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価値って、なんだ?―『お金2.0―新しい経済のルールと生き方』の要約と考察

『お金2.0ー新しい経済のルールと生き方』(著:株式会社メタップス 代表取締役社長 佐藤航陽)


第一章 お金の正体

現実社会は「お金」「感情」「テクノロジー」の三つが未来の方向性を決めており、現在はテクノロジーの発達による仮想通貨の登場等のお金・経済の変化を生んでいる。そもそもこれまでの社会は国の発行するお金を中心として国が回っていて、人々はそれを常識と考えている。全く違った仕組みでうごいている仮想通貨を同じ“通貨“として考えると誤解をうむ。仮想通貨の筆頭とされるビットコインは、ブロックチェーンを用いて中央管理者不在の経済圏を築いており、参加者の報酬も明確なために自動的に発展している。また経済システム自体について考える。経済は個々人を構成要素とするネットワークであり、個々人の欲求(本能的欲求・金銭欲求・承認欲求)を起点に動く。この様な動的ネットワークは①偏り②不安定性・不確実性を持つ。また経済システムは持続的・自発的に発展するものでなければ持たない。この条件を満たすシステムには、①報酬が明確②時間による変化③不確実性④秩序の可視化⑤コミュニケーションという共通点を持つ。これに加え、参加者全員が共通の価値観や思想(幻想)を持つことでシステムの寿命は飛躍的に延びる。逆に「世界を変える」とは全時代に塗り固められた幻想を壊し、新たな幻想を上書きすることに他ならない。このような考え方(創発的思考)は普遍的な社会基盤をなすものであり、経済にとどまらず人間や自然にも通用する。

第二章 テクノロジーが変えるお金の形

前述のように、現在ブロックチェーンや深層学習といったテクノロジーにより促されているのは経済の「中央集権化」から「自律分散化」への変化だ。この変化は、車など従来個人が所有することが当たり前となっていた資産を共有する「共有経済」、信用や好意・時間などの抽象概念をトークンで可視化して取引する「トークンエコノミー」、ネットワーク社会における他者からの評価を基準に回る「評価経済」といった形で現れている。経済は作る対象に変わりつつある。経済の民主化とも言い換えられ、これまでの国家の役割の代替可能性を秘めている。

第三章 価値主義とは何か?

本来お金は価値の交換・保存・尺度の役割を担う手段であったが、資本主義の浸透の中で「お金でお金を増やす」という手段の目的化が進んだ。これにより実生活とは関係のないところで多額のお金が動くようになり、お金は実体経済とはかけ離れたものになってきている。だが近年、社会貢献事業など「お金にはならないけど価値あるもの」の再認識が進み、資本主義における価値あるものと世間の人々が考える価値あるものに“ずれ”が生じている。そもそも価値には①現実世界で役に立つかという有用性としての価値(ex.法定紙幣)②個人の感情と結びついた内面的な価値(ex.twitterのフォロワー数)③共同体の持続性を高める社会的価値(NPO等の社会貢献事業)があり、これらは各々の評価基準で可視化されうる。つまり、価値媒体がお金に統一された資本主義から、多様な価値媒体において各々の経済システムが形成される価値主義に変わりうるのだ。その時人々は、社会に存在する複数の経済システムから自身の所属する経済圏を「選ぶ」ようになり、「稼ぐ」ことの意味も変化する。また価値の③を満たすためにビジネスは必然的に公益性を帯びるようになり、貧困などの従来政治における課題も個人が解決するようになる。価値基準の見直しにより政治と経済の垣根がなくなっていくのだ。BIが導入されればお金のコモディティ化が促され、人々の価値基準がさらに変わるだろう。複数の経済圏に属することで失敗を恐れなくなり、イノベーションも加速する。これが価値主義の考え方だ。人は一旦常識を創り上げるとなかなか抜け出せなくなるので反発を覚える人もいるだろうが、柔軟に考える必要がある。

第四章 「お金」から解放される生き方

最低限の欲求が満たされた後に訪れる価値主義においては、お金の相対的価値は下がり精神的欲求が高まるため、稼ぐ事ではなく人生の意義や目的こそが価値を持つようになり、情熱を傾けられる事・共感できることへ人々が沢山投資するようになる。人生の意義や目的を他に与えられる人の価値はより上がるのだ。だからこれからは、金銭的リターンを第一に考えている人々より、何かに熱中している人の方が“結果的に”利益が得られるようになる。個々人がそのようなものを見つけるためにはまず、一日中やっていても疲れない事を見つけるのがいいだろう。今の日本人は小中の教育の過程で、やりたいことではなくやらなければならない事をやらされたために“心がサビている”人が多い。自分との対話を繰り返してこの“サビ”を取り、自分の情熱を発見することが大切だ。

第五章 加速する人類の変化

前述のように価値主義が進むとすぐにお金にならなかったことにも投資が行われるようになる。これが新たな技術革新を生み、人類を次のパラダイムへ移行するトリガーになりうる。そして大半の労働は機械によって自動化され、人間はお金や労働から解放されるようになる。このことは想像がつかないかもしれないが、現代人が江戸の身分制に驚くのと同じように、いずれお金に縛られた生き方も驚かれるようになるだろう。また、バーチャル上の国家や・現在見えない情報を可視化した現実の登場によって、自身の属する国家や現実までもを選択することができるようになる。最後にお金について。本来お金は道具に過ぎないのだが、多くの人は自身の人生経験から「お金=悪いもの」という先入観を持っているかもしれない。だがこのようにお金と感情を結びつけて考えていると、格差などの問題が発生した時に特定の「悪人」を探し、懲らしめることで憂さ晴らしをするようになる。それでは何の解決にもならない。そうではなくお金と感情を切り離し、格差を固定化させないための新たな経済システムを考えるべきなのだ。

考察etc.

題名からは明らかに金儲けの話と思われるが、実際は「価値」について語った本だという印象を受けた。読み終わってすぐの正直な感想を言うと、価値主義の考え方には深く賛同できるが、その後の社会における変化(特にベーシックインカム導入を仮定して述べたあたり)については疑問符がつく。自分が実践していく中で社会の変化は捉えていきたい。現在自分は19歳であるが、これからの社会の変化に関心が高まり、年収云々を抜きにまずは自分の興味のあることにぶつかっていってみようという気になった。これからは「感情」がどこに於いても鍵になってくるのだろう。自身の感情と常に向き合っていく中で理解を深めてみようと思う。また、ブロックチェーンは仮想通貨だけではなく汎用性の高いものだと感じる。自分はこれまで、「自分の市場価値を上げろ」と言った文句が気に食わなかった。だが、「価値」は多様なものであると実感した。周りをいい意味で気にせずのびのびと生きていくことが自然と自身の「価値」を生み出していくのだろう。

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