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指先よ熱く推し曲を語れ

「スキな3曲を熱く語る」というハッシュタグがあるということで。ちょっと書いてみようかなと思いました。好きな曲いっぱいあるなあ。さてどれにしようかな。

ばらの花/くるり

2001年当時、私は大学4回生だった。はて、どんな最後の学生生活だったか。そうだ、就職がなかなか決まらず焦っていたのだった。漠然とした不安の中、大学に通ったりバイトに通うしかなかった。

冬の日曜日の午後、雪の降りそうな曇天だった記憶がある。バイトから帰ってきてFM802を点けると、あれは確かヒロT(ヒロ寺平)がDJの、TOPHITS100みたいな番組が放送されており、途中でくるりの新曲が流れ始めたと思う。ぼおっと半分くらい聴き流していたところに、サビのフレーズ・岸田さんとフルカワミキちゃんとのコーラス・さらに後半から終わりにかけてのメロディーの美しさに、「あれ?くるりってこんな曲だったか!?もっとアク強めなロックじゃなかった!?!?(「青い空」のイメージが強かった。多分PVのせい。)」と、目が覚めた。

さっきバイト先から帰ってきたばかりなのに、急いで上着を羽織り、もう一度電車に乗り、30分かけて梅田のマルビルのタワーレコードに向かい、発売されたばかりのシングルを手に取り、とんぼ返りで帰宅した。

美しいメロディと「安心な僕らは旅に出ようぜ、思いっきり泣いたり笑ったりしようぜ」のフレーズは、儚くて切なくてとても魅力的で、猛烈な中毒性があった。私は「感情豊かに元気に生きれば、まあなんとかなるよ」という適当で都合の良い解釈をし、毎日飽きもせず狂ったように聴き続けた。さらには携帯電話の着信メロディをハモリ部分も全て自作して自己満足した。それに、就職活動で持ち歩く鞄にさびのフレーズを書いた紙を折りたたみ、ポケットに常に入れておき、時々見返したりもしていた。

その後、大学卒業の1日前に就職先が決まった。仲間内で一番最後に決まったので、みんなものすごく大喜びしてくれた。難しい仕事なのできっとすぐに逃げ出すだろうと思っていたけれど、辛い時の通勤時にもたくさんこの曲を聴き、気づけば早20年、転職はすれど同じ業界でなんとか持ちこたえている。

そういえば社会人2年目の頃、常駐先でのシステム動作テストで、適当な文言を入力する際にもこのフレーズを使った。それがきっかけのひとつとなり仲良くなった先輩には、40歳を過ぎた今でもずっと気にかけてもらっている。そして、この曲の話題になるたびに「そういやさぁ、この歌詞を動作テストに入力してる子、いたよねぇ。大体普通は【テスト】っていれるのにねー?」と、ニヤニヤされてしまうのだった。

Dancing In A Circle / ELLEGARDEN

20代の終わり頃は、どっぷりELLEGARDENの楽曲にお世話になった。勿論いろんなアーティストの曲聴いていたけれど、彼らは音も英語の歌詞もとりあえず全部ひっくるめて、飛び抜けて格好良かった。爆音で聞くことで、普段のむしゃくしゃを晴らしていたのだと思う。あとサマソニやらセットストックでは、黄色い声援よりメンズ達の狂気の雄叫びがすごかった記憶がある。

ある時、職場の先輩や友達とスノーボードのイベントに行ったことがきっかけで、爆発的に同世代のスノーボーダー友達が増えた時期があった。大阪から長野県は白馬村のゲレンデに向かう道すがらの約7時間、BGMで「流しまくった」ELLEGARDENの曲は、どれも「エモく」、早くみんなと会ってスノーボードしたい(&酒飲みたい)、というわくわくをたっぷりと掻き立ててくれた。その中であまり有名ではないこの曲が好きなのは、その仲間たちとの記憶が妙にリンクするからである。

We've been dancing in a circle
We gathered around the candles of each one of us
Though we're gonna have to leave here sometime
I found myself wishing for just one more second
Let our souls guide us
Though graffiti we painted fade
This cave will still hold our friendships
Finish the last meal
No more looking back

仲間たちとは、サークル活動ほど堅苦しいものではなく、友達が友達を芋づる式で呼んだことで、多い時では約50人近い仲間が集まり、スキー場を縦横無尽に滑った。集まって輪になり(実際にスキー場の駐車場で、その人数で円陣を組んでいた 笑)、朝から夕方までどっぷりと部活に打ち込み、夜は酒を飲んで笑い転げた。やがて家族を持ったりそれぞれの事情でなかなか集まれなくなった今でも、時々仲間たちと連絡を取り合うし、近くにいる仲間とはたまに集まっている。もう会うきっかけがなくなってしまった仲間もいるけれど、箸が転んだだけで笑い死にそうになった記憶は確かに存在する。

だからこの曲を聴くと今でも、「みんな、げんきにしているかなぁ」としみじみ思う、私の中での珠玉の名曲である。あーあ、懐かしむなんて、私も歳をとったなぁ。

ショパン / 子守歌 Op.57 CT7 変ニ長調

私の推しピアニストは、マウリツィオ・ポリーニである。これはピアノ弾きを目指していた兄が、ピアノの練習の際にポリーニの演奏を自宅でたくさん流していたことが大きく影響していると思う。中でもポリーニの弾くショパンのエチュードが大好きだった。エチュードをCDから録音したカセットテープは聴きすぎて音程が狂い、終いに駄目になった。

幼い頃はポリーニに対し、ショパンやストラヴィンスキーのペトルーシュカみたいな「キレッキレ」のイメージが先行していた。けれども次第に、モーツァルトの弾き振りは「甘美で華やか」、ベートーヴェンの後期ピアノソナタは「冬の午後の微かな日差しみたいな哀愁」な雰囲気を感じたことで「超絶技巧でありながら時に華やかで柔らかい」というイメージに変わっていった。これらは歳を重ねた巨匠にしか出せない音、なのだろうなぁ。

以前丁度、東京に行くタイミングでポリーニが来日するということで、赤坂のサントリーホールのチケットを取った。私は2時間ほど耳と目を研ぎ澄まして演奏する姿を凝視する。ポリーニは演奏を終えると、ひょうひょうと歩きお辞儀する。少し丸みを帯びた背に年齢を感じた。鳴り止まないアンコールに、舞台袖からトコトコとやって来て、鍵盤の前に座る。そこで静かに響き始めたのがこの、ショパンの子守唄だった。

目を見開いているのに、「大きな窓の向こうからあったかい陽の光が部屋に差し込んでくる風景」がぶわっと広がった。窓の向こうは緑がたくさんあって、少し風も吹いているような。それに、水面に映っては揺れる、きらきらとした太陽の光も見える。美しい女性が、小さな子供の寝顔をみつめる様子も見える。ああそりゃそうだ、子守唄だもんなぁ。

私の目にはどんどん涙が溜まっていった。これが、80歳目前でも、ピアノを前に現役を貫いていらっしゃる、超ストイックな巨匠のみが為せる技なんだろう。

今までこの子守唄を聴いても「きれいな曲だなー」としか思っていなかったのだけれど、あの、サントリーホールで聴いた演奏は、今でも忘れられない。ものすごく頻繁に聴くわけではないけれど、時々聴くと、ものすごく心が落ち着き、また美しい風景が浮かぶようになった。

Appendix:思いが溢れたので、ついでに書いとく

ごめんなさい。思いがあふれすぎたので、絞り込み最終候補にギリまで残った3曲をついでに書いときます。

①Moanin' / Art Blakey and the Jazz Messengers
1998年ころに大阪に初めてスターバックスが出来た時に、多分よく流れており、ジャズの格好よさに気づいた1曲。当時はインターネットなどさほど普及していない時代だったので曲名などチャチャッと分かるはずもなく、社会人になってから副業のバイト先にて有線で流れたことがきっかけで、とにかく片っ端から有線のジャズチャンネルを調べてやっと行き着いた、思い出の曲。

②CMYK / James Blake
G.RINAさんがDOMMUNEでこの曲をかけていたのがきっかけで、ダブステップにどハマリした曲。重低音かっけぇぇとシビれていたが、お年玉で買ったWALKMAN(カセットのやつ)を、常に低音効果MAXにしていた中学時代からなんにも変わってないと気づいた瞬間だった。そして当然、Spotifyでは低音リストを作ったよね。いくつになっても、低音は、落ち着くわ~。

③Spindrift / Colin Stetson
コリン・ステットソンを知ったのは屋外フェスでした。日もとっぷりと暮れた夜。あちこちから音楽が聴こえるものの、歩き疲れた私は友達と自分のテントの前で灯りをともしてお酒を飲んでいました。そこにじわじわ、どんどんと大きく鳴り響き出した超絶技巧のサックス。どんどん話に集中できなくなり、やがて「なんか、すごい音が遠くから聞こえるな…」「気が狂いそうな音色ね…」などと話した記憶があります。夜の闇に響く超絶技巧のサックスの音はなかなかの恐怖です。それ以来、私はすっかりサックスの音色の虜になりました。この曲を演奏していたのではないですが、衝撃を受けた音色は割とこの曲の雰囲気に近くて、この曲を聴くと真っ暗闇の森の風景が目に浮かびます。気になるあなた、ぜひ聴いてみてほしい。

…以上、つぶやきもジャンルもとりとめがなくなりましたが、わたしの好きな曲の紹介はこれにて終了します。音楽の話はきっとエンドレス。まだまだ、好きな音楽もプレイリストも、増えていくだろうなあ。

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