親族間デザイア・ロワイヤル

仮面ライダーギーツの話をしたい。

2022年9月より1年かけて放送している、「仮面ライダーギーツ」の話だ。5月で35話まできている。

ざっくり冒頭設定を説明すると「民間人が突然装備(変身ベルト)を渡されて未知の敵と戦い、たくさん敵を倒すなどで高得点を取ると、1つ願いを叶えることができる」という設定である。なお、この戦いを「デザイアグランプリ」と呼ぶ。

アラサー以上の方向けにいうと「GANTZみたいなもん」で済む。作者の方も当初、そう仰っているし。


我が家の疾風怒濤の甘えん坊、パパだっこしてよぅでお馴染みの4歳児ヨシタロウがこれに激ハマりしており、基本彼が在宅時はアマプラによってエンドレスに居間で流れてるので、難解な設定やキャラクター造形を私も語れるようになった。

冒頭のGANTZ的な設定はせいぜい10話くらいまでの話であり、物語はねじれにねじれる。ゾンビの発生、人狼ゲーム的なもの、時代劇に突入、謎の球技、タイムリーパー鈴木福くんもライダーに変身して参戦、最近だとデスゲームの「ゲームマスター」と呼ばれる運営権自体を敵に奪われ、「敵が仮面ライダーを倒すとポイントが入る」ゲームに変わったり、直近だとさらに運営権が移り「仮面ライダー同士で殺し合いをする」という「デザイア・ロワイヤル」という局面にきている

と、ここまで語れるように私もハマってきている。

やがて4歳ヨシタロウの熱は1歳ヨシスケにまで伝播し、つたないしゃべりで「へんしん!」って言うのがめちゃくちゃ可愛いと思っている。

そして、水泳の検定合格かなんかのタイミングだったと思うが、ヨシタロウはすでにこの「変身ベルト」、今作でいうところの「デザイアドライバー」、定価が5500円くらいするおもちゃを私に買わせている。

さて、そんでゴールデンウィークである。
例によって、妻の姉夫婦とその2人の息子が襲来する。

うちのと合わせて、7歳、4歳、4歳、1歳の4男児になるのだが、実は全員ギーツにハマっている。が、「デザイアドライバー」を持っているのはヨシタロウただ一人だ。

「デザイアドライバーをめぐる骨肉の争いが起こるのでは」

そう危惧した義父により、なんとうちの1歳と、甥っ子2人の3名分のデザイアドライバーが新たに購入された。

都合、4名の仮面ライダーギーツが爆誕した。

買っていただいてありがたい、ありがたいの、だが。

「これはヤバい」私はすぐに惨劇を察した。

平素、「たかかいしよ!」と私に暴力を仕掛けてくる4歳児ヨシタロウではあるが、デザイアドライバーがあると、独特のムーブからの「へんしん!」コールがあり、ギーツと化した場合に暴力の度合いが200%に増強、「マグナムシューター40X」という、本来は銃器なのだがヨシタロウの扱いではプラスチック製の鈍器に過ぎず、容赦なく振り回してくるのでめちゃくちゃ痛い。

これが4体になる。

ターゲットは私だけにはならないだろう、ライダー同士で殺し合う未来しか見えない。

親族間デザイア・ロワイヤル開幕だ。

「これは、労災が起きる」

私は4男児の争いで負傷者が出ないことゲームマスターよろしく見守らないといけないという使命感に駆られた。

が、全然大丈夫だった。

そもそも全員が変身に至る前に、細かな付属パーツがどれが誰のか速攻で分からなくなり、「おれのIDコアがなくなった!」と7歳児が大騒ぎし、義姉が「なんでもう無くなるのよ!せっかくじいじが買ってくれたのに!」と驚異的な怒声を発することになり甥っ子2名が泣いたり言い返したり阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられ、先行ギーツたるヨシタロウは自分のIDコアを失わないようにベルトをギュッと抑えてフルフル震えており、1歳児はそもそもベルトの重みに耐えかねて静かに前にコケた。

「おれも妻一族に混ざって日本酒とか飲みたい」自分のデザイアを抑えながら、1歳男児のベルトを静かに外し、膝の上に乗せ、混迷を収めるように何周目か分からない仮面ライダーギーツをアマプラでテレビに映す。静かに画面に魅入っていく小さなギーツ達。

久しぶりにまた鈴木福くんが出てきて胸熱だ。

仮面ライダーと大学一年生を両方こなす福くんに、いや、「福さん」に私も勇気をもらう。
父と、会社員。福さんに負けじと、私も2足の草鞋を履きこなそうじゃないか。

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