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100億円のビットコインを相続したら税金が109億円!?

おはようございます。🐤

とても面白いXの投稿があったので解説します。たぶん村上ゆういちさんは、取得費について誤解されているので、そこもあわせて解説します。

https://twitter.com/Jeanscpa/status/1725077541143400573

要旨

  • 100億円のビットコインを父から相続した。

  • 相続税として54億円

  • 所得税、住民税で55億円

  • 現行法では合計109億円の税金を支払う必要がある

これを避けるには相続放棄しかない。
そんなバカな!?

それがバカじゃない。村上さんの言うことは概ねあってます。

解説1:現金100億円を相続した場合

税金の計算は複雑です。

だからシンプルに現金100億円を相続した例について考えることで、ひとつひとつわかりやすく説明していきます。

まず、税金にはいろんな種類があります、相続税、贈与税、所得税、住民税、消費税など、これらはみんな別々の税金なので、別々にかかります。現金100億円を相続した時にかかる税金は相続税です。

相続税の計算のしかたはそんなに難しくありません。相続した財産、今回は100億円の現金に対して、基礎控除の額を引きます。今回は一人っ子だとして、基礎控除は3600万円だとします。

100億円-3600万円=99億6400万円(課税価格)

うわ、基礎控除がゴミのようだ。
この課税価格に税率をかけて一定の額を引きます。6億円超なので55%です。

99億6400万円×55%-7200万円=54億820万円

No.4155 相続税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

つまり、現金を100億円相続した場合にかかる相続税は54億820万円です。自分の手取りは45億180万円となります。まあウハウハでしょうか。

ざっくりとした相続税の考え方の基本がわかったでしょうか。

解説2:不動産100億円を相続した場合

次は、土地や建物などの不動産を相続した場合です。これも基本的には現金と同じなのですが、不動産である時点でおよそ80%の掛け率で評価されるので(率は土地による)、いきなり20億円の評価減となります。

100億円×80%-3600万円(基礎控除)=79億6400万円(課税価格)

この課税価格に55%をかけて7200万円を引くので、相続税額は次のようになります。

79億6400万円×55%-7200万円=43億820万円

100億円の不動産を相続した時の納税額は43億820万円となります。なんと、不動産にするだけで相続税額が11億円も安くなりました。よく不動産で節税できるというのはこういうことなんですね。

というわけで、まずこの相続の時点で、現金43億820万円を支払います。

相続だけならこれで終了です。

この時に納めることができるだけの現金を持っていなかった場合は、不動産を売って現金を作らないといけません。(物納という方法もあります)

この時に発生するのが「譲渡所得」です。譲渡というのはものを売ってお金を受け取ることで、ここで所得税がかかります。

譲渡所得の計算のしかたは次のとおり。

譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

今回は相続した不動産が時価である100億円で売れたとします。
そこから経費である「取得費」と「譲渡費用」を引きます。

取得費というのは、もともと父が買った時の不動産の価格で、それがわからない時や、やたら安い時などは取得費を5%とすることができます。ここでは5%、つまり5億円としましょう。

ここが元ツイの間違いポイントで、取得費は相続時ではなく、父が取得した時の価格が採用されます。

また、相続財産を譲渡した時の取得費の特例というものがあって、これを使うと納めた相続税額を取得費に加算することができます。

つまり取得費=5億円43億820万円(既払い相続税額)=48億820万円になります。

次に譲渡費用です、通常は売買価格の3%+6万円程度が仲介手数料でとられて、あとは印紙税を48万円支払うとします。だから3億54万円だとしましょう。

譲渡所得=100億円-(48億820万円+3億54万円)=48億9126万円

これに対して課税されます。そして不動産の譲渡所得は分離課税なので、一律で所得税15.315%+住民税5%の合計20.315%がかかります。(父の所有期間5年超とする)

48億9126万円×20.315%=9億9366万円

つまり、手取りは

100億円-43億820万円(相続税)-3億54万円(譲渡費用)-9億9366万円(所得税)=43億9760万円

になります。現金100億円の相続とだいたい似た額になりましたね。

1億円以下くらいの不動産ならほかにいろいろ節税の方法があるので、元ツイで言ってるように所得税は限りなくゼロに近づけることも可能ですが、100億円くらいに大きくなるとそんな努力もゴミのようです。

解説3:ビットコイン100億円を相続した場合

だいたいお察しかもしれませんが、取得費加算の特例がビットコインには使えません。また、現在のところは物納もできないと思われます。

だから、元ツイのように100億円の相続税は54億820万円とられます。

これを現金で支払えればここで終了ですが、支払えなくて、日本円に交換する(=売る)と所得になります。

取得費については、実際は100万円だったとしても5%である5億円とすることができます。あと経費にできるのは売買手数料くらいです。

すると、100億円-5億円(取得費)-500万円(取引手数料)=94億9500万円が利益(=所得)となります。

この所得は不動産の譲渡所得と違って、雑所得になります。なんで?と思いますが、ここが税制の追いついていない所です。

これに対して累進課税で所得税がかかるので、

No.2260 所得税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

(94億9500万円-各種控除71万円)×45%-479.6万円=42億6763万円(所得税)
42億6763万円×2.1%=8962万円(復興税)
(94億9500万円-各種控除66万円)×10%=9億4943万円(住民税)
合計:53億668万円

がとられます。
相続税54億820万円との合計は107億1488万円となり、手取りはマイナス7億1500万円くらいになります。

結論:制度のバグ

100億円の財産を相続したら107億円の税金を支払わなくてはいけない。
これは制度のバグです、完全に税制がおいついていません。

この問題は、暗号資産が株式や金などの資産とは違って、その売買益が「雑所得」になるから起こります。例えばビットコインETFが認められたら、それだけで解決しますし、ひいては現物についても金などの資産と同様に取り扱われることになるでしょう。

二重課税を防ぐ意味では今すぐにでも是正されるべきですが、まあ100億円のビットコインを相続することなんてないので、ご心配は無用です。ハッハッハッ。

今、現実にこんなことがあったとしたら、たぶん国税庁も個別に対応してくれるでしょう。万一107億円課税なんてことになったら、思いっきり国税庁と戦ってください。めちゃくちゃ社会問題になって、これが契機で税制の改正は確実にされます。

仮に取得費加算の特例が認められたとしたら、手取りは20億円ほどになります。

納税する現金がなければ、もしかしたら物納が認められるかもしれません。それなら、54億円分のBTCを物納すれば46億円分のBTCが残ります。あとはそれをちびちび売れば大きな課税は避けられます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm

まあ、無難にこんなことを避けたいなら、生きてるうちに売っておくことでしょうか。繰り返しになりますが、相続6億円超えてから心配してくださいね。4000万円程度ならビットコインでも相続税はほぼかかりません。

というわけで今日はここまで、それではまた、FP〜(@^^)/~~~

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