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(朗読台本)窓の向こうの独白

学校の窓の外と内でぼやいた青春のような何か、です。
男性1名、女性1名で分けておりますが、あくまでも朗読用台本なので
読み分けは必須ではありません。
自由に表現していただければと思います。

⭐︎ご利用案内⭐︎
・利用報告は任意です。
 ご連絡頂けますと、聞きに行けるので助かります😊
・下記のクレジットを概要欄などに表記お願い致します。
 【クレジット表記】
 作品名:窓の向こうの独白
 作者:うさよし
 noteリンク: https://note.com/hondana00_okiba
【OK】
 多少の本文変更(読みやすいようにニュアンス・言い回しを変える程度の変更)
 性別、一人称の変更(男ボク×男オレ、女ワタシ×女アタシ等も可)
【NG】
 作品タイトルの変更


【以下台本本文】


女性)
毎週金曜日の放課後、私は図書委員の委員会活動で図書室に来ている。

他の生徒は部活動や友達と遊びに行ったりする人が多く、
図書室に人が来ることはほとんどない。
たまに先生が「寒いから」と暖房をつけに来てくれたり、様子を見に来たりするけど、忙しいのかすぐに出ていく。
そうなると、図書室には私1人。

耳を澄ますと、窓やドアを隔てた向こう側から、声や物音が聞こえて来る。
ランニングの掛け声、体育館の床とボールがぶつかる音、吹奏楽の管楽器の音色。
ふと、窓の外からパァン!と、野球のボールが勢いよくグローブに収まる時の音がした。
あまりジロジロ見るのはよくないと、分かっていても
この音が聞こえると、図書室の掲示物を作る手が止まり、
窓の外を見ずにはいられない。

今日も、運動場に作られたマウンドに、その人は立っていた。
名前も知らない、話したこともない。
でも、キャッチャーミットに狙いを定める、鋭い目の真剣な横顔が
頭から離れなくて、また、ジッと窓の外のその人を眺めてしまう。

どことなく、昔よく遊んだ…好きだった男の子に似ている気がする。
でもその子は引っ越しをして、それ以降ずっと顔を見ていない。
子供の時の記憶なんて、当てにならない。

どこのクラスだろう。
話してみたい。
そんな事を考えていると、
一瞬、真剣な横顔がこちらを向いたような気がした。
やましい事をしているわけではないけれど、堂々と眺められるほど知り合った間柄ではないし、ジロジロみているのも不自然だし、変なやつだと思われるのも
何となく嫌だ。
そんな考えが、反射的に頭の中をかけめぐって、慌てて目を逸らしてしまった。

私がここにいる事を、図書室から眺めていた事を、
きっと、あなたは知らないまま。

男性)
天気がいい日の放課後、俺は野球部の練習でマウンドに立つ。
控えの選手ではあるものの、いざとなったら試合に出ることもあるかもしれない。
そういう希望があると、自然と練習にも力が入る。

それに、そろそろ次の試合に向けて、スタメンが決まる時期だ。
だから、練習であっても下手なプレーはできない。
チームの役に立てる選手だと、試合に出たいと、
気合を込めて握ったボールを、後輩が構えるキャッチャーミットにめがけて
勢いよく投げた。
つもりだった。

力を入れすぎたのか、ボールはキャッチャーの頭を超えて、
バックネットの中にスポッとおさまった。
「どんまい」そんな掛け声と一緒にボールが返ってきた。
力みすぎても、こんを詰めすぎても、うまくはいかない。

少し休憩しよう、と後輩に声をかけ、マウンドから降りようとした時
校舎がチラッと視界に入った。

校舎の窓のところ、あそこは図書室だろうか。
毎週金曜日、マウンドから見えるあの席にいつも座っているその人の正体を
俺は、知っている。

久しぶり。元気にしてた?
そう声をかけたいけど、5歳の頃引っ越しをして以来、顔も会わせていない。
もしかしたら、俺ことは覚えていないかもしれないし、
そう思うと、なかなか話しづらい。

試合のマウンドに立てたら、少しは俺の事を見てくれるだろうか。
遠くて、しっかり顔は見えないけど、
好きだと思った笑顔は変わらないままだろうか。

俺がここにいる事を、このマウンドから眺めていた事を、
きっとあなたは知らないまま。

女性)この気持ちを恋と呼ぶには、何かが足りない。
男性)この気持ちを友情とするのも何か違う。
女性)憧れ
男性)親しみ
女性)会いたい
男性)話したい
女性)君の名前も
男性)そんな感情につける名前も

わからないけど、
これが「青春」というもの、かもしれない。


作者が読んでみた【朗読】窓の向こうの独白 はこちら↓

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