最後の恋文
なんとなくそうだろうなと思っていたけれど、現実をいざ目の当たりにしてしまうと想像よりずっと苦しくなった。
私は私が思うよりずっと、君のことが好きだったんだと思う。
***
最後に君の家で寝たときに着てたパジャマは、君の匂いがするから洗えずにそのまま畳んでおいた。会えなくて寂しいときはたまに顔を埋めて残り香を嗅いだ。
でもこの匂いは本来私が好きな匂いじゃない。
秋の足音がし始めた頃に君は煙草を吸い始めて、君の臭いは変わってしまった。
たぶん、あの子も吸ってるから。
***
私は花火を見るたびに君のことを思い出してしまうんだろうか。
私はマカロニえんぴつを聴くたびに君のことを考えてしまうんだろうか。
私のほうが、私だけが、好きだったんだろうか。
もっとかわいかったら、もっと痩せてたら、もっとセンスがよかったら、もっと素直になれてたら、もっと性格がよかったら、もっと君に居心地の良さを与えられていたら、
もっと一緒に、いられたんだろうか。
また合鍵を渡してくれたんだろうか。
***
さよならなんて、言わないよ絶対。
だから
君から去ってね。
私の家の合鍵、返してもらわないとな。
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