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ワタナベイビーによる楽曲解説『MILK』

恋愛、兄弟愛、夫婦愛、人類愛など、世に様々な愛の歌が存在するが、この時ホフディランが歌ったのは『哺乳類愛』。全生命体までの責任は背負いきれないが、まずは哺乳類全体への共感を示すところにスタート地点を置いた。
我々哺乳類生物にとって、まず最初の絶対的な源泉とは『母』であり、これはつまり『母なるもの』全てに対してのラブ・ソングであると言える。

ワタナベイビーは九州地方のタクシーの後部座席で初めてこの曲の一部を耳にした記憶を持っている。確か熊本県のNHKスタジオを出て次の現場へ移動する際のことで、当時のホフディランがウクレレとミニ・キーボードをケースにも入れずに生身で持ち歩きながら全国を行脚していた記憶にも繋がってくる。
『スマイル』リリース直前の春もしくは初夏に小宮山雄飛は、のちの『MILK』となるメロディを掴み、探り演奏を試みていた。ワタナベは確かにそれを聴いた。しかし、タクシーの中でウクレレとキーボードを弾きまくる二人と、彼らを引率し叱咤する若い女性からなる3人組は、運転手側からは一体どんなふうに見えていたことであろうか。

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