夢見のガレリア

細やかな雨滴が高い硝子を叩き、反響が反響を呼び、石畳に降りかかる。明るさを透かした灰白色。曇る屋根の向うをおだやかな濃淡が流れてゆく。たちのぼる雑踏。竪琴の音色と歌う声。貞淑な薔薇は甘い花弁で囁いて、白昼に見せる春の夢。レースが切り取った窓の奥。紅茶の香りが窓際をみたしている、時の経過をせきとめるごと。煉瓦の隙間にのぞく路地の裏は、寓話の続き、御伽の樹。ひそやかな足音に忍ばせて、名もなき物語の前奏曲。茶色いブーツのつま先に、まるい足取りの行く先に、あざやかな朝がめざめる。遠いガレリア。

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