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かくかくしかじか1〜5巻 東村アキコ感想文

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漫画家東村アキコの自伝漫画。
2015年度文化庁メディア芸術祭賞受賞作。

今年のメディア芸術祭に行った時に受賞作として並んでいて原画を見て読んでみたいなあと思って手に取った作品。

多分ツイッターやってる人、特に美大生はRTで回ってきたことがあると思うんですけど、この作品です。

これ見たときウッッッってなった美大生は一体何人いるの?一網打尽じゃない??(デザ科でも油断は出来ない)
ほかにも学費の話されてるシーンとか、ごめんなさいごめんなさいわたしはクズですって気持ちになるからそれを払拭するくらい私たちは作るしかない…罰を背負って美大に行くんだ…。

……すでに血みどろですが気を取り直して、
メ芸祭からだいぶ経つというのに積ん読状態だった1巻をやっと手に取って読み出したら止まらずあっという間に1巻を読破し、これは続き読まなきゃダメなやつだ、と思い夜中にスマホからAmazonで注文。
Amazonは本当に優秀なので即日届きました。

そして2巻から5巻まで一気読み。
号泣。

あらすじは、
高校生の主人公明子が漫画家になりたくて美大を目指すために通った絵画教室の日高先生との物語。

先生はとにかく「下手くそ」「描け」と言う。
先生は明子は画家になるものだと思っているけれど本人は漫画家になりたい。それを言えないまま大学進学。そして大学に入って遊び呆ける明子。描けない。描きたいものがない。なのに誘惑はある。そんな日々。

絵を描くことはしんどい。
お金にならないどころか画材でお金は飛んでくし、大きな美術館に飾られるわけじゃない。
なにより描いているときの孤独感。この線で正しいのか、この色でいいのか、そもそもモチーフはこれでいいのか。正解が分からない。
それでも絵を描く人間は絵を描くことをやめられない。

絵を描くことから入って美大受験した美大生にはあまりにも、それはもう日高先生の竹刀どころか真剣でバッサバッサと斬られるようなストーリー。
実話ってことは、同じような経路を辿った多くの人がいるということで、共感を生まないわけがない。
たとえ都会の予備校に通った人でも、やはりあのひたすら描いていた日々はどこで描いていたとしても一緒だな、と。(通った期間やどんな人に教わったかはまた別だけれど)
美大生であるわたしとそうでない人とリアル感とかどう受け止めるんだろうとかそういう違いはすごく興味深いけれど、きっと人それぞれ明子にとっての絵だったものがあるはずで、だから人は自分の身とは違う物語にも感情移入できるんだろう。

グッとくるシーンや描写はたくさんあったのだけど、特に印象的だったのは、横顔だ。
特に明子の横顔。
自伝なので当時の回想から現在の漫画を描いている明子に場面が切り替わるときがあるのだけど、その表情には絶望や罪悪感が滲んでいる。
それは多分5巻のモノローグにあるように明子にとってこれが「ひどい話」だから。
どう「ひどい」かは読んでもらいたいです。
きっと誰にでもそういうひどさはあるから痛い。痛いから背筋が伸びる。
そういう作品でした。

読んだあと、予備校に行きたくなったし、予備校に行く前に通っていたアトリエにも、中高の美術室にも行きたくなりました。
でもどこよりも大学に行きたくなりました。


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