特別編:ライバルマシンガレージ③
こんにちは、低男産業です。
前回に続き低男産業note特別編という事で、4名の有名レーサーの作品や戦績についてご紹介させていただきます。今回ご紹介させていただく皆さんも、これまでと同じように素晴らしいレーサーの方が揃っています。4者4様の作品は、どれも様々な競技会にて一線で戦ってきたマシンばかりです。
それでは、4名のトップレーサーの戦績と作品についてご紹介していきます。オープンクラス(2010年以降)とチャンピオンズでの入賞以上の成績についてまとめました。
1.えいと選手
まずはKRT@D所属のえいと選手のご紹介です。ミニ四駆歴20年以上のベテラン選手で、2014年から公認競技会やフラットレース等に参戦しています。ニューイヤーGP2015 東京大会にて優勝し、チャンピオンズ認定されました。
更にえいと選手はCSKやOSKなど、いわゆるフラットレースにも参加されており素晴らしい成績を収めています。フラットレースにも立体LCがある競技会(セミフラット)や、バーニングLCが使われる競技会(フルフラット)、更にアルカリ電池支給の競技会など、様々な形式で行われていますがえいと選手はそのいずれの形式でも好成績を収めています。公認競技会とフラットレースは競技形式が異なるため、求められる作品やセッティング力等も当然異なりますが、どちらもトップクラスと言える実力をお持ちです。
そのえいと選手の実力の根源となるのは、やはり圧倒的な加工力の高さであると言えるでしょう。詳しくはそれぞれの作品の所で紹介させていただきますが、どの作品にも妥協の無い加工が細部に至るまで施されており、加工されていないパーツは無いのではないかと思うぐらいです。
こちらがえいと選手の公認競技会用のサンダーショットMkⅡ.です。中空プロペラシャフトをマスダンパーの軸にし、更にねじ切りが施されています。ローラーの肉抜きはもちろん、カーボンステーにも出来る限りの穴あけ加工やポケット加工が施されており、徹底的な軽量化への意識が感じられます。セッティングにおいても、フロントタイヤを逆履きにする事によりスライド時のローラーとタイヤの干渉を防いでいます。
更に各パーツの色の統一感も素晴らしく、まさに強さと美しさを兼ね備えた作品です。黒とピンクのロックナットがそれぞれ上手く使い分けられていますね。ボディのカットラインも低男ステーに合わせてぴったりフィットするように切り抜かれており、カラーリングも見事です。
こちらはChampionShip Kanto 第9回大会 優勝の作品です。セミフラットと呼ばれる競技会では公認競技会と異なりスロープなどのセクションは使われておらず、当日支給のチューン系モーターで競技が行われます。つまり非常にハイスピードかつハイレベルなレースが行われるわけですが、この作品はその競技会における当時の完成形といえるのではないかと思います。
まず注目の点はその重量です。ミニ四駆公認競技会には最低重量90gというレギュレーションがありますが、この作品は92.31gという事でほとんど限界に近い軽さに仕上がっています。全てのローラー軸に中空プロペラシャフトが使われており、また車軸もホイール幅に合わせてカットされ、先ほどの公認競技会用の作品よりも一層軽量化への余念がありません。
極めつけはこちらのChampionShip Kanto 第8回大会・第10回大会 準優勝の作品です。この競技会はバーニングLCを用いて行われた、いわゆるフルフラットという形式でした。コースアウトの危険性が少ない為、スタビや2段アルミローラーなどのLC対策を廃した究極のスピード仕様となっています。
もはやこの作品は90gを切っており、このままでは軽すぎてレギュレーション違反となってしまいます。まさか最低重量90gを切る作品がこの世に現れるとは思ってもみませんでした。実際の競技会時にはフロントにウェイトを追加することにより、90gになるように調整されています。
先ほどの作品と同じように、極限とも言える軽量化が施されています。特にダミータイヤは向こう側が透けて見えそうなほど薄く削られ、メインタイヤも公認競技会では考えられないほど細くなっています。総じて工芸品と言っていいレベルの作品だと思います。
低男産業も第10回大会の様子を会場で観戦させていただいたのですが、走行音からして静かで抵抗を感じない素晴らしい走りでした。この作品が準優勝という事はつまり更に上をいく作品があるという事であり、フラットレースの奥深さと難しさの片鱗を感じました。
戦績(公認競技会)
ニューイヤーGP2015 東京大会 オープンクラス 優勝
以降チャンピオンズとして認定
スプリングGP2015 東京大会2 チャンピオンズ 優勝
ニューイヤーGP2016 東京大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2016 掛川大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2016 大阪大会2 チャンピオンズ 3位
戦績(フラット・セミフラット競技会)
ChampionShip Kanto 第8回大会 メインレース 準優勝
ChampionShip Kanto 第8回大会 バトルレース優勝
ChampionShip Kanto 第9回大会 メインレース 優勝
ChampionShip Kanto 第10回大会 メインレース 準優勝
OSKチャレンジカップ 第5回大会 メインレース 優勝
Saitama Ktsufra Challenge 第4回大会 メインレース 優勝
2.まきやねん選手
続いてCheMiKal所属のまきやねん選手のご紹介です。 まきやねん選手は2016年にミニ四駆に復帰し、同年に3レーンの日本一を決めるステーションチャンピオン決定戦2016 で優勝し、見事日本一に輝きました。
ミニ四駆を復帰して早くも3レーンでのタイトルを獲得した後も勢いは衰えず、翌年2017年にはジャパンカップ2017東京大会2 オープンクラスで優勝しチャンピオンズに認定されました。
チャンピオンズ認定後の2018年にはチャンピオンズポイントランキングで1位になり、2020年現在まで毎年コンスタントに優勝を重ねている現在のチャンピオンズ界のトップ選手です。
その強さの秘訣は3レーンで鍛え上げた速さもさる事ながら、マシンの姿勢制御に関する理論や感覚が非常に優れている事にあると思います。まきやねん選手の作品の走りはスローで見るとジャンプセクションなどで低く真っ直ぐ飛んでいてとても姿勢が良いです。これはミニ四駆の姿勢制御において重要な低男やローラー周りや重量バランスに対する理解度がとても高いからこその走らせ方なのだと思います。
まきやねん選手は現在既にチャンピオンズ4年継続を決めていて、次年度の公認競技会で優勝すれば特別表彰選手に認定されます。これまでのチャンピオンズ優勝は全て愛媛大会で決めているので、来年も愛媛大会での優勝に期待がかかるところですね。
こちらの作品はまきやねん選手がミニ四駆GP2018 ニューイヤー愛媛大会チャンピオンズで優勝したマンモスダンプです。当時上位選手の間で流行したマンモスダンプボディの低男を取り入れています。 プラボディを使用する事で低男全体の重量が増し、姿勢制御と制震性能が向上させる改造になっています。更にこの日のレイアウトはジャンプ後のコーナーは右コーナーしか使われていなかったので、フロントローラーの右が19mmAA、左が19mmプラリン、更に写真では少し見切れていますが、右リヤローラー最上段にも19mmAAが使われており右コーナーへの進入を意識したセッティング力の高さを物語っています。
次の作品は、まきやねん選手がステーションチャンピオン決定戦2016で日本一になった時に使用したウイニングバードフォーミュラーです。いま見るとオーソドックスなマシンの形に感じると思いますが、2016年にMSフレキは既に流行り始めていたものの小径ローフリクションタイヤはまだそれほど流行しておらず、当時としてはかなり流行を先取った作品でした。フロントのカーボンスタビとリヤ提灯アームに独特な肉抜きが施されており、軽量で尚且つ見た目もカッコ良くしています。
まきやねん選手は「お宝あっとマーケット町田店」代表で出場しましたが、ここは所属チームCheMiKalのホームサーキットで3レーン大会のレベルが全国的に見てもかなり高いミニ四駆ステーションです。3レーンが上手い方がたくさんいてとても勉強になると思いますので、お近くの方は一度行ってみてはいかがでしょうか。
更にまきやねん選手は大会参戦記やチームの紹介についてnoteで情報発信しています。チームの皆さんでミニ四駆を楽しんでいる様子がよく伝わってきますので、いつも更新を楽しみにしています。
戦績
ステーションチャンピオン決定戦2016 オープンクラス 日本一
ジャパンカップ2017 東京大会2 オープンクラス 優勝
以降チャンピオンズとして認定
ニューイヤーGP2018 愛媛大会 チャンピオンズ 優勝
スプリングGP2018 東京大会1 チャンピオンズ 準優勝
スプリングGP2018 東京大会2 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2018 岡山大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2018 東京大会EX チャンピオンズ 準優勝
チャンピオンズポイントランキング2018 最優秀賞(11P)
スプリングGP2019 愛媛大会 チャンピオンズ 優勝
ニューイヤーGP2020 愛媛大会 チャンピオンズ 優勝
ジャパンカップ2020 新潟大会 チャンピオンズ優勝
スプリングGP2023 愛媛大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2023 仙台大会 チャンピオンズ 準優勝
3.おまつ選手
次にSNO所属のおまつ選手のご紹介です。2013年よりミニ四駆を始め、翌年のジャパンカップ2014北海道大会オープンクラスで3位に入賞するなど早くも活躍されていて、当時からスーパーFMシャーシを使用していました。
その後も全国各地の公認競技会に参加し、ジャパンカップ2016 東京大会3オープンクラス優勝によりチャンピオンズ認定されました。チャンピオンズになった翌年にも入賞を多く重ね、2018年にはミニ四駆公認競技会の最高峰「CHAMPION SHIP 2018」で見事優勝し日本一に輝きます。この時のおまつ選手は年内の勝利がまだ無い状態だった為、年内最後の競技会であるCHAMPION SHIPがチャンピオンズ継続のラストチャンスでした。1回戦から一度のミスも許されないギリギリの状況の中、極限の戦いを制して優勝した姿は今でも目に焼き付いています。
おまつ選手の強みは様々な種類のシャーシを使いこなしている点で、正転片軸とFM片軸とMSフレキのそれぞれのシャーシで公認競技会を優勝した経験があり、各シャーシの特性を熟知している選手だと感じます。
また、おまつ選手はそれまでの常識に無いようなアプローチの改造を取り入れる事がとても上手いです。例えばセッティングやパーツ構成を左右非対称にする改造は今では当たり前になっていますが、一昔前ではあまり考えられていない事でした。おまつ選手はかなり早い段階からそういった改造を取り入れていて、常識に捉われない発想をしている事が強さの秘訣だと思います。これはライバルマシンガレージ②で紹介したなおち選手と似ている部分でもありますね。
こちらの作品はミニ四駆GP2017 スプリング東京大会2 チャンピオンズで優勝したおまつ選手のサンダーショットJr.です。 シャーシはVSを逆転にしたFMVSシャーシになっています。タイヤはフロントにスーパーハードとリヤにローフリクションを使用し、リヤグリップを落として蹴り出しを抑え、ジャンプを低くするセッティングにしているように思います。
よく見るとフロント提灯とリヤ提灯のマスダンパーが付いている部分はミニ四駆キャッチャーが使われていて、あえてしなりを持たせることにより制振性を高めています。
余談ではありますが2014~2020年5月現在までチャンピオンズでFMVSシャーシを使用して優勝したのはおまつ選手一人だけですので、この日の優勝は素晴らしい快挙と言えるでしょう。
続いての作品はミニ四駆GP2019 スプリング東京大会2 チャンピオンズで優勝したおまつ選手のサンダーショットJr.です。 こちらはスーパーFMシャーシが使用されています。おまつ選手と言えばスーパーFMシャーシのスペシャリストというイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。
スーパーFMシャーシは駆動面の理由から新しいシャーシと比べて速度ではどうしても不利になってしまうシャーシなのですが、おまつ選手はその点をパワーソースやギヤ周りの抵抗抜きを用いてカバーしました。タイヤもゴム部分を極力少なくして軽量化に気を使っていたり、画像だとわかりにくいですが電池落としも行って安定性の向上もされています。
スーパーFMシャーシで勝つ為の改造を全て妥協無く行っている、一つのシャーシに対する愛を感じる作品です。
戦績
ジャパンカップ2014 北海道大会 オープンクラス 3位
ジャパンカップ2016 東京大会3 オープンクラス 優勝
以降チャンピオンズとして認定
スプリングGP2017 東京大会1 チャンピオンズ 準優勝
スプリングGP2017 東京大会2 チャンピオンズ 優勝
ジャパンカップ2017 仙台大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2017 北海道大会 チャンピオンズ 3位
ニューイヤーGP2018 岡山大会 チャンピオンズ 3位
ジャパンカップ2018 東京大会3 チャンピオンズ 3位
CHAMPION SHIP 2018 優勝
スプリングGP2019 東京大会1D チャンピオンズ 優勝
ウィンターGP2019 東京大会D チャンピオンズ 優勝
スプリングGP2020 熊本大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2021 静岡大会 チャンピオンズ 3位
ミニ四駆GP2023 東京大会1D チャンピオンズ 3位
ミニ四駆GP2023 東京大会2D チャンピオンズ 優勝
2024以降チャンピオンズ5年継続により特別表彰選手として認定
4.ヤマ選手
最後に、TPSとNSEにそれぞれ所属のヤマ選手のご紹介です。
2012年からの復帰組で、2013年のニューイヤー東京大会から公認競技会に参戦しています。2014年のスプリング愛知大会でオープンクラス優勝後、安定した成績を収め2019年からはチャンピオンズ特別表彰選手に認定されています。
ヤマ選手は、堅実さと速さを兼ね備えたまさにチャンピオンズらしい走りが特徴です。マシンの改造においても奇抜な改造よりは、基本的なセッティングの戦闘力を高めたものを採用しているといった印象を受けます。
更にヤマ選手の特筆すべき点はなんといってもジャパンカップでの強さです。2015年から2018年までの4年連続でジャパンカップチャンピオン決定戦に進出しています。ジャパンカップに強いということは色々な理由があると思いますが、ヤマ選手は特に室内コースへの対応力の高さが光ります。先ほど挙げた4年連続優勝を決めた競技会は、全て室内で行われたものでした。屋内はコースコンディションは屋外に比べると変化し難いですが、その分レースが高速化したり、空調によるグリップ力の変化など屋外とは違った難しさが発生します。
これから紹介させていただく作品の写真を見ると分かりますが、ヤマ選手はそういったコンディションの変化に対応する為のグリップバランスの調整が非常に上手いです。
こちらはヤマ選手がジャパンカップ2016 大阪大会で優勝した作品です。ヤマ選手といえばレッドのカラーリングに黄色のコクピットのアバンテMkⅡ.が印象的ですね。フロントに干しタイヤを使用するのは片軸では王道のセッティングですが、タイヤの光沢を見るとリヤも意図的にグリップを落としているのが分かります。この時のコースにはアイガーEVo.スロープからのジ・アルプスがあった為、その区間での必要以上の加速を防ぎつつ、その後のトリプルSでの切り返しを高速で抜ける為のセッティングだと思います。リヤの上下の19mmプラリンも3本スポークタイプと5本スポークタイプを上下で使い分けることにより、フェンスとの当たり方を調整しています。
こちらはウィンターGP2019 東京大会 チャンピオンズ特別表彰選手にて優勝した作品です。この日のレイアウトは至上稀に見るハイスピードコースだった事もあり、マスダンパー類は潔く取り外されています。チャンピオンズ特別表彰選手ではハイスピードゆえにリタイヤも発生しましたが、この荒れ模様のレースを見事制しました。
こちらも先ほどの作品と同じく、フロントには干しタイヤが使用されている事がわかりますね。また、フロントの17mmローラーの取付にはアルミカラーが使われておらず、適度なしなりと軽量化を両立させています。リヤローラーにもピン打ちが採用されており、作品の軽量化への拘りが感じられます。電池周りにも補強が施され、走行中に電池が動いたり外れたりするのを防いでいる事も見逃せないポイントです。
戦績
スプリングGP2014 愛知大会 オープンクラス 優勝
以降チャンピオンズとして認定
ジャパンカップ2014 東京大会1 チャンピオンズ 3位
ニューイヤーGP2015 東京大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2015 大阪大会1 チャンピオンズ 優勝
ジャパンカップ2016 東京大会3 チャンピオンズ 3位
ジャパンカップ2016 大阪大会2 チャンピオンズ 優勝
ニューイヤーGP2017 愛媛大会 チャンピオンズ 準優勝
ジャパンカップ2017 静岡大会 チャンピオンズ 優勝
ジャパンカップ2018 大阪大会1 チャンピオンズ
ジャパンカップ2018 北海道大会 チャンピオンズ 優勝
2019以降チャンピオンズ5年継続により特別表彰選手として認定
ジャパンカップ2023 岡山大会 チャンピオンズ 3位
ジャパンカップ2024 静岡大会 チャンピオンズ 準優勝
という事でライバルマシンガレージは今回が3回目となりますが、これまでのどのレーサーも素晴らしい作品揃いでしたね。作品の改造が上手い方、セッティングが上手い方など競技に対するアプローチの仕方は色々有り、勝ち筋というものは一つだけではないという事がミニ四駆競技会においては言えます。皆さんの中にも好きなシャーシや好きなボディ等にこだわりを持っている方もいると思いますが、自分の好きなマシンで勝てた時には喜びもより一層大きいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。そして、写真の提供とご紹介に快くご協力いただいた4選手の方も本当にありがとうございました。次回の低男産業note特別編では、若いレーサーで頑張っている方を特集したいと思います。お楽しみに!
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