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茶の木を育てる

静岡ではチャの木の畑のことを、茶園や茶原、茶畑などと呼ぶ。茶の木を育て、その葉を摘むのは農家の仕事。数ある百姓の仕事の中でこれを選択した人を、茶農家と言う。

茶農家は土壌の違いを把握し、目指す茶の香味に向けて管理体制を変えていく。お茶は作業性を高め、品質を整えるためにりんごやみかんの様に一本立ちで植えず、白菜や大根の様に列を成して畝 〔ウネ〕になるように植える。
農家の仕事は地形に合わせて畝の向きを変えたり、肥料を増やしたり、減らしたり。
香りのよい茶に向いた土には香りのよい品種を植え、甘い茶を造るのに適した時期に葉を収穫する。茶農家は茶の木と会話をして、目指す香味の茶に相応しい原料を育てていけると一流だ。

茶はかつては種から苗を作っていたが、今は挿し木をして苗をつくる。そうすることで品種のクローニングが可能となり、茶園一面に同じ品種を植えることが出来る。
同じ品種を植え揃えることで収穫のタイミングや香味が均一になるため品質は安定する。この技術が完成したのは昭和の40年過ぎと比較的新しい技術だ。それ以前、江戸時代や明治期の人が茶を育てるには種から植える必要があり、結果その頃の茶園は育つ茶の木の一本一本が別の遺伝子・香味の品種の集まりだった。
今ではそのような種から育てた茶の木を実生とか、在来種と呼んでいる。在来種の茶は野趣溢れる香味のものが多く複雑な味わいだが総じて渋い傾向にある。
現在、日本には やぶきた をはじめ100を超える品種が登録されている。交配により生まれた茶の品種は旨味が強かったり渋味が少なかったり香りが独特だったり寒さに強かったり収穫の時期が早かったり遅かったりと、個性を持つものが選ばれる傾向になる。様々な品種の茶があることで在来種の時代とはまた違う形で香味のバラエティが生まれている。

茶の苗が成長して親木になるには5年以上の月日が必要になる。その間5年先を見据えて切り揃え枝振りを整えていく。単年性で90日ほどで収穫できるピーマンやトマトと違い時間がかかる反面、茶の木は一度植えると30年以上は収穫が可能と言われる。それ故に統計などでは茶は野菜ではなく、果樹と同じ分類とされる。
果樹との最大の違いは採取する部位にある。果樹のほとんどが果実を実らせ収穫するが、茶樹はその葉を集める。同じく葉を集めるのは桑くらいではないかと思う。採取する部位が違うため、りんごやみかんとは栽培のポイントが大きく異なる。

長くなったので続きます。

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