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日大芸術 「全員加点」の不利益不公平[検証あり]

日大芸術学部であった、昨年と同一問題の出題。 

公式サイトで謝罪と、対応がリリースされています。

世間の反応としては様々。

緩いとか。

受験生をなめてるとか。

受験生や保護者の立場、受験生指導者の立場から見ると、「全員加点で不公平はない」「合否に影響はない」とする大学発表は間違いですが、誰もそのことには言及してないですね。
その上、「既出の問題を知っていた一部の受験生のみが優位になり、試験の公平性が保てない」ために全員、該当箇所を加点するという策をリリースされましたが、逆にこの方が知らないで得点できた生徒には不公平となります。不利益=本来なら合格者が不合格になる可能性が生じまてしまいます。当たり前です。受験は相対評価なのですから。

この件、不利益を被る受験生側の立場に立ち、不合格者がもしかしたら合格かも?という仮説を実証してみました。また、当事者の日大芸術学部の組織側・出題者側の立場にも立って、少し深堀りしてみます。

「そう考える根拠は何か」「代案あるとしたら何ができるのか」はきちんと書くようにしますね。

何があったのか…現在の公式発表

上記公式サイトからの引用です。

「このたび令和3年2月16日(火)に実施いたしました,一般選抜A個別方式第1期英語試験において,5つの大問のうちⅢ,Ⅳ,Ⅴの出題内容が昨年出題した英語試験問題(令和2年2月11日実施)の大問Ⅲ,Ⅳ,Ⅴと同一であったという出題ミスが発生しました。
試験開始直後にその事実が判明したため,試験を即座に中断し,英語の新たな問題冊子を配付し直し,当初の試験時刻を1時間繰り下げたうえで再開,終了いたしました。しかしながら,新たに配付し直した英語の問題冊子にも昨年出題した英語試験問題(令和2年2月11日実施)と重複していた設問があることが試験終了後に判明しました。重複内容は以下のとおりです。
・設問【Ⅰ】(1)が昨年の設問【Ⅰ】(7)と重複
・設問【Ⅱ】(9)が昨年の設問【Ⅱ】(14)と重複
・設問【Ⅱ】(10)が昨年の設問【Ⅱ】(15)と重複
・設問【Ⅱ】(11)が昨年の設問【Ⅱ】(16)と重複
さらに精査したところ,令和3年2月9日(火)に実施いたしました一般選抜A個別方式第1期英語試験においても,昨年出題した英語試験問題(令和2年2月11日実施)と重複していた設問があることを確認しました。内容は以下のとおりです。
・設問【Ⅱ】(9)が昨年の設問【Ⅱ】(11)と重複
・設問【Ⅱ】(10)が昨年の設問【Ⅱ】(13)と重複」

現在、公式サイトではこのような説明になっています。

初期発表との対比からくる矛盾

この発表内容が、共同通信からリリースされた当初発表とは異なる内容になっています。

2月22日 18時40分発信の情報を今も掲載している「東京新聞」産経新聞の各サイトを見ると、以下のような内容です。

 「日本大は22日までに、9日と16日に実施した芸術学部の一般入試の英語で、昨年と同じ問題を出題するなどのミスがあったと発表した。
 日本大によると、16日の試験では、開始直後の点検作業で、5つの大問のうち3つが昨年と同じだったと判明。試験を中断し、不測の事態に備え用意していた別の問題冊子を配って試験を実施したが、終了後に新しい冊子にも昨年と重複した設問があったことが分かった。その後の調査で、9日の試験でも昨年と重複した設問があったことを確認した。」

このような公式発表が当初なされていました。

あなたは何か違和感を感じませんか??

はい、そうです!当初は「開始直後の点検作業」という文句を入れて出題ミスの公式リリースをしました。

これが正常なオペレーションに組み込まれているかのように書かれています。

これ、受験産業にいる身でなくても、この記事を見ている人ならほぼ全員の方が理解される話ですが。

「受験が始まって問題チェックをする」なんてことはあり得ません。

事故防止のために、事前にチェックするのが当たり前です。

このことを書いたが故に、次の指摘ができます。

「9日の出題について、16日の配布し直しした問題について、どちらも開始直後の点検作業が正しく行われていなかった」ことになります。

わかりきったことですが、始まってからの検品なんてありえない。←していたらゴメンなさいね。ただ事前チェックしてなかったか、していたけど見落としたとは言えますね。

「なぜ発覚した時だけ検品したのか」という点の説明がすっぽり抜けてます。

発覚したのは恐らく受験生の一部、フェアな精神を持った生徒の指摘からでしょう(情報求む)

受験生からの指摘を受けて「そんなばかな」という気持ちながら、検品したのでは、という疑念がわきます。初期発表でも、現在の公式発表でも、どうしてこの時だけ検品したのかが一切発表されてない。

こういう大事なことはやっぱり隠しちゃだめなんだよね。

遡って、以下の点について説明責任が生じる事態になっています。

・作問者へのオファーをどう行っていたのか。

・問題の品質管理を組織的にどう行っていたのか。

個々の受験生の人生がかかっているのだから、誠意を持った発表をして欲しいもんです。

受験生への対応について

共同の初期リリースには、以下の点も掲載されています。

9日と16日のいずれの試験も重複していた設問は全員正解とし、合否判定に影響はないとしている。日本大は『受験生に多大な迷惑を掛け、深くおわび申し上げる。出題方法の見直しを図るなどして、再発防止に努める』とのコメントを出した。

いっぽう、公式サイトの掲載には今こういう掲載になっています。

対応を検討した結果,既出の問題を知っていた一部の受験生のみが優位になり,試験の公平性が保てないため,重複していた問題に対して受験者全員正解として扱わせていただきます。なお配点は1問につき各3点です。
受験生ならびに関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申しあげます。
今回の事態を重く受け止め,出題方法についての見直し等を図りミスの防止等を強化し,再発防止に努めてまいります。

この二つを比較して、私は再度強い違和感を持ちました。

全員加点?!合格判定に影響なし?!

公平?!あり得ない!!

その理由について簡単なシミュレーションで示しておきますね。

ちょっと長くなってのでトイレタイム

ふー。
落ち着きました。
話を戻しますね。


全員加点による不合格者の不利益

ここから簡単なシミュレーションをしてみます。
今回の出題ミス以外の合計点が1点差の以下の4名が、合否のボーダーラインにいるものとします。過度に単純化しすぎかもしれませんが、わかりやすさ優先で。

2020年度の芸術学部|映画学科〈映像表現・理論コース〉の合格最低点が233点でした。この付近での合否判定があると仮定しましょう。

まずは該当箇所を全員満点とし、その値で合否判定を行う場合。

Cさん、Dさんが合格しますね。

ところが。

出題ミスの箇所について、それぞれの得点に次のようにばらつきがあった場合はどうなるのか…

なんと。。。AさんBさんが合格している。サンプルの得点も、決して極端な事例ではないです。たった2問の差ですから。

これをもってしても、英語の満点100点満点の12%、学科によっては合格最低点の6%(芸術学部|映画学科〈撮影・録音コース〉の2020年合格最低点が203点)にもなる箇所に「全員加点」を施すことが、いかに公平でないかがわかりますね。

せめて1か所、3点ぐらいだったら、ここまでの事例にはならなかったと考えられますが。もう少し考えてから発表すべきでした。

不合格した受験生は怒っていいと思います。納得できるはずがないでしょ、これ。

理想的な対応は

で、このような指摘は、政治で言えば野党が無責任な指摘をしてるのと何ら変わらない。リモチューがいつも考えるのは、具体性のある代案・提案です。
今回理想的な対応は以下の通りだと考えられます。

全員満点加点はすでに公表してしまいましたので曲げることはできません。そのため、まずは全員加点し集計、上位から該当人数番目までで合格者を出します。

その後、合格最低ラインの上下6点の中で該当部分の得点(各自の得点)による再集計・並べ替えをする。で、全員加点した結果合格した受験生がいる最低ラインまでを拾い上げ、不合格ラインだった受験生を救済合格にします。

そのうえで合格発表をします。

合格者最低点は2つの得点が生じることになりますが、初期発表で「全員加点」を発表してしまった以上、しかたないことです。

これを行う大学側のデメリットは、「入学者が多くなり、文科省から補助金が抑制される」こと。そのリスクも考えられますが、試験問題の品質を担保していなかったミスのためです。涙をこらえて受け入れるべきです。

また、早急に「過去同様の事態があったか、なかったか」を公表すべきですね。こんな管理上のミスは、過去にも生じている可能性が高いです。

私が学長ならば、すべて総動員して、同様の再出題がなかったかを調べ徹底的に調査し公表します。


以上、受験生を守るためにはわかってる大人が空気を読まず、声を上げなければならないと思う中、誰も言わないので書いておきました。


自分にとって、受験生が一部の大人の帳尻合わせにより犠牲になることは、同じ大人の一人としては見逃せません。

自分にとって大事なことは、若者が裏切られた気持ちを持たない社会の提供だと思いこの仕事をしてます。





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