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Bitcoin Halvingの現実

おはようございます。🐤

2024年4月20日 午前9時(日本時間)、半減期がやってきました!

「半減期」って、なんかおかしいなこの日本語。「倦怠期」みたいにいつかは過ぎて行ってしまいそうですけど、ビットコインの半減期は過ぎて行きません。今後4年間は報酬がこれまでの6.25 BTCから3.125 BTCと半分になります。

って、まあ倦怠期も似たようなものかな? 4年ごとに愛情は半分、パートナーへの関心も半分になっていきますよね。復活しないし。

だから「半減期」でいいか、ちょっと気取って「Halving」とかタイトルにつけたけど、やっぱりみんなに伝わりやすい「半減期」でいきます!


半減期の嘘

音速のGOXさんとかMr.Bitcoinさんとか山下健一さんとか、数万のフォロワーを持つインフルエンサーさんたちが「半減期が来ると希少価値が上がるのでビットコイン価格は上がる」とおっしゃっていますが、これは間違いです。

「えっ、でも新規発行量が減るんでしょ?」
「だったら手に入りにくくなるから、正しいんじゃないの?」

と思われるかもしれませんが、半減期が来て新規発行量が半分になってもビットコインの希少価値にはほぼ影響はありません。

それをわかりやすく説明しますので、ぜひ見ていってください。

ビットコインの「需要と供給」

ビットコインに限らず、ものの価格は「需要と供給」によって決まります。平たく言えば、欲しい人が多いのに物が足りなければ価格は上がるし、そのものに興味がなければ、売れ残って価格は下がっていきます。

特にビットコインなんて、実体がないただのデータなので、何の役にもたちません。誰も欲しがらなければ価値はゼロです。ゼロなのです。

というわけでまず「需要」について考えていきます。

需要その1 支払手段

ビットコインの支払い手段としての需要はゼロではないものの、2024年4月現在、日本でビットコインが利用できるお店は指折り数えることができるくらい少ないです。世界中でもビットコインをお金の代わりとして、日常の支払い手段にしているところは少ないと思います。

なぜ日常の支払いに使われないかというと、ビットコインの送金手数料が高く、さらにとても不安定で、かつ遅いという三重苦があるからです。

Blockchain.com | Charts - Fees Per Transaction (USD)

この青いラインがビットコインの送金手数料の平均値です。2~3ドル程度の時もあれば、40ドル近い時もあります。

何か物を買って支払手数料で40ドル(約6000円)取られることを想像してみてください。

また、よく言われている「海外送金手数料が安くて早い」というメリットも、銀行を使った送金とさほど変わらない水準です。

誰が使うの? って感じですよね。

🐤 マジで誰が使うのってことですが、ビットコインの取引情報に名前や画像を刻むことができる「Ordinals」というNFTのようなサービスがあって、そのNFTのようなものが高額で取引されているので、高い手数料でも支払うということが背景にあります。

需要その2 投機(投資)

一方で「投機(投資)」の需要は高まっています。

2024年1月、米国で初の現物ビットコインETFが承認されて、市場からビットコインへの資金流入がおこっています。約3か月で12,322 US$m(見たことない単位ですね、$mは百万ドル=1億5400万円なので、つまり12,322×1億5400万円=1兆8975億円ということです)

Bitcoin ETF Flow – Farside Investors

約2兆円という額がどれくらい大きな額かというと、「eMAXIS Slim 全世界株式」や「S&P500」など主要な投資信託の3か月間の流入額を合わせても足りないくらいです。

ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)

まとめると、ビットコインの需要は主要な投資信託と同じくらい高いということです。

次に供給=「売り」の側を見ていきます。

供給その1 市場の売り

売りの一番手は、これまでにビットコインを買って持っていた個人投資家や大手の企業などです。

一番の売り手はさきほどのグラフにもあった「グレースケール」という大手企業です。初期からビットコイン投資を始めていて、現在は売り手に回っています。

Bitcoin ETF Flow – Farside Investors

さっきの図の下側のグレーの部分が「グレースケール」の売りです。

🐤 ちなみになぜこの企業がビットコインを今売っているかというと、グレースケールはこれまで「GBTC」というビットコイン価格に連動する投資信託を販売していたのですが、「現物ビットコインETF」が承認されて、他社の商品に人気が移ったからです。

グレースケールの売り(供給)よりも、他企業や個人投資家の買い(需要)の量が多いので、需要>供給となり価格が上がっているということです。

市場での暗号資産の売買の大半は「暗号資産取引所」で行われています。

Bitcoin price today, BTC to USD live price, marketcap and chart | CoinMarketCap

暗号資産の情報サイト「CoinMarketCap」によると、1日(24時間)あたりのビットコインの取引量は約$25B~$30Bくらいで推移しています。

これもまた見慣れない単位ですが、$Bは「Billion ドル」のことでつまり10億ドル(=約1540億円)のことです。$28.33Bとは、28.33×1540億円=約4兆3628億円くらいの売買があったということです。

つまり、1日に約4兆円くらいの売りがあるということです。

それと同時に4兆円くらいの買いもあり、それらがだいたい均衡していると価格は一定で、売りが多ければ価格は下がり、売りが少なければ価格は上がるのです。

投資信託や株券など、すべての商品を合計した取引額が1日約3.8兆円だということで、もはやビットコインの比較対象は「株式市場全体」といえるくらい活発な取引がされています。

主要商品の一日平均売買代金・取引高等の推移 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

供給その2 新規発行

次にビットコインの新規発行による供給量です。

これは簡単で、昨日までは1ブロック(10分)あたり6.25 BTC=1日(24時間)あたり900 BTCでした。

現在の価格になおすと、900 BTC=約90億円です。

ようやく核心に迫ってきました。

  • 市場の売買量=4兆円/日

  • 新規発行量=90億円/日

新規発行の影響…目に見えますでしょうか。

この新規発行量が、昨日の半減期からさらに半分になりました。さて、ビットコインの価格に影響はあるでしょうか?

普通に考えると皆無ですよね。

しかし、価格は「需要と供給」によって決まるという原則に従って、もう少し突っ込んで考えていきましょう。

半減期が価格に与える影響

ビットコインの総発行量の予定は2100万 BTCです。

2009年1月3日の運用開始時は、1ブロック(約10分間)あたり50 BTC、1日(約144ブロック)あたり約7200 BTCが発行されていました。毎日毎日、約4年間で21万ブロック=1050万 BTCが発行されます。

例えば2012年の11月頃、半減期の手前では、約1000万BTCが既に発行されて流通をしていました。

この頃のビットコイン価格は約200円くらい、1日あたりの取引量は470万円くらいでした。

一方1日あたりの新規発行量は約7200 BTC(約144万円)

同じように比でいうと、市場の売買量:新規発行量=470万円:144万円

これくらい新規発行の売り圧が大きいと「半減期の影響でかい!」となりますよね。

半減期の影響は、昔と今とでは全然違うのです。

マイナーの収入

新規発行量の半減は、市場の取引量と比べてとても小さいので、ビットコイン価格にほとんど影響がないことはわかったと思います。

では、半減期が「市場の取引量」に与える影響を見ていきたいと思います。

そもそも、ビットコインの発行に関わる「マイナー」という人たちは、ビットコインのマイニング専用コンピュータをたくさん持っていて、作業のためにたくさんの電力を使っています。(経費)

市場にとっては新規発行量が小さくても、マイナーにとっては収入源なので、この量が半分になれば、単純に収入が半減します。

しかし発行量が半分になっても、使うコンピュータや電力は同じなので、経費は変わりません。

これにより、「ビットコインの収入」-「経費」がマイナス(赤字)になり、それが続くと廃業しなければなりません。あるいは、納税のため一部のビットコインを売却するかもしれません。

そんなこんなで売り圧が大きくなる可能性はあります。

ただ、ここ数日のビットコインのマイニング収入を見ていると、半減期の影響よりもずっと大きな収入増になっていることがわかります。

ブロック手数料 - mempool - Bitcoin Explorer

それまでは0.5 BTCくらいだった手数料の平均額が4月に入ってから1.0 BTCを超えることも多くなっています。

この「手数料」というのは、新規発行の報酬以外に受け取ることができるマイナーの収入です。

例えば840,000ブロック(ちょうど半減になったブロック)の手数料は約37 BTCと、新規発行の減少分よりもずっと大きくなっていて、1日たった現在も5.04 BTCと、まだ手数料収入は高い傾向にあります。

4月21日 10:44(JST)のブロック手数料=5.04 BTC

これが続けばマイナーは大喜びなのですが、一方で利用者はビットコインの送金にコストがかかってしまうので、特に個人間の送金はこれまで以上に避けられることになると思います。

また、発行量が同じであった2023年もマイナーは採算がとれていたため、その頃の価格より倍以上になっている今は、2023年ごろの状況と変わらないとも言えるでしょう。

今後ビットコイン価格が上がると、半減期がきても一定の収入が保たれる可能性が高いということです。

まとめ(半減期後の世界)

ということでまとめます。

  • ビットコイン価格は「需要と供給」で決まる

  • 需要は「投機(投資)」がほぼ全て

  • 供給は「市場の売り」が99%以上、半減期の影響は小さい

  • マイナーにとっての収入は「新規発行」と「手数料」

  • 新規発行は今後減っていくが、手数料は増えていく?

ということで、昔はともかく、今後「半減期」はビットコインの価格にはほぼ影響しない、というのが冷静な視点です。

あるとすれば、「半減期で供給が減り需要が高くなる」と思い込んだ無理解な個人投機家がたくさん買い集めることですが、まあ個人投機家の知識と経験と情報量をそんなにバカにしてはいけません。

🐤 みなさんも、インプレッション稼ぎやLINEからの情報売り目的のインフルエンサーの煽りには乗りませんように、私の切なる願いです。

これからはビットコインETFを始めとした投機(投資)市場の需要が一番の影響を与えます。

それは、「金」や「株式」、「投資信託や債券」など、他の多くの資産と同じように、政治や経済、金利、社会情勢などの影響をビットコインも受けるようになるという意味です。

ビットコインはたった15年でそんな資産に育ったのです。

これまでに発行されたビットコインの総量は約1969万 BTCで、割合でいうと全体の93.8%くらいです。

残り6.2%のうちの3.1%を2024年から2028年の4年間で新規発行していくので、1年あたりの資産の増加量は1%を割り込むことになるのですが、これは1年あたりの金の増加割合(新規採掘量/流通量)を下回ります。

取引量から見ても、現在はまだまだ投機目的が主だと思いますが、これが4年後、8年後にもっと落ち着き、資産としての安定性が高まると、中長期保有の投資目的が増え、市場での取引量は落ち着き、金と同様の「守りの資産」となる可能性は高いと思います。

一方で、法規制や暗号技術の進化などで、ビットコインが無価値になる可能性もゼロではないと私は考えています。

ぜひみなさんも冷静な視点をもって、発展途上の新しい技術の萌芽に立ち会い、混沌を楽しむとともに、使えるものは便利に使っていきましょう。

というわけで、それではまた、半減期~(@^^)/~~~

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