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生誕140周年 吉田博展

吉田博展
千葉市美術館

吉田博は木版画家だと思って観に行ったんですが、手法がどうというより、根本的に風景画家でした。
『絵画の鬼』という称号の通り、素描の的確さに惚れ惚れしました。
展示されていた素描の数は少なかったけど、作品から素描の数が尋常じゃないんだろうなと思わせられました。とにかくデッサン力が半端無かった。

海外に何度も行き、世界と日本を見比べながら、日本人にしか描けない風景画を描くという信念によって、時間による光や大気が丁寧に絵に現れていました。水彩はそれを定着するのに適している。
逆に油彩は持ち味の空気感を表現するのにはいささか向かないのかなとも。油彩はどちらかというと登山家としての表現が強かったです。ただの好みで言えば水彩の空気感大好きなので水彩を推したいです。

40歳過ぎて着手した木版画は、人生で身に付けたデッサン力とデザインセンスの総括的な表現なんだと思いました。
確かなデッサン力がなければあんなに木版の版も重ねなれない。
普通木版は10数回くらいしか版を重ねないらしいが、吉田博は多いもので100近い版を重ねているらしい。
本来分業である刷りにもこだわり、自ら監修しているからこそ風景画家としてのずば抜けた木版画作品ができていました。
本当に版画の色のグラデーションが綺麗だし、選ぶ形もハイセンスで超かっこよかった。

登山が趣味で息子に穂高という名前を付けたり、実際に山で筆を取ったり、何度も海外に行ったり、自分が違うと思う絵には絵で真っ向勝負していく妥協しない姿勢があれほどの作品まで仕立て上げるのだろうなあ。

水彩、油彩、木版と人生を追っていく展示の仕方も見やすかったです。
この展示、千葉市美術館では5/22までだったのですが、どうやら全国巡回するようなのでぜひ見てください。
来年は東京の損保ジャパンでも観れるみたいなのでわたしもまた観に行けたらいいなと思います。

http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2016/0409/0409.html

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