スプリンターズSに向けて思うこと

【前哨戦について】

 この夏のスプリントは3回逃げ切りがありました。CBC賞、北九州記念、セントウルSの3回です。ここ1年くらいは中々スプリント重賞での逃げ切りが少なかったのでここに来て何故急に逃げ切りが増えたのか。ジャスパークローネが強いだけ、テイエムスパーダがとうとう復調した。と考えても良いですが、これは理由があるように思います。率直な言い方をしてしまえば先行馬が動けかった。これに尽きると思います。
 CBC賞は逃げたジャスパークローネを見る位置にいたのはテイエムスパーダとマッドクール、インの一列後ろにサンキューユウガです。逃げられなかったテイエムとトップハンデかつ夏負け気味だったマッドクールは直線を向く際の加速についていけず馬郡に蓋をした状態で逃げ馬にリードを許す。内の隙間を突いたサンキューユウガが2着に好走するも3着は馬郡を割るのに時間がかかったスマートクラージュがやや離されて入線。
 状態面や能力的な問題、展開などで2列目の馬が馬郡に蓋をして逃げ馬がセーフティーリードを作る。同じことがこの逃げ切り3走で起きています。
 北九州記念では2列目でスティクス、テイエムスパーダ、モズメイメイと逃げられなければ脆い3頭が完全にコーナーで置いていかれて後ろの馬は外に出すロスがあったり馬郡を割るまでのロスがあったりで差届かない。
 セントウルSではヴァトレニ、モリノドリームが先行しレジェーロが更にその一列後ろに挟まることで隊列が出来上がった時点でテイエムスパーダは有力馬に対してかなりのリードを得られていたと言える。
 何でこんなことをわざわざ離しているかというと、これってもしかしたらスプリンターズSでも再現があるかもしれない、と思ったわけです。
 枠順発表前で逃げ馬を考えるとまあジャスパークローネかテイエムスパーダかだと思いますが、まあ十中八九ジャスパークローネでしょう。ジャスパー内テイエム外の場合はテイエムが追って追って競りかけてくるでしょうが先にラチ沿いを確保できればジャスパーが譲る理由が無いのでハイペースになったとしても2頭で逃げる形になるでしょう。
 テイエム内ジャスパー外だった場合、テンの速さで勝るジャスパーに一回前を切られることになるので、テイエムが競りかけるのにも少し時間がかかるんじゃないかなと。もしかしたら隊列がすんなり決まってジャスパーが比較的に楽に逃げられる可能性もあり得るんじゃないかなと思います。
 このテイエム内、ジャスパー外の場合だと再現の可能性が高まります。比較的すんなり逃げたジャスパーの後ろに逃げそこなったテイエム、前目で控えたモズメイメイ、休み明けのマッドクールあたりが前目で蓋をして後ろの動きを抑制する展開です。もちろんモズメイメイもマッドクールもチャンスのある馬だと思うので夏の重賞のようにあっさり引き離されないということもあるかもしれませんが、この3頭はCBC賞、北九州記念で前科のある馬。これが想定できるような枠並びになればジャスパークローネで勝負してみるのも面白いかなとちょっと思ったりしています。
 理想は2枠3番モズメイメイ、2枠4番ジャスパークローネ。スタートの良い逃げ馬の一頭内にいる馬は少しでもスタートをミスすると結構不利を受けますからね。この並びならばすんなり逃げる可能性も高まるんじゃないでしょうか。

【前走ギャップから見る注目馬】

 私の予想の中では度々出てくるこの「前走ギャップ」あんまりちゃんと説明したことが無かったかもしれませんが、簡単に言うと「前走よりも追走での負荷が軽くなれば軽くなるほど勝負所で能力を発揮できる。逆に前走よりも追走での負荷が強くなれば強くなるほど勝負所で苦しくなりやすい」こういう考え方です。これを説明するのに非常にわかりやすいレースが今年のセントウルSです。
 テイエムスパーダは前走逃げ損ねて番手から、ジャスパークローネが逃げたペースも早く3F通過は32.9、それを終始今村騎手に促されながら息を入れるタイミングもなく大敗。この太字にした促されながらもというのが重要で、馬なりではなく鞍上にそれ以上を求められた結果こらえきれずに負けているというのが追走の負荷が大きかったと言えるポイントで、その次走のセントウルでは勢いをつけてハナを奪ってそこからはマイペース。そのまま直線衰えずの逃げ切り。この前走逃げられなかったうえに強い負荷をかけられた次走、ハナを奪ってマイペースで走ることが出来たという前走とのギャップ。これが激走を産んだのではないかと思います。
 もう一頭アグリですが、これは非常にわかりやすい。これまで先行していた馬が急に控えたことで鬼足をつかって追い込んでくる。これは追走ポジションの変化により、これまでの競馬よりも足が溜まることで発生する現象であり、アグリに限らず平場や特別戦でも度々目にするものです。
 前走ギャップの説明はこれくらいにしておいて、今回のレースに向けて注目したいのは3つです。

・北九州記念

 まず北九州記念。これはシンプルに前哨戦の中で最も前半3Fが早い。次走テイエムが逃げられただけで即巻き返しているように、ジャスパークローネが逃げ切りこそしたが、全体に負荷は大きいレースだったんじゃないかなと思う。その中でも注目すべきはジャスパークローネとモズメイメイ。
 ジャスパークローネは端的に言うと北九州記念は負けて然るべきレースだった。前走から+2㎏、ペースもCBC賞の33.7から0.8詰まった32.9。中京であった坂が無いとはいえ普通はここまでラップが詰まれば逃げ馬はオーバーペースで潰れるのがほとんど。(自分の予想でもこうなると思ったので切った、切って人気を落としたスプリンターズSで狙うつもりだった)でも勝った。これは逃げられさえすればこれだけ前走から負荷が強くなってもジャスパークローネにとってはこのペースは許容範囲内だったということ。スプリンターズSでは更に斤量増となるが前述したようにテイエムが競りかけずらい枠並びになればペースは鈍化する可能性もあり私の想定としてはジャスパーが逃げてテンの3Fが33.3以上くらいならば逃げ切りの可能性がかなり高くなるのではないかと思う。
 もう一頭はモズメイメイ。大外18番からスタートは並。好スタートを切ったジャスパーを追いかけてかなり促して前に行っておりテンの負荷はかなり高かったと言える。更に初スプリントとなった葵Sではロケットスタートで最初の1Fはかなり下駄をはいているにも関わらず最初の1Fは12.4と遅い。実質的に初めてハイペースのスプリント戦のテンの速さを体験した、と言ってもいいかもしれない。その負荷の強いハイペースをしかも外3頭目を回されるロスもありながら経験してから斤量据え置きの54㎏で出られるのは非常に大きい上に、鞍上が武豊騎手に変わるのも大きな上昇。これは松若騎手がどうとかではなく武騎手が素人目に見ても分かるくらい騎乗姿勢が綺麗で、疑似的に斤量減に近い効果が生まれることが多いため。(ルメール騎手も同様の現象が起こりがち)なのでモズメイメイは今回メンバー内で最も負荷の大きい先行競馬を前走経験したうえに斤量面などでアドバンテージもあるというかなり面白い条件で出走することが出来る。ジャスパーとテイエムのハナ争いが激しくなりそうな枠並びになって、それを見る位置から競馬ができればかなり面白いかもしれない。

・セントウルS

 一方で前哨戦の中で最も追走負荷の小さかったレースがこのレースだろう。なぜそう言えるかというと、このセントウルSでは出走メンバーのほとんどがキャリアハイ若しくはそれに匹敵するレベルの上り3Fを記録したから。
 着順上位からテイエムスパーダ、アグリ、スマートクラージュ、ジャングロ、エイシンスポッター、ピクシーナイト、ブトンドール、ディヴィナシオンがキャリア最速。ボンボヤージ、ロンドンプランがキャリア最速+0.1の上りを記録していたように、これはかなり追走の負荷が小さく勝負所までにかなり足を溜められたレースだったと考えて良いのではないかと思う。
 ということは、セントウルSに出走した馬は追走負荷が高まることが想定されるスプリンターズSではこれまで程のパフォーマンスを発揮できない可能性も高いと言える。特に厳しいのはセントウルSでも後方から競馬をしたアグリ、エイシンスポッターの2頭。エイシンスポッターは最後方がデフォルトなのでまだギャップは小さいかもしれないがアグリが先行した場合に生じる前走ギャップは相当なもので、前走ギャップ理論を適用した場合、先行した時点で凡走する可能性が飛躍的に高まるという恐ろしい状態にあると言える。

・キーンランドC

 洋芝の重(ほぼ不良と言って過言でない)状態で行われたので、足元の悪さから生じる前走ギャップでは有利になるのがこのキーンランド組。
 レース自体もこの時計のかかる馬場で34.3-35.6の前傾ラップ。重馬場適性の非常に高いナムラクレアが馬場の良いところを前目から突き抜けたのでこの程度の前傾ラップで済んでいるがかなり苦しいレースだったのではないかと思う。
 その中で注目したいのはジュビリーヘッド、重馬場を走ったのは3走前の春雷Sと前走だけだが、春雷Sでは馬場が合わずに進んでいかず先行できなかったように見えたが、前走はスタートを決め手先行の外目を追走。勝負所では良いところを通しながら足を溜めていたトウシンマカオに進路をカットされてしまい思うように伸びることが出来なかったがそれでも、得意とは言えない馬場で厳しいレースを前目でこなしてから、適性が上昇する良馬場で前目の競馬ができる、となれば前走ギャップで考えるとかなりの上昇であり、ワンパンチ足りなさそうな現状を覆す一押しになればかなり面白い。人気もなさそうだし狙ってみてもいいかもしれない。

【まとめ】

 スプリンターズSを予想するにあたって、気になっているけれど予想の中で触れるタイミングがなさそうだったことを思い立ってまとめて書いてみました。スプリンターズSに限らず、自分の予想の中で穴馬を探したり人気馬を容赦なく消したりしているのは、この前走ギャップ理論を良く使っているので、少しでも参考になったり面白いと思ってもらえると幸い。
 今回のスプリンターズSでは前走ギャップ的に不利なセントウルS組全消しも視野、ジャスパークローネが楽に逃げられるようであれば先行馬を盾に逃げ切り3連勝もあり得る。前走ギャップから気になる穴馬はモズメイメイとジュビリーヘッド。特にモズメイメイは上手く先行の位置を取れれば展開的にも恵まれる可能性が高そうで楽しみ。というのが注目しているポイントですかね。いずれにせよ枠順発表が楽しみです。

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