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岳陽同窓会に出席して

福岡県の県立高校は進学指導に力を入れていて、特に「国公立大学に何名生徒を進学させるか」について、学区のトップ校が近隣のトップ校を互いにライバル視し、受験戦争をやっていた。

福岡や北九州に負けず劣らずで筑豊も、3学区のトップ校である嘉穂高校、鞍手高校、田川高校も例外ではなかった。

誰が呼んだか「筑豊御三家」という。

田川高校では年3回ある進研模試の度に「模試分析」と書かれたプリントが自身の成績票とは別に配布され、そこには嘉穂と鞍手と田川3校の英国数の偏差値や得点分布が載せられていた。

「おいおい、どうした、嘉穂に負けてるぞ。それで良いのか田川生?」実際に先生からそう言われたかは記憶にないが、明らかにそういう雰囲気はあった。

筑豊No.1の進学校は嘉穂高校であろう。嘉穂高校の歴代進学実績の中で最高の結果は「国公立大学258名」で、この数はその年の福岡県内の学校で1番だったそうだ。(たぶん嘉穂高校は田川とか眼中になく福岡や北九州の高校と競っていたんかな?)その時の学年主任はN先生。N先生は退職後、再任用で田川高校でお勤めなさっていて、僕は高校3年生の1年間お世話になった。

N先生にはガチで3回殴られた。

1回目。「Nるプリ」と呼ばれた英単語をB4の白紙に書きまくるプリントを部活が忙しくてサボって中途半端に書いて提出したら、バレて殴られた。

2回目。理系だったので遅れている物理や化学の勉強がしたくて英語の授業中に隠れてやってたら、バレて殴られた。

3回目。夜遅くまで模試のやり直しをやってて翌日3時間睡眠で朝課外の授業で寝てたら、最前列だったのでバレて殴られた。

N先生の平手打ちは、まず怒号で「前に来い!」「メガネを外せ!」。そして、バシンッ!だった。1回、メガネを外す行程がなかった事があって、その時はメガネは教室の最後方まで飛んで行った。

さて、話は飛んで、昨日10月28日に田川高校の岳陽同窓会があり、同窓会にいらっしゃっていたN先生に10年ぶりにお会いした。84歳になったそうだ。

ちなみに当時殴られていたのは僕だけであり、他の生徒は一切殴られていなかったし、N先生はチャーミングな仕草や独特な面白さ、教科の的確な指導力でみんなから尊敬されていた。

センター終了後、広島大学を受験することを決めた僕の英作文の添削指導を、N先生は快く引き受けてくださった。授業中にむちゃくちゃやってた僕だったが、とても寛大な方だったので添削指導のときに過去を咎められる事は一切なかった。

その7年後、母校の田川高校で講師をすることになった僕は、やはり岳陽同窓会でN先生にお会いした。とにかく全力でやれと励ましてもらった事を覚えている。

嘉穂高校で「国公立大学258名」の記録を出したとき、どんな事を大切にしていたかをN先生に聞いてみた。「チームワークだ」と即答された。特に英語で先陣を切って成績の結果を出しながら、学年に関わる全員の先生の気持ちを受験指導へとまとめていったんだそうだ。まさに言葉の通り受験戦争だったのだなと僕は思った。

賛否両論がある問題だが、福岡の県立高校の手厚い進学指導は、家庭や地域の教育にとってはありがたいことであったことに違いない。福岡県の朝課外や補習は、塾に通う手段やお金がない世帯への教育支援として高い機能を有していた。

しかし、当事者である高校生にとっては自由のない仕組みだった。お金や能力のある生徒にとっては最適な勉強の足枷になることもあり、大学進学以外に価値を感じる生徒も苦痛を強いられた。

解決すべき問題は全体指導だったのかもしれないと思う。ただ、公立学校は学制の性質上、様々な事が学年別の全体指導がベースにあるし、生徒の能力別選別には抵抗がある教員もいるため本当に難しい。

今、県下の、特に地方では公共的な大学進学の機能が損なわれてきているが、果たしてそれは地域とって、そのままで良いのだろうか? 学校がシステム上、公共的な進学指導を取り戻せないのであれば、学校外にその機能を作るべきだと最近僕は思っている。

以上、岳陽同窓会に出席して

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