化粧へ マジでお前のこと好き

親愛なる化粧へ

毎朝毎朝お世話になっております。あなたのことが大好きな大学生です。あなたのことが好きすぎてお手紙を書くことにしました。少し恥ずかしいけど、届いてくれていたら嬉しいです。

わたしは、自分の顔が大嫌いでした。同級生の男の子から毛穴とあだ名をつけられ罵られ、知らない上級生の男子学生からは顔が大きいと揶揄され、大学生になっても「顔が中途半端」と言われ、散々な様子でした。一番言われて覚えていますのは、「顔面凶器」の四字熟語。以前お付き合いしていた男性からは「顔がかわいいとかじゃなく、愛嬌がある中の下だね」などと評されました。アーメン。以上の経験から、わたしは自分の顔がこの世で一番醜いと思っており、他人様に迷惑さえかけていると思っておりました。

しかし、あなたに出会ってからわたしの人生は変わりました。

好きなアイドルの来日公演にあわせて、ダイエットをしてみよう。そう思ったのが大学3年生の春頃です。コンサートがある11月には15キロのダイエットに成功し、わたしは骨格レベルで別人になりました。段々と鏡を見るのが楽しくなり、服装に気を使うようになり、そして、最後に、お化粧に取り掛かりました。そう、あなたです。

300円ショップで売っているアイシャドウパレットを、1500円のパレットに変えたとき、息を呑みました。瞼に吸い付く触感が、なんとなめらかなことか。エロスさえ感じました。色付きリップクリームを卒業し、ダークオレンジの口紅を引いたとき、気絶するほど可愛くて、まるで自分の唇ではないように思いました。目の端のラインを伸ばしてアイラインを引くと、わたしの小豆のような瞳は形を変えました。

その顔のまま、わたしは髪を切りに行きました。美容室から出るとき、わたしは初めて、自分のことをかわいいと思えました。

他人からどんなになじられようと、わたしがわたしのことを世界一かわいいと思えていれば、それはもしかしてめちゃくちゃ幸せなのでは?と、神楽坂を下りながら初めて思いました。街中の鏡に映るわたしの顔が、かわいい。うそみたいでした。全て、化粧様、あなたのおかげなのです。

それからの毎日、めっちゃ楽しいです。インスタでアイドルのお化粧を研究し、美容系ユーチューバーを見漁り、学校帰りに化粧品売り場に立ち寄り、SNSを駆使して最新情報を得る!!毎日最高!!

しかし、一ヶ月ほど前に大事件が生じました。お化粧様、あなたは人を喜ばすことが得意だけれど、落とすことも大の得意みたいですね。

いや、わたしブルベ冬やったんかーい

お化粧を本格的に始めた去年の今頃から集めていたお化粧品、全部イエローベース向きのやつですよ。オレンジオレンジダークオレンジコーラルコーラルオレンジチーク。一体どうしたら???確かに紫とか青みがかったピンクが入ってた方が全然可愛いもん。顔が全然違う。今日久しぶりに黄土色のアイシャドウつけて出かけたけど鏡見た瞬間違和感でコスメ売り場に走ってワインピンクみたいなの塗ったもん。いやめっちゃ似合っちゃったよ。はあ、化粧。お前のことめちゃくちゃ好きだけど、良かったら生まれたときに化粧の神が現れて「うーん、君は…ブルベ冬!」みたいな制度にしてくれませんか。組分け帽子と同じようにさ、やって欲しい。頼むよ化粧…。好きだよ…。

土台が完璧な人は、自分の肌の色とか何にも気にせず、化粧もそこまで念入りにしなくていい。羨ましいなあと思う。思うけど、ドレッサーの引き出しを開けて並んだお化粧品はわたしの努力と執念の証だし、絶対的にわたしの味方だから、わたしはお化粧で可愛くなるわたしの顔が好き。化粧した自分の顔、マジで好き。かわいいから。だから化粧のこと大好き。

そういうとき、他人と比べるの、マージで意味がないと思う。あなたもかわいい、わたしもかわいい。そう思わなきゃこの世はクソ。「自分のことかわいいと思ってるだろうけど、お前より可愛い子いっぱいいるよ」と言われたとき、本当に悲しかった。見た目の良し悪しは比べるものじゃない。みんなかわいい。そんなこと言ったら全人間が束になってかかっても犬一匹の可愛さには勝てない。ね、化粧ちゃん!

話が逸れまくってるけど、化粧、お前にマジで毎日感謝してる。億劫になってあんまりしない日もあるけど、ごめんね。本当は毎日したいよ。わたしの武装だもん。化粧はいつでもわたしを強くしてくれる。一生好きだよ。

明日は紫のリップを塗っちゃおうかな。お化粧毎日楽しい。お化粧、お前のことほんまにすこすこのすこ。これからもわたしの味方でいてくれるように、スキンケア頑張ります。明日も宜しくお願いします。

ほ八ちゃんより

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