見出し画像

mother(2010)

先週の金曜日に坂元裕二さん脚本の「花束みたいな恋をした」が公開されて、映画館見に行きたいなでもなかなか時間合わないなとりあえず坂元作品みたいなと思って。Hulu契約して見ました。

結局土曜日の夕方から日曜日の朝にかけて全話一気見しちゃったから映画よりずっと時間かけちゃった。

主演:松雪泰子
脚本:坂元裕二
プロデューサー:次屋尚
制作:日本テレビ

このドラマにしたのは「脚本家・坂元裕二インタビュー (3) 初対面の芦田愛菜にオーラを見た」を読んで。

──「Mother」で道木怜南を演じた芦田愛菜さんと初めて出会ったときのことを教えてください。

坂元 普段はオーディションに行かないんですけど、「Mother」プロデューサーの次屋(尚)さんに「ちょっと揉めてるから来てくれ」って言われて、日本テレビのリハーサル室に行ってドアを開けたら、最後まで残った5人が並んで座っていて。パッと見た瞬間、「あ、あの子だ」と思ったんです。変な話ですけど、オーラを見たのは愛菜ちゃんが最初で最後です。

 道木怜南は小学1年生という設定なので、ほかの子は1年生から3年生ぐらいまでのちょっと大きい子だったんだけど、愛菜ちゃんはひとりだけ幼稚園の年中さんだったんです。一番幼かったけど、明らかにたたずまいが違っていました。特別な子っていうのはいるもんなんだなと思いましたね。

以下は感想の記録でした。

1.芦田愛菜ちゃんすごい

当時5歳でこれだけの演技。もちろん俳優さんたち皆さんすごいのだけれど彼女の演技がこのドラマを更に引っ張ってる、、と思いました。文字を読むのもスムーズじゃないはずの年齢なのにあの量のセリフ、画を作られるだけの表情。ひたすらに感嘆でした。

画像1

2.誰もが自分の正義持ってる

あらすじとして簡潔にすると、母親とその交際相手に虐待されていた女の子を小学校教師の女性が誘拐して守ろうとする話、で。
小学校教師の方に正義があるように感情移入してしまいがちなのだけれど、話が進むにつれて、母親にも女の子を愛した過去と虐待してしまった背景があるし、交際相手にも女の子に対するぎりぎりの憐れみがある。それらがとても丁寧に描かれていくのは「カルテット」を思い出した。

3.法律は何を守るのか

松雪泰子さん演じる小学校教師 "奈緒" は、児童相談所のような社会システムでは女の子を虐待から守られないと判断して連れ去る。

芦田愛菜ちゃん演じる "伶奈" も奈緒に付いていくことを選択する。その後実の母と対面して抱きしめられても奈緒を選ぶ。

それでも法律は奈緒を逮捕する。

ドラマの終盤で田中裕子さん演じる奈緒のお母さん "うっかりさん" と山本耕史さん演じる新聞記者 "藤吉" は終盤でこう会話するんです。

「あの子は母親になろうとしただけなんです」
「それが罪だったんです。母性を与えることは彼女を守る行為を逸脱しているんです。」

法律は何を守るのか。

社会の仕組みというものは常に個々の具体性を考慮し切られないし個人の感情を汲み取ることはできない(それをしていたら仕組みにならない)

法律は誰にとっても万全なもの、ではないし。何かを守りたいと自分の正義を持つ時に法律に反さざるを得ない時がある。当たり前のような事実を突きつけられるのでした。

4.言葉のお手玉はやはり坂元作品

劇中、ちゃぶ台を囲んで伶奈ちゃんとうっかりさんはしり取りをし続ける。

奈緒と伶奈ちゃんは好きなものを交互に言い合い思いを交換する。

坂元さんは自分の作品において雑談はリアリティさと結び付く無くてはならないものだというようなことを話していたのだけれど、そのお手玉のようにポーンポーンと言葉が交換されていくシーンは「anone」の居間でのシーンを思い起こさせるものだった。

5.松雪泰子さんと北海道

最後に、主演の松雪泰子さんのあの色の白さとが北海道・室蘭の景色に、あの儚さが渡鳥という漂流するものを研究していたという背景がとても似合っていて。

画像2

その中で、あぁ、すごい、、と思ったのが、奈緒の育ての母演じる高畑淳子さんが「私はあなたたち(自分の実娘2人)を守らなければいけないの」と本当に大切にしてきた(その描写は登場以降各話でとても丁寧に描かれている)奈緒に養子離縁届を出すシーン。

画像3

高畑淳子さんが背筋を伸ばし震える手で涙を浮かべて、妹演じる倉科カナさんと酒井若菜さんが泣きながら姉である奈緒を引き止める場面で、

松雪泰子さんはただ眉を静かに寄せて、悲しみの中で、ただ、届けに署名をして、母に印を催促して、妹に姉としての言葉を告げるのでした。

見ている私でさえ涙がポロポロ止まらない中

その顔は娘としてではなく伶奈の母として佇んでいるのでした。

これを演じていて涙が出ないことがあるのか。

それ程に母親となるのか。

松雪泰子さんの演技は静かに切迫してくるのでした。


花束みたいな恋をした、やっぱり見にいこう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?