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ざくろの事

 かなり遅い挨拶ですが、明けましておめでとうございます。早いものでもう1月が終わろうとしている今日、今年初の記事更新です。
 今月は年末に宣言しました通り、同人サークル【サキュレント】のざくろの事を正月にプレイしました。

 このサークルは【芙蓉の浄土に安き給う】で知り、去年ふようどを含めドブ川、慰愛の詩の三作品をプレイしました。別の記事でも書きましたが、慰愛の詩がとても好きです。この作品で一生ついていこ!という気持ちになり、今回も購入しました。
 ヒロインのざくろとざくろを描くことに没頭する兄・阿児弥の物語。

 以下ネタバレを含みます。





 兄妹二人で暮らす家、誰にも侵されない聖域。その中で日々行われる阿児弥の女神を描く行為とそれを見るためにすべてを支える彼のモチーフである女神のざくろ。
 それを可能としているのは家の裕福さ、学生という自由時間、どこまでも本気では向き合っていない父親。そういった空気感がヒシヒシを作中から伝わってきてとてもよかった。
 絵描きである阿児弥の繊細さ、他人をえがくことの傲慢さや罪は誰しもあると思いながら読み進めていました。
 自分の女神をあるがままその美しさ表現しようとざくろの底に落ちていくように描いている阿児弥は、その実ざくろの事を何も知らずどこまでも自分自身に中に落ちていく行為であること。それをざくろは望んでおり、本当の自分など見てほしくはないと阿児弥の女神を壊さないように本当の自分というものを知られないように献身的に純真無垢に支えていたのが繰り返し伝わる作品でした。
 穢れも知らず女ではあらず、美しい女神。阿児弥が描くざくろがざくろにとっての本物でそうであるために自分など必要にないざくろには誰にも知られてはいけない秘密があって……。
 それを知られないため、悟られないため阿児弥を見守り胸に抱き支えるざくろの独白が進めば進むほどに″女″でとても好き。

 知らてはいけなかったこと、ざくろが身体的にも精神的にもすでに女に成っていること。狂った母と共に父に捨てられ世間も何も知らず育ったざくろは、ある日手を差し伸べてきた男に女を教えられてしまっていたのです。純潔を散らし、淫らにおねだりをしていた。それがどういう事なのかも知らずに教えられるまま享受していたことでした。純潔を散らしと書いていますが、実際には貫通までは至っていないので処女ではあるんですけど、すでに悦びを知り自らがソレを求めていたので女に成っているんですね。

 隠し続けていた事実も、外部からの情報によりついぞ明るみになってしまい物語はクライマックスに向かいます。
 自分が描いたざくろは、ざくろを知りどこまでも自分が女神に降りていく深く深く潜っていく行為であり、本当の美しさを描いていると信じてやまずにいた阿児弥にとって隠されていた事実は衝撃でした。
 結局のところ何にも見えちゃいなかった、どこまでも自分自身に潜り込む行為で女神への理解やあるがままの美しさを描けていたわけではなかったのです。そこで初めて自分が見たいものだけを与えられ、それ以外は排除されていたことに気づきます。自分が描いていたものは偽物だった?とすべてが揺らいでしまいます。

 知られてしまった、気づかれてしまったざくろが悲しみと同時に持ったものは破滅。股からこぼれる血の匂いを部屋中に充満させながら、兄をそこへ迎え入れ知らしめるのです。

 サキュレントの作品で良い!となる一つが破滅や終わり、暗いものが見えるときに行為描写が入り、存分に女をえがいてくれるところがあるので今回のこのシーンも大変良かったです。

 何もかも終わり、頭も冷え切ってこようかという時、大地震が起こります。その影響で火災が発生し、彼らの聖域も炎に包まれていきます。
 その中で阿児弥の描きかけの最高傑作がいま燃えようとしているのを目にして、炎に向かって走り出すざくろ。兄の描くざくろだけが本物で、それが見られれば此処にいる自分は満足だった。阿児弥の描く理想だけをこの世に残してほしいと絵を阿児弥に渡して、炎に身を任せようとします。
 それを引き留めながら一瞬、これがざくろが望んでいることか?など考える阿児弥。しかし、最終的にはざくろの手を掴み心を新たにまたざくろを描く、それしか自分にはないと宣言します。
 ここにきても二人の心は重なりあってはいません、それがいい。それでも通じ合うことはできるという結末、良かったですね。
 女も狡猾さ、男の繊細さ大好き。
 今回の作品もそれを楽しむことができ、次回作もたのしみです。


 クリアしたのはこれくらいで、今もスローペースながらスロウ・ダメージをプレイ中です。二人攻略終えたところなので、残り半分といったところです。こっちも楽しい。クリアしたら感想を投げたいので来月中には終わるといいな。

 それでは今回はこのへんで。また次回!

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