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茶摘み体験会2019


当園では2013年より初夏に新茶摘みの体験会を行っている。

新茶の季節は毎年天候の違いで約1週間ほど前後するので、年によっては4月20日頃にやっていたこともあるがここ数年は5月の第4週の土日に決まりつつある。

富士山の産地特性として、5月の4週目までくると新芽は成長を止めてしまうため、イベント用の茶園は当日まで芽が残るように前年の秋冬から芽の成長のタイミングなどが揃うように調整をしている。

他所の茶摘み体験では新茶を摘んだ後に出る、いわゆる「遅れ芽」をイベントにしている場合もあるが当園では遅まきながらも必ず「新芽」を摘んでもらうように陰ながら努力をしている。


参加者は茶園に立ち、はじめての茶の木や富士山、駿河湾の風景に驚き、写真を撮る。ひとしきり済んだらカゴを持って茶摘みに入るのだが、木を一列に植えた畝の間に入る時に、そこに張る蜘蛛の巣や芽にいるてんとう虫といった生き物がたくさん住んでいる事に気付く。恐る恐る畝間に入り、顔をしかめて葉を摘む姿を見るたびに、都会の生活は自然と乖離しているのだなぁ・・・と思う。

しばらくして慣れてくると話し声が増え、カゴに貯まる新芽を戦利品として見せ合い始める頃には蜘蛛の巣や虫の存在は脳裏から薄れているのか、茶娘衣装をきてポーズを撮ったりする。それを見るたびに、人間は何処の誰でも自然の中に還る力があるのだなぁ・・・と思う。



体験会を行う目的は、「本物を知ってもらう」事にある。

自分で摘んで、造って、持ち帰る。

今まで茶摘み体験会と言っていたが、本質は「茶作り体験会」なので、来年は名称変更をしようかと思案中だ。

茶を造るのには機械でも4-5時間。手摘みを本気で行うと10時間はかかってしまう程、お茶づくりとは手間暇がかかるもの。参加者はその過程を、労力を、時間を一日がかりで追体験し得た「自分で造った新茶」をお土産にクタクタになりながら帰宅する。

募集段階から一言も「楽しい体験会」とは言っていない。むしろ、他所の体験に比べスパルタでハードなため、ある意味では修行ではないかと自分でも思っている。それでも、2013年の開始以来、毎年20-30人の参加者が途切れず、誰もが「勉強になった」「面白かった」「楽しかった」「美味しかった」と言い残し帰るので、大変な体験も一日だけなら良い思い出になるかと個人的には納得している。一生で一日くらい、茶園で過ごし手造りの茶を造る日があってもバチは当たらないのではないか・・・と。


今年も26人の参加者がヘトヘトになりながら帰っていった。

皆で造った自分たちの新茶。家族や友人、職場の方にどのようにこの体験を話すのだろうか。その際には是非、努力の結晶を一杯にして茶を服しながらお土産話で盛り上がっていれば心から嬉しく思う。







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