Teal

外出する用事がない、もしくは着替えるほどの用事がないときは朝起きたままの姿で1日を終える。
今日はそういう日だったので朝起き、昼まで過ごし、昼食を食べて歯を磨いていた。口を濯いだ後、鏡を見ると、全身鴨の羽色の人間がそこに。
ユニクロで何年か前に買ったTシャツ、高校の部活で買ったバスパン、そして右手が握りしめていた歯ブラシまで、全てが青緑色だった。

ひとりシェイプオブウォーター

演出されたかのような色の統一に両膝が震えた。昨日の夜、お風呂に行く前に箪笥から引っ張り出したときには感じなかったチグハグが、大波となって押し寄せてきた。誰にも注目されないけど、とても恥ずかしいことをしていることは明白で、いち早く打開せねばと思った指は、脳が考えるよりも先に歯ブラシを仕舞っていた。

僅か数秒で繰り広げられた緊張と弛緩。指の次に動いたのは脚だった。数メートル歩いたところで、それまでの乱心は無かったことになってしまった。映し出されていた狂気は有耶無耶になったので、私は生活を再開した。

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