保険代理店のテレワークと出社義務

新型コロナウイルス蔓延による保険代理店もテレワーク勤務が拡大し、国内保険会社も非対面募集制限を緩和しつつある。

保険代理店のテレワークに当たっては、労務管理上も、保険業法上も検討事項も多いが、保険代理店が求められる「出社義務」について再度整理しておく。

1.保険業法・監督指針

保険業法上は、保険募集人に代理店への出社義務などは定められていない。

しかし、監督指針においては以下のような記載がある。

監督指針Ⅱ-4-2-1(3)保険募集人の採用・委託・登録・届出

において、

「保険代理店の委託にあたっては、保険募集に関する法令等や保険契約に関する知識、保険募集の業務遂行能力に加えて、本来の事業目的、事業内容等について、以下の点を確認し、審査しているか。」

が適正な保険募集管理体制の確立として求められるとして、

エ. 保険代理店において、保険募集に従事する役員又は使用人については、以下の要件を満たすことに留意する必要がある。
(ア)保険募集に従事する役員又は使用人とは、保険代理店から保険募集に関し、適切な教育・管理・指導を受けて保険募集を行う者であること。
(イ)使用人については、上記(ア)に加えて、保険代理店の事務所に勤務し、かつ、保険代理店の指揮監督・命令のもとで保険募集を行う者であること。

とされている。

この「保険代理店の事務所に勤務し」が保険代理店における募集人の出社義務の根拠規定である。

なお、この規定についての、金融庁のパブコメに対する回答で、

本規定の「保険代理店の事務所に勤務」については、必ずしも保険代理店の事務所に毎日出社することまでを求めているものではありませんが、いずれにせよ、保険代理店の使用人は、本規定に則り、使用人要件及び労働関係法規を遵守している者である必要があります。 

とある。

2.募集コンプライアンスガイド(損保協会)

さらに損保協会における募集コンプライアンスガイドでは、

代理店事務所(届出上の事務所所在地または従たる事務所(いわゆる契約取扱出先。以下同じ。))に勤務(毎日または一定日に定期的に出社)して業務を行っており、実態もそのとおり運営されていること

を募集人の要件として充足する必要があるとし、以下のように、厳格に出社を求めている。

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3.出社は義務なのか

前提として、監督指針、コンプライアンスガイドいずれも法的拘束力を有しないものではある(監督指針は実質的に法令であるが)。
また、これらとは別に保険会社から求められる条件も別途あると思われる。

もっとも、金融庁として求めるのは、「募集人が会社に常駐すること」ではなく、「保険代理店の指揮管理・命令に基づいて適切な募集活動」であり、「保険代理店の事務所に勤務し」というのは、事務所の存在がただの登録のための箱になることで、管理の行き届かない不適切な募集行為が行われることを危惧しているからである。「出社」は目的ではなく、管理のための一つの手段である。

とすれば、現在の新型コロナウイルス蔓延の状況も鑑みれば、形式的に、募集コンプライアンスガイドの規定を単純に毎日出社するという判断をするべきではない(募集コンプライアンスガイドも形式的に毎日出社を求めているものではない)。

金融庁コメントにおいて、「使用人要件及び労働関係法規を遵守している」ことが求められているが、当然、労基法上出社は義務ではない。

保険会社だけではなく、保険代理店もテレワーク等を積極的に活用し、指揮管理・命令ができているかの実質的な判断を個々で行うべきである。


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