子どもの純粋な魂を持ち続けることが大切なんだ。

引用:「マッキンリーに死す 〜植村直己の栄光と修羅〜 」 長尾 三郎 著、講談社文庫、p283-284

君たちに僕の考えを話そう。

僕らが子どものときに、目に映る世界は新鮮で、 すべてが新しかった。
やりたいことはなんでもできた。

そうだ。
医者になりたいと思えば、医者になれたし、 登山家になりたければ登山家になれた。
船乗りにだってなれた。

なんにでもなれることができるんだ。

ところが、年をとってくると疲れてくる。

人々はあきらめ、みんな落ち着いてしまう。
世界の美しさを見ようとしなくなってしまう。

大部分の人たちが夢を失っていくんだよ。

僕はいつまでも子ども心を失わずに、 この世を生きようとしてきた。
不思議なもの、すべての美しいものを見るために。
子どもの純粋な魂を持ち続けることが大切なんだ。

いいかい、君たちはやろうと思えばなんでも出来るんだ。

僕と別れたあとも、そのことを思い出してほしい。

1984年2月12日、43歳の誕生日に世界初のマッキンリー冬期単独登頂を果たした。
翌2月13日に行われた交信以降、連絡が取れなくなり消息不明。

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