泣くって難しい

なんだか今日は泣きそうだ。
泣いてもいいよ、と自分に言ってみるのに、
なぜか泣くのを我慢してる時の感覚がする。
喉の奥、上顎の方、あるいは鼻の奥とでもいえばいいのか、そんな場所に力が入って、ツンとした痛みがある。
その感覚で、ああ自分は泣きたいのを我慢してるんだなと自覚する。
そしてもう一度、別に泣いてもいいんだよと心の中で言ってみる。
涙は出なかった。

かわりに思い出したのは、子どもの頃友だちと遊んでいて、遊びの一環としてからかわれて、泣きそうになったからそそくさと姿を消した日のこと。
みんなの前で泣きたくなかったから、嫌な思いをさせたくなかったから、わざわざ学校の人気のない場所に移動してうずくまっていたのに、一緒に遊んでいた人たちがやってきて、泣いている自分を「面倒だ」なんだのと追い討ちをかけるように責めてきた。
泣きたくて泣いてるわけじゃない。せめて人前で泣かないようにと、幼心に気を遣って隠れて泣いていたのに、なんで勝手に追いかけてきたあげく怒られるのか。
見たくもないものをわざわざ見にきて文句を言う人々が理解できない。
思えばいじめやSNSでの炎上、誹謗中傷を散々見て、嫌なものに関わっても嫌な気分になるだけなのにわざわざ関わる人々を理解できないと言ってる今の自分と、子どもの時の自分は案外大差ないものだなと思う。

死にたくはない。全く死にたくはないのだが、似たような言葉が出てきそうになって、それを否定する。何が出てきそうになっているのかはわからないが、それは確かに「死にたい」に近い言葉だという確信だけはあり、でもいざ何を思っているのかというとわからない。わからないのではなく、わかりたくないんだろうな。
本当に死にたくないので、もし「死にたい」に近いことなんて思ってそれが実現してしまうのが怖いから、「死にたいと思ってはいけない」という思考に行き着く。何か思ってはいけない気がする、それでも湧き上がってくる何かを、わからないままに抑えた。

泣きそうだ。そう思った矢先にもう泣くのを我慢していることに気づいた。
家の中にいるのだから、ここには泣いても責める人なんていないのだから泣いてしまっても大丈夫なんだよ。それでも涙がギリギリ溢れないから、反射的に泣くのをこらえようとする癖が、「泣いてはいけない」という思い込みが、外れてないんだなぁと思った。

満月はネガティブな気持ちになりやすいらしい。泣きそうなのも、昔のことを思い出したのも、思ってはいけない何かが溢れてきそうなのも、今日は満月のせいにしようと思う。
窓からはっきりと満月が見える。今日の月はとても綺麗だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?