巣食う物足りて

みてごらん
巣食うものなどどこにもないの
空の青さはどこまでも果てしないから
彼方にいて
今も密かに浸食してきている死にとって
感情をぶつけるにはきれいすぎた器でした
たった一柱の虹がそのたびにあらわれては
迷信が革新に変わり
巣食うもののなかに海を見いだせず、
ひとかけらの砂糖のごとくある地上にては
蟻のように群がり食らい尽くすものにもまれて、人型がみえなくなっていく

たった一言が、宇宙間のごとく加速し続ける時間のなかで、
一つの星を違うことなくさしている
狂犬の争いさえも冷たい眼差しを向ける光にとっては
彼方の星の死さえ闇を照らす物差しであり
ちゃちに見えてそれらはすべて海の余波であり、
音もなくおとずれる革命の予兆に過ぎないのでした

巣食う物足りて望みはすでにみえず
足らずして渇望した道のはずれにて溺れた言葉のなかで
欲求というものがいくつもの名付けられた付加価値に踊りだし、
付加こそが我であると我をもとめ
歪にも口の端を曲げて飲む水にはやはり屈折した光などが
落ちていました
鈍くも眩い残片に、カンダタの夢をみる

ヤサシイ世界は誰かが作ってくれる贋作です

未来が過去に再編成されていく場面の導入は
しかるべくしてこの一瞬であるがゆえに
砂糖に崩れた人の血液が脈々と地上に這いずっているのもまたまちがいなく未来であり、余波でありました

空ばかりみていました
その向こうにはきっと同じものがあるのでしょう
足らぬものなどない世界は鏡となって地上に降りかかる



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イラストは「AIピカソ」から

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