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TALK31<町寿司>

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最近、町寿司によく一人で行ってます。
町寿司というのは、回転寿司でもなければ高級店でもない、その町に昔からある、ふつ~のお寿司屋さんのことです。
カウンターに小上がりのテーブル席が2卓くらい。
入れても最大で10~15人程度。
職人さんが何名かいる場合もあるけど、多くは家族経営で、親父さんが握ってるか、代が変わって息子が握ってるのを、となりで親父さんがじっと見ていたりする。
そんな小さな町寿司に、ひとりで入るのです。
そういう場合、大抵のお店は「あんた、なんでうちの店入ったの?」という「?」マークで出迎える訳です。
江戸のお寿司屋なのに
「へい、らっしゃーーい!!」
なんて、粋な出迎え方はしてくれません。
大抵の場合は
「え?ん~????」
とか迎える訳です、客を。
中には、目で
「だめ・・・あんちゃん・・・帰って・・・」
と訴えかけてくるお店すらあります。
こっちも、なんでこれからお寿司を食べようというお店で、こんなあしらいを受けないといけないんだ・・とは思うのですが、でも考えてみれば、もともと飲食店ってそんなことでいいんじゃないかと。
だって、人の家に上がるわけですからね。
人んちに入って食事をいただくわけですから、そりゃー最初は「あんただれ?」って扱いを受けていいんですよ。
まだお金だって払ってないんだし。
食べてお金払って帰るときにはね、お客さん扱いしてほしいですよ。
でも、暖簾をくぐった時はね、まだ知らない人ですよ。
お客なのか、集金に来た人なのか、間違って入った人か、何にも知らない外国人か、まったく分からないのです。
そりゃーお店の人からしたら「あんただれ?」ですよ。
なので、こちらもここで気を悪くなどせず
「いやいや怪しいものではございません、ただ少しのお酒とつまみなどをいただければ、ひとりで大人しくしていますので」
というのを、数秒の間に表情で表さないといけない。
ここが重要です。
間違っても、声を出して
「いやいや怪しいものではございません、ただ少しのお酒とつまみなどをいただければ、ひとりで大人しくしていますので」
なんて言ってはいけません。
それが一番怪しいですから。
寿司屋に
「怪しいものではありません」 
なんて言いながら入るのが一番怪しいですから。
うまく表情でもって、それを表すのです。
そうやってご主人に怪しまれずにお店に入ることができたら、やることの9割は終わったと思っていいでしょう。
あとは、カウンターに座って、好きにお寿司を頼むのみです。
それにしても、なんでこういうこじんまりした町寿司で食べるのが楽しいのか?
それこそひとりでカウンターで寿司を食べながら考えました。
そしたら、すぐに理由が分かりました。
ネタの新鮮さでも、寿司の握り方でも、シャリの酢加減でもなんでもありません。
僕がなぜか町寿司に惹かれてしまう、その魅力とは
「会話」
だったのです。

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