クイーンSが楽しみな件

【かなりメンバーが揃った牝馬限定G3】

 夏に行われるローカルG3にしては揃い過ぎなくらいメンバーが揃った今年のクイーンS。
 登録14頭のうち、6頭が重賞馬(イフェイオン、エリカヴィータ、キタウイング、コンクシェル、スタニングローズ、モリアーナ)加えてウンブライル、ドゥアイズの2頭はG1含む複数回重賞で馬券になっている実力馬、ウインピクシスも昨年のこのレースで2着に好走、そして前走は大きな不利があって大敗したものの能力に期待される素質馬ボンドガールが反則斤量51㎏で参戦とちょっとすごすぎるメンバーが揃った。
 そんな中でちょっと気になるというか、今年のこの揃いすぎたメンバーだからこそ発生した注目ポイントについてちょっと掘り下げて考えてみたい。

【メンバーの半分以上が前走東京マイルG1】

 現在登録している14頭のうち、実に8頭が前走東京のマイルG1
(前走ヴィクトリアマイル)
・ドゥアイズ(4着 0.3差)
・ウンブライル(6着 0.4差)
・モリアーナ(7着 0.5差)
・スタニングローズ(9着 0.8差)
・キタウイング(11着 1.1差)
・コンクシェル(13着 1.7差)
(前走NHKマイル)
・イフェイオン(5着 0.8差)
・ボンドガール(17着 2.5差)
 やはり注目しなければならないのが前走VMが大挙6頭出走ということ。現在想定だとVMでも一定の結果を残したドゥアイズ、ウンブライル、モリアーナあたりは順当に上位人気になりそうだが果たしてVM好走組をこのタイミングで信用すべきなのか、逆張りの余地があるんじゃないかな?というのが今年のクイーンSにおける私の予想テーマにしたいと思います。

【今年のVM】

 今年のVMは14番人気208.6倍の爆穴テンハッピーローズが激走のG1制覇となった波乱レースですが、そのラップはかなり特徴的。
 12.2-10.5-11.1-11.6-11.4-11.6-11.7-11.7 前半45.4-後半46.4の早い時計のやや前傾ラップ。前半3Fが33.8で1200通過1.08.6とスプリント質の展開だったのがメンバー内で唯一1400以下の距離で高いクラスのレースを勝っていたテンハッピーローズに向いたのも頷けるレース。
 レースの流れによって単距離質か中距離質か求められる適性に振れ幅のある東京マイル戦の中でもかなりスプリント適性が求められたレースだったと思う。
 そんな極端なレース展開で力を見せた馬、特に馬券内まであと0.1秒に迫ったドゥアイズ、直線での手ごたえは良く、僅かな差で馬券内があり得そうだったウンブライル、この2頭のパフォーマンスは高かったが、それはスプリント質のレース展開に適性がかみ合ったからなんじゃないかなと過去の好走タイミングを見ても思う訳です。

【一頭ずつ掘り下げます】

〇ドゥアイズ
 主な好走実績は札幌2歳S2着、阪神JF3着、クイーンC2着、そして前走VM4着。これは結構極端というか、どれもスタミナが求められる展開で、最後まで止まらない持続力が求められたレースばかりだと思います。
 札幌2歳は開催終盤の札幌で行われる非常にタフなレース。2歳馬で何より求められるのはその時点での完成度の高さ、とりわけスタミナと根性が求められる。ドゥアイズはそれをややかかり気味に上がっていきながらも最後まで止まらずに2着に粘り込む好内容。この時点でのスタミナの完成度は相当なもの。
 それがそのまま活きたのが阪神JF、前半3Fが33.7でスプリント並みのハイペース、上がり3Fが11.1-12.5-12.5と露骨に前が止まる差決着を後方からしぶとく伸びて上がり2位で3着差し込み。他の馬が止まる中でもしぶとく止まらないこの馬の良さが活きたレース。
 クイーンCも稍重で行われたレースながら後半1000mが11.7-11.8-11.3-11.6-12.2とロンスパの持続力戦、最後は苦しくなるレースを内から伸びての2着。
 そして前走のVM、スプリント質の流れた展開を大外から枠なりに外々を追走、早い流れを引っ張った逃げ先行が苦しくなる展開を中団からじわじわと伸びて来て、最終的には併せたウンブライルに競り勝ち4着。
 どのレースも苦しい展開でも止まらずにしぶとく伸びることが何よりも求められる、そんな適性が活きるレースばかり。
 果たして距離延長の1800m戦、開幕2週目でイン前が恵まれやすいこのレースでドゥアイズのこの適性は活きるのか?かなり疑問ですね。

〇ウンブライル
 この馬で注目すべきはやはりNHKマイルの2着。
 NHKマイル自体のレース質として適性がスプリントにある素質馬がG1制覇を目指して出走してくる例も多く、基本的には単距離質な適性が求められることが多い。
 この年のレースラップは12.4-10.6-11.3-12.0-12.1-12.0-11.5-11.9と比較的おとなし目のラップに見えるが、雨が降る中でのレースで実質重馬場、かなりタフなスタミナが求められたレースであり馬券内の3頭はコーナー通過順位2桁の3頭が追い込んだレース。
 このレースから伺えるこの馬のストロングポイントは、ペースが流れたとしても自分のテンポで足を溜められれば追い込むことが出来ること。ハイペース耐性。
 そして他の重賞好走のタイミングも含めNZT、阪神牝馬Sも外差が決まっていた馬場コンディション。
 前走のVMでは川田騎手の進言もあってブリンカーを外しての競馬、内からある程度好位を取って馬郡を捌きながら伸びる新味を発揮したが、今回は乗り替わり。前走の経験を活かすような競馬をさせられるか。
 過去の実績から見ればこの馬を買うべきタイミングは”外差が決まる馬場コンディションで前が厳しい展開を外から差せる時。”
 今回は距離延長馬が多くマイルに比較してペースは落ち着くので簡単にはまえが厳しくなることは想定しづらい、開幕2週目でイン前が恵まれやすい馬場コンディションと真逆もいいところ。
 そこで距離延長で初の1800mでバカンス明けのルメール騎手……人気で買うにはあまりにも……

【他の前走G1組は?】

・モリアーナ
 適性やローテを問わずに典さんが騎乗している時は、自分のペースで足を溜めさせて最後は必ず追い込んでくるという、展開待ちではあるが安定した競馬をしている。
 前走も前の展開に付き合わずに追い込んだことで0.5差まで詰められた。今回武藤騎手に手が戻るのはプラスとは考えられず、開幕序盤の馬場も脚質的には嬉しくない。57㎏の斤量も苦しい。
・スタニングローズ
 前走は先行には厳しいペースを3番手からそこまで大きく止まらずの0.8差。これはハイレベルな持続力が求められた大阪杯からのローテが効いたかなという印象。そもそも逃げようとしたコンクシェルに内からかなり抵抗したせいでハイペースになってしまった側面もあるので
 この馬の個性としてもG1を制覇した秋華賞が、好位から後半1000m12.3-11.8-11.5-11.5-11.8のロンスパ戦を制しての持続力を活かしての勝利。
 前走の敗戦はスプリント質のトップスピードが求められたのが主要因であると考えると適正距離に戻るのはプラスだが57㎏をこなせるかが課題。
 あとは簡単に隊列が確定して前目からの瞬発力が求められる展開も避けたいところ。逃げ候補の中で内に入ることが必須条件か。
・キタウイング
 もう1年半も好走できておらず、その内容も大敗続き。3歳前半まで見せていた切れ味も近走では見られず、距離や展開も噛み合わない部分はあるが、後方から追い込むも末脚伸びずというのが続いている。
 前走も着差は1.1とそこまで悪くないが、後方から極力ロスを抑えてやれることをやった結果であり評価はできない。最内を取れたらオッズも考えて紐には入れるかもしれないが、基本は切り。
・コンクシェル
 前走は決め打ちでの逃げだったが、スタニングローズにかなり抵抗されたことでハナをとるのに時間がかかり、かなりのハイペースになってしまった。流石にあそこまで早くなっては残すことは出来ず展開負けの大敗。
 過去の実績を見るとキャリア5勝の内3勝が距離延長ローテ。前走比較でペースが緩んだタイミングでこそ、逃げて更に伸びる足を使えており、今回は絶好のタイミング。
 逃げ候補がスタニングローズ、ウインピクシス、ラリュエルと多く出走しているが、コンクシェルが主張した時に抵抗できるほどのスピードを持っているのはスタニングローズくらいで、ウインピクシスとラリュエルが逃げているのは前半が35秒台の緩いペースでのみ。
 前半極端なハイペース逃げから今回距離延長、内からの先行が上手く札幌競馬場の理解度が高い武史騎手への乗り替わりのタイミングで内目の枠を確保出来たらかなり軸として信用できると思う。かなり買いたい一頭。

・イフェイオン
 絶対買います。
 前走は桜花賞→NHKマイルのローテで5着に好走したが、今年のNHKマイルは例年と比べると特殊なメンバー構成、距離延長の先行馬、すなわち単距離質のペースを作り出す馬がいなかった。その結果として
桜花賞
12.5-10.8-11.2-11.8-11.8-11.4-11.2-11.5
NHKマイル
12.3-10.7-11.3-12.0-12.0-11.4-11.2-11.5
 と道中緩むタイミングが無かった分桜花賞の方が展開が早く、そのタイトな展開で荒れた内を走った分かなり追走も厳しく、外を回す馬が差し切ったレースを抵抗するも11着と大きな着。
 そこからNHKマイルへの出走。比較的馬場が良い状態のまま行われたこともありインも問題なく使える状況で、内をロスなく追走。出足は勢いがついて前に行ったが、無理にポジションにこだわらずに一歩引いた位置、そこから直線では堅実に伸び続けたが切れ負けという感じの5着。
 NHKマイルでは前走比較で少し楽に追走できたことでパフォーマンスを上げており、距離延長ローテで更に追走が楽になる今回かなり期待できる。斤量52㎏もかなり魅力的。
 実績的にも使える上がりに限界があるので時計がかかりやすい洋芝も合いそうで極端な瞬発力勝負ならない限りはかなり固いんじゃないかなと思います。西村騎手継続騎乗もかなり嬉しく、それでいて手ごろなオッズになりそうなのも魅力的。買わない手はない。

・ボンドガール
 なかなか扱いが難しいなというのが正直なところ。
 長期休養明けのNZTと前走は先行して安定感のある競馬ができるようになってきていたが、NZTは休み明けと通ったところの差という感じでエコロブルームに先着され2着。
 前走は直線伸びてきたところで内によれたキャプテンシーと接触、その時点でかなり不利としては厳しかったが追い打ちでアスコリピチェーノにキャプテンシーごと押し込まれて終了。
 あれが無かったらどうかと考えた時にもう少し着順は上だったと思うが、手ごたえ的には差してきた馬よりは劣っていたように見えるので掲示板がどうかという感じだったかなぁと。
 でもNHKマイルでパフォーマンスを発揮しきれなかったというのは今回に向けてはむしろプラス。
 12.7-11.6-11.7-11.3-11.6-11.9-11.7-11.9と稍重だったことを考慮してもかなりスローで入ったNZTからペースアップで終いの脚が残らなかったということは距離短縮的な適性が求められるローテが合わなかったと理解できる。
 ということは裏返しで距離延長的なローテがばっちりハマる可能性もあり、毎年札幌で乗り続けている武豊騎手継続騎乗で51㎏の斤量、先行できる脚質と割り引く要素なく、実績から考えるとかなりの過剰人気だとは思うが、重い印は打たざる得ないかなぁ……オッズは美味しくないけれどというのが今の所感。

【現時点でのまとめ】

 まだ週も前半ということでとりあえず前走マイルG1組について書いてみましたが、基本的にはここが中心になるのかなぁ。
 改めて今回のレースの肝はスプリント質な適性を求められたVMで好走した馬が上位に評価されそうだが、今回は真逆の距離延長ローテへの対応が重要な中距離戦であるということ。この求められるレース適性と人気馬の得意な展開とのギャップが波乱を呼ぶのか、上位人気が自力で走れてしまうのか……というのを見極めて馬券を組む必要がありそうですね。逆らいてぇ~~。
 唯一オークスから参戦のコガネノソラは超ハイペースになったスイートピーSを上がり最速で勝利しているという実績は見逃せず、脚質にも自在性があるので51㎏で中々軽視はしづらいが信用もしづらい。ゴールドシップ産駒を大幅な短縮ローテではあまり買いたくないという気持ちもあり(距離短縮のゴールドシップ産駒は勝率約6%、単勝回収率44%でかなり厳しい)買っても紐までかな。
 非G1組だとちょっと怖いのがラリュエル。前走馬体+10㎏で先行する競馬からホウオウビスケッツに0.5差の5着と掲示板を確保。巴賞自体が後半4F11.8-11.7-11.6-11.8の持続力が求められる展開であり内枠をロスなく立ち回った利はあれど、外伸び馬場を2着とは0.2差にまとめたのは評価できる。逃げずともOPで好走できたのは収穫で、今回前目の馬が恵まれる展開ならば穴で好走してもおかしくない。唯一のディープ産駒というのはいつでも怖いもの。
 そんな感じで現在の注目馬はG1組からはイフェイオン、コンクシェルとスタニングローズは枠次第で本命候補。非重賞からの穴ならラリュエルですかね。かなり枠が重要になるレースだと思うので、調教もしっかりチェックしながら週末を楽しみにしたいと思います。

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