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爪と歯

1年ぶりの歯科検診。夏の診察台では素足。足の爪が綺麗じゃないから嫌だな。ネイルももっていないし、ネイルしたところで、綺麗にはならないのを知っている。
手と違って、足の爪は年齢が現れる。死んだ母はもっと汚かった。
歯医者さんに行くのがちょっと憂鬱。
その時、本当に、本当に偶然に、机の上の娘の不用品の中に小さな箱を見つけた。桜貝みたいな付け爪が並んでた。四角いの。足の爪用。
とっさに手に取り、無我夢中で、専用両面シールで張り付けた。
爪の大きさは7種類。二番目に大きいのを親指にして、一番小さいのを人差し指に使った。私の足の指の爪はそういう構成。
全部貼ったら、急激に世界が変化した。
何回も、上から足の爪を眺める。
歯医者さんについて、名前を呼ばれて、診察台に上がっても足の爪をみる。
嬉しい。何度も、頭を上げてみてみる。
歯科衛生士さんが歯を検査して、レントゲンを取って、先生が最後にチェック。
「1年間、楽しかったって、口の中が物語っていますね」
衛生士さんが、「でも、左上、三番、レントゲンでは、根が薄くなってます」と伝えると、先生が、「固いもの、食べた?」って聞いたので、
「バゲット…、フランスパンを1日に2本食べました。安かったので」と答えた。先生の目が、キラッと光った気がした。そして、「安かった…。ことが高くつく」とボソッと答えた。
直前の隣の診察台の患者さんと先生の話しを思い出した。
インプラントを勧める先生に対し、「この夏は、主人の部屋のエアコンが壊れて何かと物入りで…」先生は、一言二言何かいい、隣の人は、消え入る声で、「少し、考えさせてください…」と言った。そのあと、隣からは、「20ー80、それとも、80-20?頑張らないと」という言葉が聞こえ、先生も、「80歳で20本ね。」と続けた。
もう、フランスパンも食べられないな。3年前は、大好きなジャイアントコーンをあきらめたんだった。先生に、「フランスパン止めて、クロワッサンにします」というと笑ってた。
歯は今、26本。これ以上は、絶対になくしたくないな。
急に疲れた。