肩甲骨の上方傾斜と棘上筋

機能解剖学書に安静位の肩甲骨は前額面で上方に5度傾斜しており、この傾斜があることにより棘上筋の張力と関節窩との関係から、上腕骨骨頭が下方移動せずに安定することが出来るとの記載がありました。

この上方傾斜があると、安静時は肩甲骨の関節窩の下方が上腕骨頭と接しており、上方はスペースがある状態です。この状態から肩関節を動かす場合、棘上筋は最初は上腕骨頭の上部を肩甲骨に引き寄せ、関節面同士の接着面を増やします。これにより関節の安定性が高まることが予想されます。さらに、この動きの際に上腕骨頭は最初から関節窩と接地している下部を支点とするので、棘上筋は上腕骨頭を外転させる回旋力も与えます。これにより肩関節の安静位からのスムーズな動きが達成されます。

もしこの安静位の上方傾斜が制限されている場合、肩甲骨は下方回旋位となります。この場合、上腕骨頭は関節窩と上部・下部共に接地していますが、関節窩の形状により重力によって下方に上腕は継続的に引っ張られます。棘上筋はこれに対して常に骨頭を引き上げていなければいけません。この状態からの肩関節の動きを行うと最初の支点が作れず、関節が不安定となります。さらに、肩甲骨の下方回旋位により第2肩関節は狭まっている可能性が高く、肩峰下インピンジメントを発生する確率も上がることが予想されます。

よって安静位で肩甲骨の下方回旋もしくは上方傾斜の消失が見られたらそこはアプローチの対象となり得るかもしれません。

Calant Sports Rehab & Performance
代表:爪川 慶彦
www.calant.org


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