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ワタナベイビーによる楽曲解説『ゆで卵』
突然のダブル・カウントで狂騒の世界をぶち破る2曲目。とはいえ、曲が始まってみれば、待っていたのはまたしても狂乱の世界。ポップで平和であるはずなのに、ところどころに狂気が見え隠れする。楽曲がスタートする直前の小宮山雄飛のカウントの声だけでも、まるで隣室から聞こえる殺人者の叫びのような不穏さを感じ取る人もいるであろう。
その不穏な空気作りに一役買っているのが、当時のホフディランの常套手段であった『バリピッチ』というレコーディング・テクニックである。テープ・スピードをアップして再生する、という単純なトリックであるが、楽曲全体の音色がパッと明るくなる効果があり、ワタナベ 、小宮山ともに自宅でのデモテープ制作時代から、ほぼ全作品にバリピッチ処理を施すのが習慣となっていた。当然、楽器から声から、録音された音全てが甲高く聞こえる。多くのロック・ポップスのレコードで使用され続けてきた技術であったが、1996年の日本の音楽界ではほとんど使用されておらず、当時のメジャー・レコードとしては「常識外」だった。
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