金の蜘蛛


はじめに

『金の蜘蛛』は、クトゥルフ神話TRPG用に作成したシナリオです。

時間:2時間程度 推奨人数:3人程度 KP難易度:★★★ PL難易度:★★

推奨技能:<目星>、<英語>、<こぶし>  戦闘:有

アメリカの一軒家を舞台にしたクローズドシナリオとなっています。NPCとコミュニケーションをとる、読み物を読むなどの情報収集に<英語>が必須となりますのでとるようにしてください。

トゥルーエンドでもアンハッピーな展開となっていますので、卓によっては注意をしてください。テストプレイでは「かわいそうだ」という感想のお声をたくさんいただいたみたいです。シナリオの背景については[解説]を参照してください。

シナリオの進行度によってPCや蜘蛛のDEXが変化するので気をつけてください。(戦闘に独自のシステムがあります)




導入

 長い一日を終えた探索者達は、いつものように眠りにつく。それはとても長く、深い眠りだった。

 朝が訪れ、目を覚ました探索者達は、見知らぬ部屋の床の上に横たわっていた。

 身体の節々が痛い。どうやら、高いところから叩きつけられたようだが、目立った傷などはない。(ダメージなし)





六角形の部屋

 正六角形の変わった形をした部屋。それぞれの壁には扉がついている。

 部屋の中央にはテーブル、絨毯、ソファーなどが置かれている。

 電気がついていて、室内はとても明るい。ここはリビングのようだ。

■絨毯

 絨毯をめくると、床の上に血の広がった跡が残っている。血はまだ赤味があって新しいことがわかる。探索者は恐怖を感じ、SAN値チェック(0 / 1D3)




玄関

 外へと繋がる扉と、二階へ続く階段がある。

<目星>:十字架と何かの像があることに気づく。

■扉

 開けることが出来ない。

■十字架

 さかさまになった十字架が壁にかけられている。(探索者が十字架を元の状態に戻すと、金の蜘蛛との戦闘が有利になる。詳しくは後述する"金の蜘蛛"を参照)

(エンディングへの分岐にもなりますのでKPはしっかりと覚えておくようにしてください)

■何かの像

 首のない不気味な像。身体は人間のかたちをしており、白い陶器のようなものでできている。それほど大きなものではない。

 【マリアのあたま】と【瞬間接着剤】があれば修復できる。(探索者がマリア像を修復することができれば金の蜘蛛との戦闘が有利になる。詳しくは後述する"金の蜘蛛"を参照)

(エンディングへの分岐にもなりますのでKPはしっかりと覚えておくようにしてください)




母の部屋

 部屋にはクローゼットとドレッサーがある。

■クローゼット

 重厚なカバーのかかったノートを発見する。

 ページをめくれば、日付と思しき数字の羅列が目に飛び込んでくる。どうやら母親の日記のようだ。<英語>で内容を読みとることが出来る。

 <英語>ロールに失敗し、日記の内容を読みとることができなかった場合、<幸運>成功で日記に挟まっていたしおりのようなものが床の上にひらひらと落ちる。

 何故か、探索者それぞれの母国語で書かれており、簡単に内容を読みとることができる。強いメッセージ性を感じる。


■ドレッサー

 ドレッサーの上に、【子どもの写真】が置いてある。その写真に写るブロンドの少年は、青い目を細めて笑っている。年齢は小学校低学年程度。写真の縁には『Bobby(ボビー)』と書かれている。

→すでに寝室にあるテディベアの名前の刺繍を見つけている場合には、ここで強制的に<知識>ロール。成功で『ボビー』という呼び名は『ロバートの』短縮形であることに気が付く。



父の書斎

 電気は消されており、暗い。部屋の中央あたりで、何かがぼんやりと光っている以外はなにも見えない。

 手元のスイッチで部屋の明かりは点く。本棚が壁に沿って並べてあり、本がびっしりとしきつめられている。作業机の上に工具箱が無造作に置いてある。部屋の中央には青いライトに照らされた水槽がある。

■本棚

 本棚にはたくさんのキリスト教関連の【書物】が並ぶ中、一際目立つ本を発見する。表紙には蜘蛛のイラストが描かれている。<英語>で読むことができる。


■工具箱

 工具箱の中には【瞬間接着剤】と【ハンドガンの弾】が入っている。(その他、PLからの希望があれば武器になるようなものを置いても良い。ただし、工具箱に入っていても不自然でないものに限る。)

※ハンドガンの弾はこの家の中に拳銃が存在する(エドワードが所持している)という伏線で置いてあるものです。エンディングを迎えるまではPLに拳銃を発見、使用はさせないでください。

■水槽

 水槽の中には小さな熱帯魚たちが泳いでいる。あまり元気はない。

 探索者達が水槽に近付けば、近くに魚用のエサが置いてあることに気づくだろう。魚にエサを与えれば、元気よく泳ぐ魚たちの姿を見ることが出来る。癒された探索者はSAN値回復(1D3)



台所

 台所には冷蔵庫、シンク、コンロ(IH)、食器棚などがある。

■冷蔵庫

 あまり食料は貯蔵されていない。

■食器棚

【お皿】や【フライパン】、【包丁】が収納されている。武器として使用することができる。




洗面所

 清潔な室内。浴槽、洗面台、トイレ、洗濯機、小窓がある。

■浴槽

 浴槽の水はうっすらと赤みがある。浴槽には【斧】が沈んでいるのがわかる。

強制<アイデア>:成功で、水槽の水は、血が薄まったものであることに気がつく。SAN値チェック(0 / 1D3)

■洗面台

 洗面内には緑色の液体の入った瓶が置かれている。

<聞き耳>:【香水】からミントの香りを感じる。

【香水】を所持、または使用すれば金の蜘蛛と戦闘になった際、探索者のDEXの値に関係なく最後に攻撃を受けるようになるが、探索者全員に振りかけてしまうと効果は発揮されない。<投擲>で投げることも可能。ダメージは 1D3。さらに、<幸運>成功で瓶が割れた場合、香水と瓶の破片を浴びた金の蜘蛛には -3 のダメージが通るが、その後は探索者とNPCが動くたびに<幸運>で瓶の破片を踏んでしまうかどうかを判定する。破片を踏んだしまった場合、-1 のダメージ。

■小窓

 手を出すのがやっとというほど小さな換気用の窓。外を覗くと、暗い空にたくさんの星たちがまたたいている。

 ここから脱出することは不可能である。

■洗濯機

 洗濯機の横には洗濯用の【液体洗剤】が置かれている。洗濯機の中には、びしょ濡れの衣類が放置されている。衣服には血の跡がうっすらと残っている。

<アイデア> or <目星>:服のサイズは大人用にしてはすこし小さいように見える。

→寝室のクローゼットにあったロバートの衣服を発見している場合には、ロバートの服よりも大きいことがわかる。

【液体洗剤】は戦闘時に使用でき、床に撒くことができるが、DEXにマイナスの補正がかかる。探索者は(-1D2)、金の蜘蛛は(-1D4)




寝室

 二人用のベッド、クローゼットがある。

■クローゼット

 クローゼットの中には、男性用の衣服、子ども服が収納されている。(これはロバートの衣服)あまり立派ではない家庭祭壇がある。写真が飾られており、ブロンドに青い目をした少年が愛らしい笑顔で写っている(フィルムではなく、デジタルで撮影されたもの)。その横には手のひらサイズのテディベアが置かれており、胸元に『Robert(ロバート)』と刺繍がしてある。

→すでに母の部屋の写真に書かれている名前を見つけている場合には、ここで強制的に<知識>。成功で『ボビー』という呼び名は『ロバート』の短縮形であることに気づく。




子ども部屋

 部屋にはベッド、クローゼット、大人が這いつくばっても通り抜けるのが厳しそうな小さな扉がある。木馬などのおもちゃが散乱している。(幼い子どもを対象としたおもちゃ。まず10歳のエドワードが使わないようなもの。このおもちゃの持ち主はロバートである。)

※探索者が自力でエドワードを探し出せなかった場合、子ども部屋を出ようとした瞬間、探索する音を不審に思い、エドワードがかならず姿を現す。

■クローゼット

 クローゼットの中には、子ども用の服の間から少年が顔を出した。探索者の動く音に驚き、隠れていたらしい。

■少年(エドワード)

 白人系の少年。髪と目の色はダークなブラウン。年齢は10歳前後。

 名前を訊くと「エドワード」とだけ答えるがこれ以上の意思疎通を<英語>以外ではかることはできない。表情もとぼしく読みとることは難しい。<心理学>では「とても不安定な状態」と出る。

 エドワードは従順な男の子。探索者の言うことも、きっと聞いてくれるだろう。とても繊細である。施設に預けられていたことや、現在の家庭環境のこともあり、子どもながらに、大人に頼ったり、甘えることには遠慮をしている。

 10歳の子どもが答えられそうな簡単な質問以外には答えなくてよい。「あなたは養子なの?」「ロバートはどうして死んじゃったの?」等。

 探索者は子どもにもわかりやすいやさしい言葉で語りかけてあげること。

 ロバートの死について、エドワードは詳しいことは知らない。夫妻の間にはロバートという男の子がいて、亡くなってしまったということしか理解していない。生前のロバートについても、知っていることは何もないので答えることができない。「(血は繋がっていないが家族の中の序列として)お兄ちゃん」という認識はある。

 エドワードが死亡してしまった場合、金の蜘蛛緒が怒り狂い、蜘蛛の部屋の壁を突き破って、エドワードを殺した探索者を追う。強制的に戦闘が開始される。

エドワードに<目星>:APPが18、SIZが9。左手に何かを握っている→陶器のかけら

■陶器のかけら

 目を閉じ、やわらかな微笑みを浮かべる女性の首がかたどられている。

<知識>:聖母マリアのあたまだということがわかる→【マリアのあたま】

■小さな扉

 大人が這いつくばっても通り抜けるのが厳しそうな大きさ。エドワードくらいの身体の大きさであれば通り抜けられそうだ。扉の周りの壁は脆く、道具を使うことで突破できるかもしれない。(探索者のSIZが9以下なら扉をくぐることができる。扉の向こうの様子は、暗いためによく見えない)

【斧】で(その他の【包丁】などの武器で壊す場合は<DEX×1D6>でロール)壁を壊すことはできるが、金の蜘蛛に遭遇する。→蜘蛛の部屋




蜘蛛の部屋

 壁が血に汚れた部屋。床はおもちゃなどがたくさん散乱している。

<アイデア> or <目星>:壁に付着した血はまだ新しい。まだそう時間もたたないうちに、この部屋でむごたらしい惨劇が行われていたことを物語っている。SAN値チェック(1 / 1D4)

 部屋の中央には大きな蜘蛛がいる。→金の蜘蛛

■金の蜘蛛

 部屋いっぱいにふくれあがった大きな蜘蛛。皮膚は光の反射で時折黄金に光っているようにも見える。目撃した探索者はSAN値チェック(1 / 1D6)

 玄関にあった十字架を正しい方向に直しておくと蜘蛛のDEXが -3、マリア像を修復しておけば蜘蛛の耐久力が -3 の状態でスタートできるが、蜘蛛が出現した時点でエドワードが興奮状態のために蜘蛛のDEXは +3、耐久力に +3とする。

(描写例): 探索者の背中をやわらかい光が静かに照らす。その光の伸びる先に、かすかな影が映る。それは女性、または十字架、もしくはその両方のシルエット。自分たちを見守ってくれているかのように感じる。

 蜘蛛はDEXの低い探索者を優先的に襲う。探索者が逃げ出すと、金の蜘蛛はどこまでも追いかけてくる。

 蜘蛛が<組みつき>に成功すると、捕まった探索者は糸でぐるぐる巻きにされてしまう。捕獲されていない他の探索者は【包丁】や【斧】などで糸を切り裂き、組みつきを解除することができるが、1ターンを消費するものとする。また、1ラウンドにつき5ダメージ以上与えることができれば組みつきの状態を解除できる。蜘蛛は組みつき中でも次のターンは攻撃をすることができるが、二人以上同時に組みつくことはできない。

 金の蜘蛛の耐久力が0になると、戦闘は終了。肥大した身体は萎みはじめ、皮膚は破れ、蜘蛛の足は骨を失い、溶けだした。蜘蛛のからだの中からは、噛み砕かれてボロボロになった血肉があふれだす。(ここで強制<アイデア>ののち、SAN値チェック。<アイデア>失敗で(1 / 1D6)のSAN減少。<アイデア>成功で、血肉の中に長い金色の髪の毛を発見する。この血肉は人間のものであることに気がつく。(1 / 2D6)のSAN減少)

 なお、金の蜘蛛は飼い主であるエドワードを襲うことはない。武器を持たせておけば、エドワードも戦闘に参加できるが、攻撃が命中するごとにエドワードのSAN値が -1 となる。エドワードに対して<英語>に一度でも成功し、意思疎通がはかれていた場合、その探索者に攻撃が入って耐久値が0となってしまう場合、エドワードが身代わりとなって探索者の前に飛び出す。ここでエドワードの耐久値が0となると、エドワードは瀕死の状態になる。

蜘蛛を撃退したらエンディングへ




エンディング

①:マリアと十字架の両方を修復済み、エドワードが生存している。

 破裂した蜘蛛を目の前に、エドワードは泣きじゃくる。

 養子としてこの家に連れてこられたエドワードは、金の蜘蛛だけがほんとうの家族だった。

 蜘蛛を失ってしまった苦しみが、エドワードの小さな体を襲う。

 その泣き声が、だんだんと遠くなってくる。

 視界は白く霞んでいき、やがて探索者全員の意識がなくなった。

 目を覚ますと、探索者は見慣れた部屋で横になっていた。

 部屋のカーテンの隙間から降り注ぐ光が、いつもの朝の訪れを告げている。

《  E  N  D  》


②:マリアか十字架のどちらかを修復済み、エドワードが生存している

 養子としてこの家に連れてこられたエドワードは、金の蜘蛛だけがほんとうの家族だった。

 エドワードは静かに自分の上着のポケットから、ハンドガンを取り出した。

 銃を口にくわえた彼の眼には、もう何も映っていない。

(探索者は<言いくるめ> or <説得>でエドワードの自殺をとめることができる)

 エドワードはあなたをしっかりと見て、黙って銃を下ろした。

 あなたの言葉を理解したようだ。

 やがて探索者全員の視界は白く霞んでいく。

 だんだんと薄れゆく意識の中で、エドワードの青白い頬に涙が一筋尾を引いて流れるのを見た。

 目を覚ますと、探索者は見慣れた部屋で横になっていた。

 部屋のカーテンの隙間から降り注ぐ光が、いつもの朝の訪れを告げている。

《  E  N  D  》

(またはDEXの値が一番高い探索者一人だけが、エドワードを助けることができる)

 あなたはエドワードの小さな手から、強引に拳銃を奪い取った。

 あなたの死んでほしくない、という思いはエドワードにも伝わった様子だが。

 唇をかみしめ、絶望したように目を宙にさまよわせている。

 やがて探索者の視界は白く霞んでいく。

 だんだんと薄れゆく意識の中で、エドワードの白い頬に涙が一筋尾を引いて流れるのを見た。

 目を覚ますと、探索者は見慣れた部屋で横になっていた。

 部屋のカーテンの隙間から降り注ぐ光が、いつもの朝の訪れを告げている。

《  E  N  D  》

(それでもエドワードに助かる見込みがない場合、エドワードが<幸運>、成功で生還、失敗で自殺実行)

《ロール成功》:エドワードは小さな手を震わせ、とうとう引き金を引いた。ところが、引き金の感触は手ごたえがなかった。銃には弾が入ってない。

 だんだんと薄れゆく意識の中で、エドワードの青白い頬に涙が一筋尾を引いて流れるのを見た。

 目を覚ますと、探索者は見慣れた部屋で横になっていた。

 部屋のカーテンの隙間から降り注ぐ光が、いつもの朝の訪れを告げている。

《  E  N  D  》

《ロール失敗》:視界はだんだんと白く霞んでいき、やがて何も見えなくなった。

 薄れゆく意識の中で、皆はたしかに、一発の銃声を聞いた。

 目を覚ますと、探索者は見慣れた部屋で横になっていた。

 部屋のカーテンの隙間から降り注ぐ光が、いつもの朝の訪れを告げている。

《  E  N  D  》


③:マリアと十字架を未修復、エドワードが生存している

 養子としてこの家に連れてこられたエドワードは、金の蜘蛛だけがほんとうの家族だった。

 エドワードは静かに自分の上着のポケットから、ハンドガンを取り出した。

 銃を口に咥えた彼の眼には、もう何も映っていない。

 探索者の視界はだんだんと白く霞んでいき。、やがて何も見えなくなった。

 薄れゆく意識の中で、皆はたしかに一発の銃声を聞いた。

 目を覚ますと、探索者は見慣れた部屋で横になっていた。

 部屋のカーテンの隙間から降り注ぐ光が、いつもの朝の訪れを告げている。

《  E  N  D  》


④:エドワードが瀕死・死亡状態

 力を失い、床の上にぐったりと横たわるエドワード。

 探索者全員は、ガチャリと玄関の鍵が開く音を耳にする。

(探索者が扉から脱出した場合、<幸運>で自分の元いた世界へ生還できるかを決定する)

《ロール成功》:アメリカの見知らぬ土地へ飛び出していったあなたは、なんとか元いた街に帰りつき、元通りの世界を送った。

《  E  N  D  》

《ロール失敗》:アメリカの見知らぬ土地へ飛び出していったあなたは、残念ながら元いた阿地へ帰ることはできず、見知らぬ地でそのまま息を引き取った。

《  E  N  D  》




解説

 レイモンドとイヴ夫妻は、数年前に愛するひとり息子、ロバートを亡くしていた。

 まだロバートのことと、子どもをそ当てる喜びが忘れられない夫妻は、蜘蛛が大好きな少年エドワードを養子として迎え入れることにした。

 十数ヶ月間、レイモンドとイブは養子絵あるエドワードのことをほんとうの息子のように思いやってくれたが、ロバートへの愛情も未だに消えることもなく、それが夫妻を苦しめていた。エドワードは、無邪気で従順な自分の存在が、夫妻の中に会ったロバートの面影と重なって、つらい思いをさせてしまっていることをよく理解していた。自分こそ、新しい両親からの愛情を欲してはいたが、エドワードはやがて心を閉ざしてしまった。そしてとうとう、施設にいたころから一緒だった蜘蛛にしか興味を示さなくなってしまった。夫妻の方も、毒雲の飼育に没頭するエドワードを不気味だと思うようになり、幸せを取りもどすために集まった家族が、このままではまたバラバラになってしまう危機が迫っているのを感じていた。それもすべてはあの蜘蛛のせい。あの蜘蛛さえいなければ、またエドワードは甘えてくれる、ロバートがいた日々にあふれていたはずの幸福感がまた戻って来ると夫妻は信じた。特に母親のイヴは、もともと虫嫌いであったために、蜘蛛のことになると厳しくエドワードを叱りつけるようになっていた。そしてそれが自分の存在を否定されているかのようで、エドワードの心にさらに闇を落としていくこととなった。

 そして、事件は起こる。イヴに迷惑をかけないよう、子ども部屋の小さな扉の向こうで、ひっそりと蜘蛛を飼う生活。それでも蜘蛛は、エドワードの目を離したすきにリビングへと侵入した。そして蜘蛛を嫌う夫妻に噛みついた。まもなく夫妻の身体には、すぐに毒がまわりはじめ、身体を動かすことができなくなった。それでも夫妻に「エドワードの蜘蛛の管理が甘いせいだ」と責め立てられ、その態度に失望してしまったこと、取り返しのつかないことになってしまったと感じたエドワードはパニックに陥った。そして夫妻の寝室に収納してあった斧を持ち出すと、夫妻の息の根を止めてしまった。夫妻の遺体はバラバラにして子ども部屋の奥の小さな扉の向こうに、蜘蛛と一緒に押し込んで隠した。汚れた斧やシャツは湯船で洗い、証拠の隠滅をはかった。

 エドワードの心の闇に吸い寄せられた《ハスター》は、蜘蛛に票石、やがて金の蜘蛛となった。ハスターは蜘蛛の肉体だけにとどまらず、夫妻の遺体までもを食べ、取りこんでしまった。そして、エドワードの強力な負の心はハスターのみならず、まったく無関係の探索者たちまでもを呼び寄せてしまった。




武器について

あくまで参考までに。



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