興幻ばなし「耳にいらずんば」
「耳にいらずんば」
2013年7月5日に金曜ロードショーで放送された 映画「耳すませば 」
その放送終了直後ニコ生にて配信。
2013年7月16日 本名竜也の興幻〇 番外編「耳にいらずんば」を四谷地域センター 12F 多目的ホール にて開催。
その日、佐野はアルバイトを休んだ。
週に3日、深夜のコンビニで過ごす10時間だけが佐野と社会との接点だった。
居場所を求め 拒否され 要求され 応えられず 去ることも出来ない。
ギリギリのバランスで折り合いをつけた結果、
『週3日 10時間 深夜のコンビニで働く事』
これが佐野にとって、生きる為の唯一の術だった。
「え? 何??」
休みを取りたい という意図が伝わるまで3度聞き返された。
「すいません。ちょっと用事があるので。」
6年間勤めるコンビニで佐野が休みを希望するのは初めての事だった。
夕暮れ時、下校中の子供の声で目を覚ました佐野は
今日の部分に ×印 の付いたシフト表を眺め 自分の誕生日だと気付いた。
「さんじゅう・・? ・・・・33歳か。」
窓を開け、仰向けになり 焼けた空を見上げる。
佐野が初めてあの映画を観た時、
埃を被った感情が鮮やかに蘇り 同時に深く絶望した。
しかし画面から目を逸す事ができなかった。
青春に痛恨の悔いを残す者にとってあの映画は残酷なまでに夢を語る。
_____死にたい。
日が沈んだ。 佐野は暗くなっても空を見上げていた。
21時 テレビの明かりが暗闇を切り裂いた。
夜空にピンク色の文字が浮かんだ。
放送が終わり「死にたい・・」と呟いた、青春に痛恨の悔いを残す男「佐野」。マンションの屋上から今まさに飛び降りようとする佐野に「これから聖蹟桜ヶ丘へ行かないか?」と地上から自転車に跨がり手を振る男、佐野の昔からの友達「宇野」。
二人乗りで軋む自転車は夏の湿った夜風の中を ❝あの街❞ へ向かって走っていく。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm21278871
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