「占い」「開運」商法の問題
国民生活センター(国セン)は、消費生活トラブルに関する相談や商品テストなどを行う独立行政法人だ。悪質商法や製品事故などのホットな情報を報道発表しており、ニュースを通じて私たちは意識せずとも国センの情報に接している筈だ。
その国センが新たに発表したのが、占いサイトに関する注意喚起だ。下の画像をクリックすると国センの当該情報に飛ぶので、是非詳細PDFまでご一読いただきたい。
このnoteを読んでおられるのは仏教関係者が多いと思うが、「必ず宝くじの高額当選に導く」「三つの徳を授ける」「私はあなたの守護霊から担当占い師に任命された」といったこの占い商法の謳い文句について何を感じられるだろう。
占いや開運商法の広告は、新聞折り込みちらしや雑誌裏表紙などに頻繁に掲載されている。多額の広告費用を払ってペイするカラクリは、今回の国セン報道発表資料から見て取れるだろう。神秘的な能力を謳い、一度購買した顧客を口八丁でつなぎ止め、「情報交換料」という形で多額の金銭を詐取するのだ。占いサイトと情報交換業者は表面上別の組織ということにして、消費生活センターの介入を困難にしている。もちろん占いサイトは情報交換業者のサクラだと思っていい。この場合、占いを始めとする神秘的な謳い文句は、情報交換料を稼ぐための釣り餌でしかない。
私たち宗教者の活動と、こうした「業者」の活動は、何が似ていて何が違うのか。もちろん内心は違う。前者は信心という心の働きに基づくもの、後者は金儲けを目的としたものだ。しかし内心は外から確かめようがない。内心に連動する外形の違いを説明することは、難しい面もあるが、不可能ではないと考えている。宗教活動と悪質商法が決して混同されることのないよう、私たち宗教者の側が、両者の違いを明確に意識しておく必要がある。
そして、私にとってこの問題は、「智慧を否定した信」ではなく「智慧の代わりとなる信」とは何かを考える上でも避けては通れないものだ。一方で開運商法を否定し、他方で宗教・信心を肯定する。両者を区分するものは、宗教的には智慧(の現れ)の有無なのだから。
開運商法が消費者問題である以上、そうしたものと健全な(=社会的に許容される)宗教との区分は、社会政策的にも要請されるものだ。私が開運商法の行政処分に関わった話は『理科の探検』2017年10月号に「開運・霊感商法と行政規制 社会的妥当性の観点から考える」として寄稿した。また、その際の問題意識をベースとして、ニセ科学問題に広げて行政政策の観点からもう少し深堀りした論考「ニセ科学問題の公共政策デザイン」を『消費者法ニュース』2019年4月号に寄稿した。後者は一見「開運・霊感」とは異質なモチーフだが、人間の合理性の限界という視点は間違いなく前者と地続きにある。
最後に。今回の情報は国民生活センターがイラスト入りワンペーパーで提供する「見守り情報(高齢者・障がい者・子どものトラブル防止)」の最新号だ。多くの人に意識して欲しい情報なので、メールマガジン登録などでフォローすることをお勧めしたい。