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卒業論文

ツイッターでご挨拶したように、私は2023年4月2日をもって、役者活動を卒業します。

私がお芝居を辞めることに対して強く何かを思う人は多分あまりいないし、ツイッターで軽くご挨拶だけ。と元々は考えていたのですが
いざ、最後の稽古が終わってしまうと、思いが溢れてしまって、文字にしないと気持ちの整理がつかないなと思ったので、こうして長文を投稿することにしました。

つまり、ただの自己満足の蛇足です。
この場を借りてできる限りのお芝居への気持ちを残させてください。

長い長いモノローグだとでも思って、暇な時にでも読んでね。


以前、つかこうへいについて書いた記事でも触れましたが、私がお芝居を始めたきっかけは
つかこうへい劇団が開いていた、子供向けの年間演劇ワークショップです。

元々ごっこ遊びが大好きだった私のことを思い、母親が小学校1年生~4年生の期間、参加させてくれました。
そこでは週1回、ストレッチとダンスと簡単なシアターゲームなどを行い、年度末に地元の大きなホールで演劇の発表をします。

最初は、演劇が楽しいとかそういったことは何も分からなくて、ただただ「先生」と呼ばれていた劇団員の方たちに遊んでもらえるのが楽しくて通っていました。
それが次第に、表現することの楽しさに変化していきました。
キッカケなんて覚えてないし、多分無いのだと思います。ただ1つ覚えているのは、
小学校4年生、つまり最後のワークショップの年度末の発表会の時のことです。

その時のお芝居のテーマは、偶然にも「竜の蕾」と同じ、別れと桜でした。
そして、更なる偶然で当時の私にも桜に見とれる台詞がありました。
『うわ〜、綺麗』
とたった一言でしたが。

「綺麗」と思う感情は、人間にとっていくつかある感情の中で1番思い出したり想像したりしやすいの感情ではないかと私は思います。
当時小学校4年生の私は、『うわ〜、綺麗』というセリフを言うために満開の桜の美しさを想像しました。
そうしたら、私の心にある桜の景色があまりにも美しくて本当に見とれてしまったんです。
今思えば、これが人生で初めての、本当の意味での演技だったんじゃないかと思います。


そんな「遊び」から私の演劇活動は始まりました。それが、私が演劇を好きな理由の1つ目です。
遊び、ということはつまり正解がたくさんあるということだと思います。色んな方法を試して遊んで最高の瞬間を作り上げる、その繰り返しが好きです。
ふざけても、失敗しても、観てくれる人が楽しんでくれたらOKという伸び伸びとした遊び場は私にとってとても大好きな場所でした。


2つ目の好きな理由は、演技による追体験です。
お芝居をしている時、私は美しい桜の木を見れるし、深い海に潜ることができるし、大好きな友達と大喧嘩をすることもできます。

よく、演劇が好きな理由で「違う自分になれる」というものを見ますが
私の場合はちょっと違います。
高校生の時、演劇の授業で(演劇専攻がある高校に通ってました)
演技とは自分の“もしも”を表現するものだと言われたことがあります。
もしも、自分が今とは違う環境で産まれたら
もしも、自分が男に産まれたら
もしも、中学生の時に違う部活を選んでいたら
などの、もしもを沢山組みあわせて生まれるものがお芝居、という意味だったと思います。

だから私にとってのお芝居は違う自分になることではなく、自分の可能性を試すことなんです。
そんなifの追体験が本当に楽しいし、追体験を通じて現実の自分では経験することが出来ないような景色を想像で見たりすることが出来るところが好きでした。


3つ目の理由は、お芝居をしている間は孤独じゃないところです。
お芝居をしている間、私は同じ舞台の上に立っている役者と同じものを想像して共有しています。演劇を使ったコミュニケーションは、台詞というボールがあるから純粋な感情のキャッチボールが行えるので普段よりも素直な気持ちになれるような気がしていました。

それだけじゃなく、舞台はお客様ともイメージを共有できます。
役者と観客の関係性を“共犯者”と表す言葉があるくらい、お客様とは密接な関係にあるのだと思います。
閉鎖された空間で、全く同じ上演時間を共演できる。その日その時間その劇場でおこった出来事は、その瞬間にいた観客と役者しか体験することが出来ません。

どこの誰だかも分からないお客様と演劇を通じて繋がれる瞬間は暖かくてすきです。


最後に。
もうお分かりかと思いますが、私は演劇が嫌いになって卒業するのではありません。

就職の理由はいくつかありますが、表に出せないものもあるので
言える理由だけお伝えすると2つあります。

1つ目は私が永遠に演劇と一緒になるための手段です。役者という職業は身体が命です。でもいつか歩けなくなったり、目が見えなくなる事があったら私は納得出来る分だけのお芝居は出来なくなってしまうと思います。
それ以外にも複数の理由で役者として演劇に関わる場合と、就職して関わる場合なら後者の方がずっと一緒にいれる可能性が高いと考えたので、この道を選びました。
つまり、演劇に永久就職するわけです。やったね!

2つ目は、自分の夢を叶えるためです。私の夢は見たいお芝居を見たいだけ見て、最高の演劇を作るプロデューサーになることです。
もちろん、フリーランスのプロデューサーという道もありますが
自分のやりたい事や、これもまた複数の理由で会社員の方が良いと考えました。

何が言いたいのかというと、私は演劇が大好きだということです。
今、私の演劇への想いには一片の曇りもありません。
15年も連れ添ったものとの別れは寂しいです。離れ難いきもちでいっぱいです。でも、それと同時に今私は新生活への希望の思いもいっぱいに抱えています。
だから安心してください!


絶対やめる!という確固たる決意があるわけでもないのでいつかフラッと戻ってくるかもしれません。戻って来ないかもしれません。
だから観客、スタッフ、役者などどのような立場からなのかは分かりませんが私は劇場に居続けます。ひとまずマタシブヤデアイマショウを観に行きます。楽しみだ!

これからも演劇に触れ続け、お芝居が好きだという自分の気持ちに嘘をつかず真っ直ぐ生きていきたいと思います。

それではまたどこかの劇場でお会いしましょう!
入社式頑張るぞ〜!

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