見出し画像

(お蔵入りコント)『親父ギャグ売り~大団円~』

↓前回

『親父ギャグ売り~大団円~』

アチャ:駄洒錬太郞(だじゃれんたろう)。親父ギャグ売り。裁判官。

モネ:稿井笑太(わらいしょうた)。親父ギャグ好き青年。指ピストラー。

舞台上道具なし。2人板付き。(下手にアチャ、上手にモネ)

□CDトラック1「雨の音」再生
■明転F.I.(少し青みがかった照明)
□CDトラック 1「雨の音」、F.O.

アチャ「…笑太君。」

モネ「…錬太郞さん。俺、」

アチャ「みなまで言わずとも、君の顔を見れば解る。波亜子と決着をつけたんだね。」

モネ「はい…。俺は、俺は(ピストル形にした自分の手を見ながら)この手で母さんを…。」

アチャ「笑太君、あまり自分を責めないようにね。仕方のないことだったんだ。」

モネ「避けられない運命だったのは、解ってます。でも…本当に他に道は無かったんでしょうか。」

アチャ「…。」

モネ「父さんも母さんも死なずに済んで、僕も麗亜も生まれてきて、みんなが幸せになる、そんな未来は無かったんでしょうか。」

アチャ「まさに絵に描いたようなハッピーエンドだな。」

モネ「そんな都合のいい話、あり得ないですよね…。」

アチャ「いや、あり得ないこともないかも知れないぞ。」

モネ「え?」

アチャ「少し、そこで待っていなさい。」

アチャ、舞台下手袖にはける。

モネ「錬太郞さん?」

アチャ、大きな丸を抱えて下手袖から出て来る。

アチャ「お待たせ出まかせ風まかせ!」

モネ「錬太郞さん、手に持っているその丸いのは何?」

アチャ「これは『大団円』だ!!!」

モネ「だ、大団円!!?"モノ"が実在するの!!?」

アチャ「大団円は…あります!!!」

モネ「STAP細胞みたいに言った!!!」

アチャ「さあ、笑太君!この大団円に手をかざすのだ!」

モネ「手を?こ、こう?(大団円を触る)」

アチャ「そう!そして心の中で『大団円―ッ!』と叫ぶイメージをしながら、実際には小声で『大団円』と唱えるんだ!」

モネ「ややこしいな!え?心の中で叫びながら、実際には小声で?…(小声で)ダイダンエン。」

アチャ「キュインキュインキュインキュイン!!!」

モネ「な!なんだ!?何が起こるんだ!!?」

アチャ「あ、今のは私の口癖だよ!」

モネ「嘘つけ!今の今まで一度もそんな口癖出てないじゃないか!」

アチャ「出てた!この物語で切り取られたシーンではたまたま出てなかっただけで!私の人生の多くのシーンで出てた!」

モネ「いや確かに舞台上で描かれるのはその登場人物の人生のほんの一部に過ぎないけど!!!」

□CDトラック2「名言リフレイン」再生
ナレ「(和太鼓の音)いや確かに舞台上で描かれるのはその登場人物の人生のほんの一部に過ぎないけど!!!(ヴィブラスラップの音)」

アチャ「キュインキュインキュインキュイン!!!」

モネ「…で、結局何も起きないじゃないか!やっぱりそれが大団円っていうのは嘘なんだろ!」

アチャ「いいや!本当さ!現に今、ハッピーエンドが始まりつつある!」

モネ「そんなワケ…ん?何か…聴こえる?」

□CDトラック3「大団円音頭」再生

ナレ「(アチャの歌声)大♪大♪大団円でダダンがダン♪(あそ~れ!) 大♪大♪大団円でダダンがダン♪(あよいしょ!)」

モネ「これは…『大団円音頭』だ!!!」

アチャ「さあ音頭のリズムに合せて踊るのだ!あそーれ!」

ナレ「(アチャの歌声)大♪大♪大団円でダダンがダン♪(あそ~れ!) 大♪大♪大団円でダダンがダン♪(あよいしょ!)」

アチャ、モネ、大団円音頭のリズムに合せて踊り始める。

アチャ「よーし!大団円パワーがたまってきたぞ!!!」

モネ「大団円パワー!?」

アチャ「あともうちょい!あともうちょい!ひがしー!!!」

モネ「え!?」

アチャ「みなみー!!!」

モネ「え!?」

アチャ「にしーーー!!!」

モネ「え!!?」

アチャ「来たーーーーーーーーーーー!!!!!!」

■青っぽい照明から全明転へ

モネ「雨が上がった!!!」

□CDトラック 4「錬太郞(アチャ)が歌っているLove Somebody」再生

ナレ「ララララブ サムバディ 都内~♪ ララララララブ 551の 蓬莱~♪ エンダーウィ ネバネバネバネバ ネバネバネ~バネバ納豆 お家賃 3倍 都内~♪」

モネ「なんか!!!良い雰囲気で全部上手くまとまりそうな音楽が流れてきたー!!!」

アチャ、音楽に合わせてなんか気持ちよさそうに踊っている。しかし、音楽はイントロ終わりで急に終わる。

モネ「あれ!?良い感じの雰囲気の音楽が止まった!!?」

ナレ「室井さーん!!!」

モネ「何何何?」

ナレ「バッドエンドブリッジ封鎖できませーーーん!!!」

モネ「え?え?え?」

ナレ「大団円…失敗ッッッ!!!」

モネ「えーーーーーーーッッッ!!!?」

アチャ「すまない。笑太君、大団円失敗しちゃった。」

モネ「失敗しちゃったの!!?」

アチャ「ああ。やっぱりメルカリで買った大団円だったからかな。」

モネ「メルカリで売ってたの!!?」

アチャ「ああ。800円。」

モネ「絶対偽物じゃん!!!」

アチャ「くそぉ!!!せっかくこの物語を良い感じの大団円で終わらせようと思っていたのに!!!」

モネ「ってことは、父さんも母さんも甦らないってこと?」

アチャ「うん。死にっぱなし。」

モネ「嫌な言い方だな!!!」

アチャ「まぁ世の中そんなに上手くはいかないということだ。勉強になったな。公文式みたいだ。”苦悶”の表情を浮かべながら公文に行くもん!」

モネ「ダメだ…ショックがデカすぎて、大好きな親父ギャグでも笑えない…。」

□CDトラック5「悪魔の声1」再生
ナレ「フッフッフ…いい感じに絶望しているな、人の子よ。」

モネ「誰だ!?この声は!?」

ナレ「私か?私は、」

モネ「わかったぞ!絶望している人間にこのタイミングで語りかけてくる感じ!悪魔だな!?あ、そうだよ!だって『人の子』とか言ってたし!っていうかアレだろ!お前、俺の親父たぶらかして変な契約させて寿命奪って波亜子をこの世に生み出して、すべてのトラブルの原因になったあの悪魔だろ!絶対!あ、でもお前が親父と契約してなかったら、今頃僕はこの世に存在していないことになるからその点は感謝しないとだな!ありがとう悪魔!」

□CDトラック6「悪魔の声2」再生
ナレ「早い早い早い!理解も早いし、口も早いし!」

モネ「親父譲りなんだ!ゴメンな!」

ナレ「本当にお前は父親にそっくりだな。」

アチャ「そういうお前は私と声がそっくりだな!」

ナレ「そこは触れないでくれ。」

アチャ「フレナイディー・マーキュリー!マボ~ドォ~フ~♪バーミヤン・ラプソディ!!!」

モネ「話がややこしくなるから、どっか行っといてください!!!」

アチャ「はいっ!!!」

アチャ、ビートたけしさんみたいな走り方で舞台下手袖にはける。

モネ「で、今更悪魔が一体俺たちに何の用だ!?まさか、この物語の哀しい結末に責任を感じて、魔力を使って何とか大団円にしに来たとかじゃないだろうな!!?」

アチャ「(影マイク)そのとおりだよ!!!」

モネ「えぇ!!?」

アチャ「(影マイク)お前わかってて言ってるだろ!絶対!」

モネ「まさか本当にこの物語を大団円させてくれるのか!!?」

アチャ「(影マイク)ああそうだよ!!!」

モネ「お前、本当に悪魔なのか!?悪魔にしては人が良すぎる気がするんだけど。」

アチャ「(影マイク)うるさいッ!!!こういう悪魔が居たっていいだろ!!!魔界も今は多様性の時代なんだ!!!」

モネ「『多様性』って言葉、なんだか便利に使われ過ぎだよな。」

アチャ「(影マイク)そこ掘り下げたら話が長くなるぞ!!!」

モネ「嫌だ!!!俺はせっかちだからこの話はここでおしまい!!!」

アチャ「(影マイク)よし、ものわかりの良い人の子だ。では、私の魔力を使ってこの滅茶苦茶な物語に大団円を迎えさせてやろう!」

モネ「引き換えの魂とか要らないのか?」

アチャ「(影マイク)要らない!!!俺、魂嫌いなんだ!!!」

モネ「魂嫌いな悪魔がいるのか!!?」

アチャ「(影マイク)だからそんな悪魔が居たっていいだろ!!!」

モネ「ちなみになんで魂嫌いなんだ?」

アチャ「(影マイク)子どもの頃に食べてあたったことがあるんだ…。」

モネ「なるほど、トラウマなんだな。」

アチャ「(影マイク)とにかく、お前の望みどおり全てをハッピーエンドにしてやる!!!行くぞぉー!!!はあああぁぁぁぁーーーーーーーッ!!!!!!」

□CDトラック7「なんか魔力っぽいSE」再生
■SEに合せてカラフルな照明で煽る

モネ「おおおおおぉぉぉぉーーーーーッ!!!!!!何かが起こりそうだぞぉぉぉーーーーーッ!!!」

■暗転F.O.
暗転している間にモネ、上手袖にはける。
□CDトラック8「One Last Kiss/宇多田ヒカル」再生
■イントロ終わりで明転F.I.

アチャ(赤いウィッグ)下手袖から登場。

アチャ「なんで!?なんでうちが生きているっちゃ!?」

モネ、上手袖から登場。

モネ「波亜子!?お前、波亜子なのか!!?」

アチャ「アンタは、笑介!!?」

モネ「俺たち、死んだはずじゃ?」

モネ、立ち位置を少し後ろにずらして、

モネ「悪魔が全てうまくまとめてくれたのさ。父さん、母さん。」

モネ、最初の立ち位置に戻って、

アチャ・モネ「(2人同時に)笑介!!?」

アチャ、立ち位置を後ろにずらして赤いウィッグを外しておじさん眼鏡を掛けて、

アチャ「ハッピーエンドはやっぱりええんどぉ~!!!」

モネ「錬太郞さん!!!…そうだ、麗亜は?」

アチャ「居るじゃないか、君の後ろに。」

モネ「え!?」

モネ、後ろを振り返って、立ち位置をずらして水色のウィッグをつけて

モネ「おかえり、本当のお父さん。」

モネ、立ち位置を戻してウィッグを取って、

モネ「麗亜…大きくなったな…。」

モネ、立ち位置をずらして水色のウィッグをつけて

モネ「お父さん…抱き締めてよ。」

モネ、立ち位置を戻して水色のウィッグを取って

モネ「麗亜…父親失格のこの俺に、そんなことは出来ない…。」

モネ、立ち位置をずらして水色ウィッグをつけて

モネ「この意気地なし!今までずっと逃げてたんだから、娘のわがままのひとつくらい聴きなさいよね!」

モネ、立ち位置を戻して水色のウィッグを取って

モネ「…わかった。(両手を広げて)ほら、おいで麗亜。」

モネ、立ち位置をずらして水色のウィッグをつけて

モネ「(両手を広げて駆け寄りながら)おとうさ~ん!!!」

モネ、立ち位置を戻して水色のウィッグを取って

モネ「(麗亜を抱き締めるマイムをしながら)ごめんな!今まで一度も抱き締めてやれなくてごめんな!」

アチャはずっと「うわ~大変そう。」という顔をして眺めている。モネ、立ち位置をずらして

モネ「2人で仲睦まじいとこ悪いんだけど、家族はもうひとり居るんだぜ?」

モネ、立ち位置をずらして

モネ「笑太!!!」

モネ、立ち位置をずらして水色のウィッグをつけて

モネ「お兄ちゃん!!!」

モネ、立ち位置をずらして水色のウィッグを取って、アチャの方を振り返って

モネ「…俺は今、誰だ?」

アチャ「いや、わかんないわかんない!!!」

モネ「そう!そうなんだ!(客席の方を向いて)僕たちはみんな自分が本当は誰なのかわからないんだ!」

アチャ「…(客席の方を向いて)そう!だから私たちはずっと自分を探しながら生きていく!」

モネ「自分を探す、」

アチャ「終わらない旅。」

モネ「それを僕たちは、」

アチャ・モネ「人生と呼ぶのだ!!!」

□CDトラック8「One Last Kiss/宇多田ヒカル」、一旦ボリュームを上げて煽り、数秒後にボリュームを下げる。

アチャ「(センターに移動してしっかり間を使って)こんな終わり方で、おおわりぃ!」

■暗転F.O.
□CDトラック8「One Last Kiss/宇多田ヒカル」煽って、F.O.