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ワクチンを打たないという選択もある

いくらなんでも寒すぎる。こんばんは〜、火曜日のnote更新だよ。

昼間の東京は案外寒くなかったので、”最強寒波?私が最強だが…”ぐらいの顔をしていたが、子どもを園に迎えにいくために午後6時ごろに外に出たら寒すぎて死にそうになった。ほんの30分外に出ただけなのに腰痛が悪化した。雪が降るみたいな話もあるし、明日の出勤はどうなることやら…まあ、外来予約が既にめちゃくちゃ入っているので這ってでも職場に行く以外の選択肢がないんですが…。

今日は短め。質問に答えます。

こんばんは。母が反ワクチンおよび医療を称する詐欺の思想に取り込まれ始めて、参っています。 初めの頃はワクチン接種に積極的でしたが、2回目の接種の後、腕が上がりづらくなったことから接種を嫌がるようになりました。
今ではTwitterから信憑性不明の情報: 医師がワクチンを薬害という言葉で非難している、月に2000万荒稼ぎするワクチン医師がいる、認知症予防にはきれいな水を飲まなけれならない(から指定リンクの浄水器を買ってくれ)など、家族ラインでシェアし始めました。
来月には頭に実家に帰って、とりあえずTwitterはやめさせようと思いますが、何か他に手立てはあるでしょうか。 母は本を読むのは苦ではない方なので、本など読ませて認識の間違いを正させようと思うのですが、推薦図書などありましたら、ご教示いただけないでしょうか。 長々と申し訳ありません。よろしくお願い申し上げます。

職業柄、ワクチン接種に対して拒否的な方とも接する機会が多いだろうと見込んで質問を送ってきてくださったのかな。

ここから先の回答は、あくまで部外者の意見として捉えてくださると幸いです。私は親も兄弟も同居している夫もワクチン接種に全員積極的なので、正直、身内がワクチンを拒否した時の切迫感についてはきちんと理解できていないと思う。あくまで部外者の医療従事者として回答をします。

私が担当する患者さんの中にも、ワクチンを1回も打っていない人がたくさんいます。お母様は1回は打っているんですよね?国民の8割以上が1回目接種を終えていることを考えると、日常生活で未接種の方に会う確率はそれなりに低いものと思われますが、それでも私の外来には未接種の方がたくさんいらっしゃいます。

主にインターネットの影響で、未接種の方達は全員、強い意思を持ってワクチンを打っていらっしゃらないのだろうとかつての私は思っていたのですが、実臨床でお会いすると、実は全くそんなことはありません。もちろん強い意志を私の前ではアピールしないようにしている可能性はありますが、皆さんお話を伺っていると様々な事情をお持ちです。

持病があって副反応が怖い。
自分の周囲でワクチンを打った後に具合が悪くなった人がいて、それを見たら怖くなってしまって打っていない。
シングルマザーとして子どもを育てながら働いており、接種の翌日に熱が出て休むことができないから打っていない。

こうして見る限り、どれも了解可能な事情です。もちろん、新型コロナウイルスに感染して後遺症が残る方が怖いだろとか、感染して休むことになったら職場にもっと迷惑がかかるじゃないかとか、正論はいくらでも浮かぶんですが、個人が抱く未接種にしたい理由として理解はできる。

国民の8割以上がワクチンを1回以上接種済みと書きましたが、これには(私の記憶が確かであれば)幼児や乳児も含まれていたはずです。つまり、成人のワクチン接種率はさらに高いわけで、こういった状況下で打たないと選択するのは相当な覚悟が必要です。

上に書いたように正当な理由があっても、白い目で見られる可能性はある。ワクチンを打たないと決めた方の疎外感は相当なものでしょう。実際どなたも、こちらが特に責めるつもりはないのに申し訳なさそうに診察室で理由を話されます。

そういう疎外感や孤独につけ込むのが、いわゆる反ワクチン関連の詐欺です。ワクチンを打たないのは私に言わせれば別に良いんです(他の医療従事者には批判されるかもしれませんが、私個人としては未接種の方を批判するつもりはありません)。

しかし、不当に高価な浄水器などを買おうとし始めるなら話は別です。そのお金、もっとマシなことに使ってほしい。温泉や美味いメシ、いくらでも楽しい使い道があるはずです。

私が思うに、ワクチンを打たないと決めることと、反ワクチン関連の詐欺に騙されることの間にはかなりの距離があります。お母様がワクチンを打たないと決めたきっかけは1回目の接種の後に腕が上がらなくなったからでしたね。ここまでは誰にとっても了解可能ですが、詐欺師に絆されてお高い浄水器を勧め始めると、もしかすると周囲の人間関係も破壊してしまうかもしれない。

なので、質問をくださった方が”一刻も早く何とかしなければ!”と思うのは当然です。ただ、もしかすると、正しさを根拠にした説得ではお母様の心は動かないかもしれない。お母様は、疎外感と孤独を感じているがゆえに詐欺師の甘言に心を動かされたのかもしれず、もしそうだとすると、ワクチンを打ちたくないというその気持ちだけは、家族であるあなたが肯定して差し上げたほうが良いのかも、と思います。

ワクチンを打たないという決断自体は別にそう珍しいことでもないんです。特に、副反応が強く出たケースではそう思ってしまうのは仕方がない。自分の思想を補強するために詐欺師の手口に乗ってしまうのがまずいんです。打たないという選択肢を尊重した上で、何とか詐欺師と手を切る方向に持っていくのが良いのではないかと、あくまで部外者で医療従事者の私は思います。

ここに書いた全てが杞憂で、お母様が素直にあなたのアドバイスを受け入れてくれるのが一番良いと思う。部外者ゆえに失礼なことも色々書いたかもしれない。ご容赦下さい。

今日の回答はここまで!!外が異常に寒いから、みんなあったかくして寝てね!約束だよ!


Big Love…