マイクロカレントの話

マイクロカレント療法とはとても微弱な電流を通電することにより細胞の活性化と鎮痛が主な目的になります。
最近では、エステ業界なども注目している電気治療です。

マイクロカレント療法はMENZや微弱電流刺激などの呼称で、使用している周波数帯はほぼ低周波領域で、低周波に分類されます。
ですが、低周波治療とは考え方が全く逆で、出力が小さい方が効果が表れるので、通電時は何も感じません。
低周波や干渉波等の出力mA(ミリアンペア)で出力を上げるほどビリビリが強くなります。一方マイクロカレント療法はμA(マイクロアンペア)で1μAは1mAの1/1000の強さです。
では、何故この感じない程弱い電流に治療効果があるのでしょう?

細胞の中と外には電位差があります。イオンチャンネルといってナトリウムややカリウムなどの電解質が細胞内に入っていく際にプラスになったりマイナスになったりと変化をします。通常細胞の外側はプラスで内側がマイナスとなっています。しかし、細胞に損傷が生じると損傷部損傷電流というマイナスの電流が発生します。損傷電流が発生したことにより細胞が壊れていると認識され、その信号が神経へと伝達されると痛みとして知覚されます。
損傷電流は10~30μAといれ、この電流が発生するミトコンドリアが刺激されATP(アデノシン3リン酸)の合成を促し、組織の回復を始めます。
つまり細胞が壊れた時に自分の体の中で始めている治療に使われているのがマイクロカレントなのです。
じゃあ放ってけばいいのでは?と思うでしょう。
確かに放っておいても理論上自然治癒は望めます。ではこのマイクロカレントは何をしてくれるのでしょうか?

まず先程説明した損傷電流についてです。前述したとおり損傷電流が発生すると神経をとおし痛みとして知覚されるといいました。ここでマイクロカレントを外部から通電する事により、損傷電流の補完が行われます。損傷部に発生したマイナスの電流を一時的にプラスにしてしまうという事です。これにより神経に伝わる信号を抑え鎮痛を図ります。しかし、損傷電流を抑えてしまったらミトコンドリアへの刺激が止まってしまうのでは?と思われるでしょう。ミトコンドリアは通常水素の蓄積などで活性化されますが、このマイクロカレントの電気刺激でも活性化を図れます。つまり、損傷電流を補完しても通電で得られる電気刺激でもミトコンドリアは活性化され、しかも通常時のATP合成より多く合成されます。
マイクロカレント機器が流通し始めた頃は通常より6倍のATP合成が起こるとされていました。メーカーの表記は600%と謳っていました。とてもたくさん何かが起こる気がします。まぁ、でも6倍です。6倍でもすごい事なのですが、最近では1.2倍~良くて2倍ほどではないかと見解も変わってきました。
これにはマイクロカレントが開発された動物実験時に測定した数値が影響しており、マウスに500μAで通電したところ5倍のATPが確認され、出力を上げるとその値は減少し、出力を下げると増加したという結果の元に得られた内容だと思われます。

ATPは生体エネルギーなどと呼ばれることも多く、ミトコンドリアで3大栄養素と酸素によりADP(アデノシン2リン酸)から還元されます。組織損傷の回復や筋肉の伸縮の際に使用され、一つのリン酸が遊離する際にエネルギーとして消費されます。ADPは血液凝固因子でもあり、ATPへの還元は生体にとってとても大切な作用となります。例えば筋肉の収縮は神経の信号により筋小胞体からカルシウムイオンが放出され、このカルシウムイオンとATPとがアクチンフィラメントとミオシンフィラメントとの滑りをよくするとイメージしてください。筋の収縮には不可欠な物質なのです。その収縮後にカルシウムイオンはまた筋小胞に戻っていきますが、ATPはADPへと分解されてしまいます。また、遊離したリン酸が戻っいく途中のカルシウムイオンと結合し、リン酸カルシウムとなってしまうことが筋肉痛の原因ではないかと最近は言われ始めました。
マイクロカレントを通電することにより、このリン酸カルシウムの分解や筋収縮に必要なATPを増やすことにより、筋収縮を円滑にし、また通電されたマイクロカレントは血液を介して伝導されるともいわれ、その電子の影響により毛細血管が拡張し、血流の改善や代謝物質の分解に役立つとされています。

マイクロカレント療法の大まかな効果は簡単に言うと
『治癒の促進(ATP合成の賦活)』と『鎮痛(損傷電流の補完)』です。
マイクロカレント機器も様々な発展をしてきました。
各メーカーが自社の特性を活かした機器がたくさん出ています。立体動態波によって通電をしたり、超音波との併用も可能であったり、損傷部の電位をスキャンして平常の状態に整えたりと、多岐にわたっています。私の経験からすると、最高で最良な電療の一つであり、当院にはなくてはならない機器でもあります。


マイクロカレントの特性の一つとして、周波数が0.1Hzまで下げられることです。これは通電時間が1Hzで1秒間に+と-に1振動のところ、10秒間に1振動で通電できるということになり直流電流に近い状態になります。直流電流の通電は鎮痛効果は高いのでは?とされていましたが低周波で行うと陽極作用という状態になり火傷が起こります。ですので直流電流の治療器は現実的ではなかったのです。しかし、マイクロカレントの出力では火傷が起こることはまずありません。なので安全性の高い電気刺激療法であり、鎮痛効果も低周波より高いと思われます。また、出力が弱い事により、皮膚抵抗も起こらない為、低周波治療器と同様の周波数まで上げて使用する事により低周波的な鎮痛とマイクロカレントの鎮痛の両方の効果も期待できます。
また、損傷電流と同等の電流を通電することにより、損傷電流の発生が治まってしまった部位に対してもう一度治癒機転をもたらす事が可能と考えられ、柔整的に言うところの「亜急性」状態の改善が期待できます。
ADPの回収や血液を流れるといった観点から、石灰化の解消などに役立つ研究が行われれば良いなと期待しています。期待はしていますが、石灰沈着が解消されたという経験はありません。


治療以外としては皮膚の状態が良くなります。なのでエステ業界も取り入れ始めてきています。しかし、厳密にいえば人体への電気の通電は医師を除き医療系国家資格を持っている人が医療器として登録してある機器でしか行ってはいけません。なのでエステ業界で使用しているマイクロカレント機器は家庭用のものと遜色なく、あまり大きな効果を謳っている広告には注意をして下さい。家庭用の治療器は本来自身で購入し、自己責任の元で使用するものであり、医療機器ではないものであるのだから無資格者でも使えるというのは拡大解釈であり、本来違法であるはずにも関わらず蔓延しており、その管轄である保健所などは、エステ・整体などの業種は管轄外とし見て見ぬふりをしています。まぁこれは別のお話です、またにしましょう。
話を戻して、皮膚の状態が良くなりますといいましたが、昔、このマイクロカレント機器が日本に入ってきたのは30年近く前でした。私の修行先の接骨院が日本で最初に仕入れたそうです。その頃は、カール・ルイスを広告塔に売り出していました。
何も感じないので半信半疑で使っていたところ、骨折や捻挫の回復が早くなったそうで、施術のメインとして扱われるようになっていきました。そんな中、足の怪我をした方に使用していたところ、その方はアトピーにより肌が荒れていたそうですが、施術が終了する頃には、怪我をした足だけ肌がきれいになっていた。なんて話を先輩からよく聞かされました。もちろんアトピーの治療を目的としている訳ではなく、たまたまそうだったという話ですので、アトピーでお困りの方は惑わされないで下さい。接骨院などでアトピーが良くなると謳っていた際には、それは医師法に抵触するので絶対に飛びつかないで下さい。万が一効果があるにせよ、それは医師のお仕事です。どうしても試してみたい場合には、必ず主治医に一度相談・同意の上で保険外でご利用になってみてください。当然ですが、接骨院で使用する際にも保険適応外ですし業務範囲外です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?