透明な渚に貝殻が揺れている
白い砂浜
あなたの横顔は遠く
はるかな夢を見ている
夕暮れるまで空を眺め
ささやく声は水底の歌

いつか交わした約束は
記憶の波に呑まれ
まっさらな青だけにゆだねている

海のはてまで生きてゆくなら
真珠の祈りに溺れていて
やがては消える
うたかたの言の葉

細い小指にはめた憂いを
銀色に反射する月のさやけさ
永遠に途切れたオルゴール
またたきのまに零れる旋律

わたつみの眠るところへ
しがらみは捨てたまま駆けていて
夏の幻にとらわれるたましい
散らした火花が地に落ちるまで
夜は静かに更けていく

仄かな鎖骨をいろどる熱
ありきたりな「離さないで」が
潮騒にまぎれてきこえない
あなたの横顔は遠く
醒めない夢を見る

透明な渚は夜に咲く花

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?