離感をあまり感じないレンズ効果により、危険なほど矢が近くを通ってるように見えるのだ。

実は。。。。

この撮影では本当に三船のそばぎりぎりに飛んできている。糸を通してるのかもしれないが、かなり危険な撮影だったらしい。しかも矢をいてるのは弓道部の学生が多かったという。

「本当にぎりぎりそばに矢をはなってる」ということ+「望遠レンズ」の効果によってほんとに恐ろしいシーンとなっている。


レンズのボケについて


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ざっくりな説明となるが、広角レンズではボケは発生しにくく、望遠レンズではかなりボケるといことがある。
言い換えると、
広角レンズは「ピントが合う範囲が大きい」
望遠レンズは「ピントが合う範囲が小さい」

この「ピントが合う範囲」を「被写界深度」という。3DCGでの設定では「DOF」と表記されていることが多い。Depth Of Fieldだ。

どのような条件下でボケるのか解説していく。


そもそも光がレンズを通してセンサーに届くことで像を写すことができるということを踏まえておこう。

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レンズには「絞り羽」という羽がついている。この羽がすぼめていき、光が取り込む穴の大きさを調整することができる。これを「絞り」という。
明るすぎるところでは羽を絞り込んでいき穴を小さくして、光が取り込まっれる量を少なくする。
暗いところでは穴を大きくしてき、光を多く取り込めるようにする。
そもそもは「明るい場所や暗い場所でも撮影可能にする」ための機構だ。

設定値としては「F」で表される。3DCGにも「F」の設定項目があるソフトは少なくない。
fが大きいと「絞りの量が増え穴が小さくなり光の取り込み量を下げる」
fが小さいと「絞る量が減り穴が大きくなり多くの光を取り込める」
ということだ。


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この絞り(F値)はボケ具合に大きく影響を及ぼす。
絞り込んで、光を取り込む量を減らせば減らすほどピントが合う距離が大きくなり、ボケはなくなっていく。
穴を大きくし、光を取り込む量を多くしていくと、ピントが合う範囲が小さくなり、ボケる範囲は大きくなる。


詳しい技術的な話は割愛するが、そっと図だけ置いておく。
下に貼る図解、これはオンラインセミナー時にはそこそこ解説をしたが、あまりここまで深く掘り下げるとかえって混乱するだろう。
図を置きはするが「ふうん」くらいに少し眺めたらすぐ次へいこう!

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黒い立方体が「絞り」を表している。黄色い部分がピントが合う範囲だ。

正直、入門者が3DCGでレンズを効果的に使うという学習目的であれば、ここまでのしくみの理解は(今はまだ)不要だと思う。

だがもう一つ大事な特性と述べておく。

比較論になるが、広角レンズはピントが合う範囲が広く、望遠レンズはピントが合う範囲がせまくなる。ということがあるのだ。
実はこのことも上の図で解説可能だが、またの機会にしたいと思う。

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徹底的に「ピントを広範囲で合うようにする」のであれば、
広角+絞り込みのコンボ技が良いだろう。
徹底的に「ボケボケにボカしたい」のであれば、
望遠+絞りを開放して穴を大きくするのコンボ技が良いだろう。

いずれにしてもこういう特性を知っておくと、3DCGにおいても不自然な表現を防げるし、逆に現実味のある表現を行うことができると思う。

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様々な要素を考え「自分がこのシーンではどう表現をしたいか」と考えてカメラ・レンズ設定を行っていこう!

【補足】
オンラインセミナー時にはUE4を用いて実演を行った。
UE4でカメラ・レンズの設定をするさいに、
「センサーサイズ」を設定できることを細くしておく。UE4はセンサーの大きさを変更できるのだ。
センサーのサイズを「一般的な一眼レフで使われるもの【フルサイズとよばれるもの】」に変更しておくと、感覚的にわかりやすくなる。
UE4では「Full Frame DSLR」となる。

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●「シーケンサー」で「CineCameraActor」を選択し、詳細パネルから「Curent Camera Settings」。ここの「Filmback」をプルダウンして変更しよう。

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