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君はTwitter連載BL企画、『俺すご(俺達を弄ぶ奇妙なすごろく)』を知っているか。〜ジークレストが贈るシチュエーション特化BL〜

ジークレストと言えば。

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大人気乙女向けソシャゲ「夢王国と眠れる100人の王子」や、

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HIPHOPプロジェクト「Parabox Live」の企画、運営として有名だ。

すでに終了した星鳴エコーズなども含め、「乙女、女性向け企画会社」として認識されている方が多いのではないだろうか。

しかしそのジークレストが、BL企画ものを作り出していた。


■『俺達を弄ぶ奇妙なすごろく』とは

ジークレストによるTwitter連載型すごろくBLプロジェクトである。

特定の男性キャラ二人が奇妙なすごろくに挑み、マス目に描かれた内容に翻弄されながらも距離を縮めていく…という筋書きだ。

一昨年から去年あたり、Twitterで流行った「BLすごろく」、と言えばピンと来る人も多いのではないだろうか。

画像一枚目のように、マス目ごとに「二人にさせたいシチュエーションorプレイ」が書かれている。

あとはサイコロを転がして進み、駒とした二人に踏んだマスにあるシチュをさせる妄想をしたり、作品を作ってワイワイする遊びだ。

手を繋ぐところから始まり、キス、デート、お泊まり、そして…と、ゴールに近づくほどシチュが過激なものになるので、終わりに近づくほどサイコロを握る手に力がこもり、観客のボルテージも上がる。

テンプレに推しカプを当て嵌めて萌える、S◯Xしないと出られない部屋、の発展系と言えるだろう。


『俺すご』においては、ヤンキーだが実は優等生「辰巳 陽介」✖︎厨二病言動と行動でで辰巳を振り回す生徒会長「花牟礼 葵」をメインに据え、すごろくに翻弄される様子をイラストとSSで綴っている。

「佐々波 始」と「吉 ルカ」はサブキャラとして所々に出演している。


一見勘違いしそうになるが、壁に押し付けられている方が攻めで、怪しげな手つきで顎を触っている方が受けである。

このような形式で二人の様子を綴っていく。

イラストの雰囲気やボードのグラフィックなど、全体的に耽美な雰囲気でまとめている。


■読者が干渉できる部分

『俺すご』において、サイコロを振るのは作中の二人であり、どのマスに止まるかは読者にはわからない。

基本的に見守る立場となる。

とは言え、ある程度要望は汲んでいるようだ。

このように「してほしいシチュ」を募集し、反映させたりもしている。


もちろん全てが叶うわけではないが、いわゆる「シチュ萌え」や「BLあるある」は網羅されているようだ。

Twitterで流行ったものはR18シチュが多めだったが、『俺すご』は全年齢企画らしく、直接的な濡れ場は描写されない。

この手のシチュもので定番の「謎の液体(媚薬)を◯本飲む」系も、匂わせだけで終わっている。お子さまをお持ちのお母さんも安心だ。

また、途中からこの企画を知った人でも、更新内容は公式pixivに逐一まとめられており、一気読みすることができる。

読者の反応を拾いつつも、きちんと萌えツボえを抑えた展開が支持されているようだ。


■女性向けTwitter連載企画の祖となるか。

このように読者を巻き込む連載企画といえば、電撃G’sマガジンのメディアミックス企画「シスタープリンセス」、「Strawberry Panic!」などを連想する。

特に後者はカップリング投票し見事一位となった二人の、その時のお題(シチュ)にそった日常イラストとSSが掲載される企画であり、当時読者であり、渚砂の兄(姉)であった私は懐かしさを感じた。

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ゲーム版は、主人公3人、攻略相手9人、27通りの組み合わせとかいう無茶をしたらどうなるか、を体現した内容だった。

王子様系女子である「天音」✖︎少し推しに弱いが芯は強い「渚砂」を応援していたが、メディアミックスでそれぞれ別のキャラとカプ固定になり、泣き暮らした苦い記憶がある。


その点、『俺すご』は最初から固定カプであり、他のキャラの介入を許さない。

遺伝子組み換え食品ならぬ、カップリング組み替え商品は、BLものでは基本ご法度※であり、おそらく企画側は色々「わかっている」人だろうし、不安はない。

(※主人公総受け、総攻め系はこの限りではない)

人に勧めたい場合はpixivまとめとTwitterアカウントを教えればよく、布教のしやすさも考えられている。


また、BLカップルをTwitterで監視するという企画は斬新である。

次はどんなコマに止まるだろうか、二人の心境の変化は…と、更新を待つ間妄想が膨らみ続ける。焦ったい。

だが、それがいい。BL好きは妄想力が逞しい、焦らすくらいがちょうどいいのだ(持論)。

そして、もしかしたらその妄想が「公式で」お出しされるかもしれない、という期待感を煽る、シチュ投票企画。

Twitter連載企画は数あれど、BLという難しいジャンルを選択しながらも、全体的に隙なくまとまった企画だ。

犬化、分裂など、「便利な道具or人物のせいでこうなった」系も、きちんと揃えている。

BLすごろくと同じく二次創作界隈が発祥のオメガバースなどのように、テンプレさえ押さえていれば如何様にも展開できる柔軟性を持ち合わせているのが、本企画の強みと言える。

既に第一回の連載を終え、サブキャラだった「始」と「ルカ」の二人をメインに据えた第二回が開催中。前回のメイン二人はサブとなる。BL漫画のスピンオフあるある。

また、2が終わってもが終わっても、キャラや舞台を変えればいくらでも連載できるだろう。

あるいは、すごろく部分を変え◯◯しないと出られない部屋を起点としたシチュ特化型ゲームに挿げ替えることも可能だ。


『俺すご』は、斬新かつ丁寧に作られた、未来ある企画であり、後続企画の祖となる素質があるとかんじた。

しかもそれを、乙女系のイメージが強いジークレストが企画した、というのは驚きである。

夢100で乙女を掴み、パラボで声優好きや歌企画好きを掴んだジークレストは今、女性向けノウハウと企画力で、BL好きをも掴もうとしている。


■気になった点

斬新な企画の俺すごだが、気になった点も率直に挙げていく。

□Twitterの強みを生かしきれていない

Twitterで広報する際、重要視されるのはRT数、ふぁぼ数、そしてタグを用いたツイートの数であることは、誰でも知るところである。

故に様々な企業が「話題にしやすい」「ウケやすい」ツイートを模索している。

1、話題にしにくい

体感、BLにおいては「BLあるある」や「これ萌えた!みんな見て」という理由で、フォロワーからそのフォロワーへRTされやすい。

この点、『俺すご』は前者を満たしている。

しかし、イラスト単体は美麗でシチュ肝を押さえているが、見知らぬキャラはスルーされやすい。

バズってる「あるあるネタ」が坊主で裸が多い、と思ったことはないだろうか。

あれは外見の先入観なく、「シチュそのもの」に集中し、己の推しカプに当て嵌めやすいからだと私は分析している。

また、イラスト単体だと「二人がどんな関係性で、どんなシチュなのか分かりづらい」ことが多い。

先の項目で挙げた犬化、分裂はわかりやすいが、このイラストのようにピンと来にくいものもあった。

TLに流れ着いて最初に目が行くのは、大体の場合添付された画像ではないだろうか。そしてどんなに本文やリプで説明しても、イラストでピンと来ない限り、そこまで読み込まずスルーするのだ。


2、そのカプにハマれないとスルーするしかない

また、先に挙げた二つの例における後者の「これ萌えた!みんな見て」については、かなり致命的に思う。

こちらを見てほしい。

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2021年7月28日現在の、公式アカウントのフォロワー数は約7000。

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対して、初代カップルこと陽介✖︎葵のゴールツイートは、

約100RT、約550favにとどまっている。

これを多いと感じるか少ないと感じるかは個人によるだろうが、物語の結末を描いたツイートで、これは少ないと感じた


基本的に、商業BL漫画や小説はキャラも左右も固定である。

固定カプ好きな人には安心、かつ、昔から固定カプ好きに比べリバップル好きはまだまだ少数派である為、『俺すご』もそれに倣っただろうことは容易に想像できる。

しかし、これはTwitterでの連載企画なのだ。

左右完全固定カプであれば、「そのカプに萌えた人」のみRTするのだ。

BLという特質上、RTせずfavに留める人も多いだろうが、もしそれを前提とした企画というのであれば、別にTwitterでなくてもいいのである。

かくいう私もキャラ紹介を見た段階で(私が思う左右と逆だなぁ……)と感じ、すべてのツイートを見る最中も(逆だったらなぁ…)と思ってしまい、集中できなかった。

ゴールまで読み終わったたら、陽介✖︎葵にしっかり萌えたが、RTするほどの熱量は持てなかった。ほとんどの人は、そもそも最後まで辿り着かないのではないだろうか。


いっそのこと、左右非固定にして読者に左右を委ねるか、サブキャラとして分けた二人も参戦した、男四人での恋愛模様を展開してターゲットを複数持ち、「これ萌える!」とRTしてくれそうな人の母数を増やすのはどうか、と考えた。

実際、先述のG'sマガジン企画の「Strawberry Panic!」はそのような企画であった。

しかし、BLにおいて左右は宗教であり、しばしば戦争の火種となる。

百合は左右の位置を気にしない人が多いように感じられるが、BLにおいては左右は宗教であり、左右違いは異教徒であり、解釈違いなのだ。

表立って戦争を仕掛ける人はまずいないが、企画者の意図しないところで火種に着火、炎上するリスクを考えると、左右固定が正しいのである。

リスクを取るか、安全策でいくか、ここにBLを主題とする企画の難しさがある。

総じて、「BL連載企画」としては丁寧に作られているが、「Twitter連載企画」向けにチューニングされ切っていないように感じた。


とはいえ、手本となる先駆者の乏しい企画で、ここまで仕上げたことと、そのチャレンジ精神は凄い。

そしておそらく企画側も問題点に気づいており、改善していこうという姿勢も窺える。

こちらは前回の連載におけるサブキャラをカプにした、『俺すご2』。

問題点1として挙げた「話題にしにくい」を、「即堕ち2コマ」という漫画形式を取ることで、解消を狙っているように見える。


しかし、問題点2の「そのカプにハマれないとスルーするしかない」については微妙だ。

あくまで印象ではあるが、第一回も第二回もカプ傾向が似ているのである。

第一回の陽介✖︎葵が「アウトローに見えて真面目」✖︎「頭が良くて権力持ちだが厨二病残念美人」

第二回の始✖︎ルカが「コミュ強のバンドマン」✖︎「癖の強い上司をサポートできる有能だが、チョロい残念美人」

と、大枠の属性が「ヤンチャ一般人」✖︎「有能美人」で被っている。

もちろん細かい点やくっつく過程は違うだろうし、属性が被っているということは、陽介✖︎葵が好きな人ならおそらく始✖︎ルカも好みだろうし、引き続きよんでくれる可能性が高い。

しかし、陽介✖︎葵が好みではなかった人が、始✖︎ルカを好きになる可能性はどうだろうか。

実際私はこちらも(うーん…)と思ってしまった。

ただ、こういう企画ものは、メインのシナリオライターやイラストレーターの筆が乗る=萌えツボでないと、とてもじゃないが更新を続けられないように思うので、難しいところではある。

夢100のように、ひたすら数を量産するかもしれないが、果たして好みのカプ出てくるまで、この企画に興味を持った人はついてきてくれるだろうか。

今まで女性たちのさまざまなニーズに応えてきた、ジークレストの手腕が問われるだろう。


□公式絵が、本来の左右と逆の構図が多い

現在連載中の俺すば2のカップルは、この二人である。

茶髪の始が攻め。銀髪のルカが受けだ。


そして、企画の顔である公式Twitterのアイコンとヘッダー。

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いずれも、左右逆に配置されている。

細かい、と言われるかもしれないが、ぱっと見受けの方がガタイがよく見え、こちらが左にいるしこちらが攻め、と思う人もいるのではないだろうか。

もちろんここまで徹底的に左右逆なのは、製作者のこだわりなのかもしれないが、ぱっと見の印象と左右が違うとなると、本来取り込めるはずだった層は逃げ、逆だと思ってた人は逃げてしまうのでは、と心配になってしまった。





■『俺すご2』スタート、今が始め時


先述した通り、前回のサブキャラふたりをメインに据えた『俺すご2』がスタートしたばかりだ。

コミュ力おばけのバンドマン✖︎ポンコツチョロイン副会長という組み合わせにピンと来る人や、目新しいTwitter企画を求める方は是非連載を追ってみてほしい。


この企画がさまざまな進化を遂げ、一大プロジェクトになることを願っている。

ちなみに自分は、長髪美形攻めが好きです(小声)


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参考サイト












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